何かを諦めながら「練り直す」のではなく、「練り上げる」。
逆境をチャンスに変えて生み出した、未来に光が差し込む結婚式。

2008年入社。チーフを経て、現在はエグゼクティブプランナーと副支配人を兼任。プランナーや新入社員の研修も担当しており、後輩の成長が日々の喜びとなっている。「一日を通してストーリーのある結婚式」を追求している。
2人が後悔を残さないために
この状況下で必要なのは練り直しではなく練り上げること
結婚式の「延期」。それは簡単な選択ではありません。出産やマイホームなどの計画の後ろ倒しにもつながり、それを避けるために「規模の縮小」を選べば、諦めたという想いが残ってしまいます。
一度延期を決断した2人から、ある日キャンセルの電話がありました。「ライフプランをこれ以上崩せない」とのこと。さらにコロナの影響で会食NGのゲストが相次ぎ、親御様からも「形だけでいいのでは」と言われ、「何のために結婚式をするのかわからなくなった」というのです。
「挙式と親族食事会」にプランを練り直し、納得してはもらえたのですが、結婚式の映像を見て「こうなるはずだった」という新婦の涙に、私は決意しました。「練り直す」のではなく、「練り上げよう」と。
「全員を呼んで披露宴を」の希望を叶えた、45分の挙式披露宴
親御様も巻き込み、温度感を上げる
まず「全員を呼ぶ披露宴」を叶えるため、通常、披露宴で行う演出を組み込み、挙式の形を大きく変更。生い立ち映像を流して入場し、新居で成長する未来を願って、オリーブの植樹式を行いました。
「形だけ」という親御様に「承認の言葉」を考えてくれるようお願いしたことで、温度感を上げることにも成功。次第に乗り気になってくれたお母様方。温もりに満ちた言葉があふれる本番となりました。式の結びは花嫁の手紙と、花束贈呈。こうして、2人に諦めてほしくなかった「家族の絆をゲスト全員に見届けてもらうこと」が、実現しました。
こだわりのカラードレスも全員に見てほしい、と挙式直後にガーデンでケーキカットを行い、ゲストがそれを食べる間にお着替えを。中座の間、親族食事会ではシェフがメニュー紹介を行い、2人に代わって親族をもてなしました。着替えを終えた2人は、バルーンを持って再登場。「全員でリリースします」の声がけに、食事中の親族も自然とガーデンに集合。青い空に映えるバルーンを、全員で見上げました。
そして、諦めるわけにいかないのが、欠席のゲスト。悩んでいた時、いつも熱く語り合うカメラマンの「結婚式って、この日に完成しなきゃダメなの?」の一言で、私は自分が当日にこだわりすぎていたことに気づきました。そこで導き出したのは、「未来で完成させる」結婚式。欠席のゲストに、ミニスコップを添えてマイホームへの「もう一つの招待状」を送ることを提案。将来訪問した友人がオリーブの植木に土を入れることで、植樹式が完成するのです。一度崩れたライフプラン。結婚式よりマイホームが先になったことすら、未来の幸せに繋がったのです。提案した時の2人の笑顔は、忘れられません。
- 当日参加できなかったゲストに送った、マイホームへの「もう一つの招待状」。いつの日か、友だちが家を訪ねてくれた時にオリーブの植樹式に参加できる、「未来で完成させる結婚式」のアイディアです。
コロナ禍の今の時代だからこそ乗り越えた時に強い力がつくはず
結婚式はもっとよくなる
こうして生まれた、新しいカタチのウエディング。2人からも「私たちの結婚式を機に新しいやり方が増えると思うと、わくわくします」と、2人だけでなく結婚式そのものの未来をも明るくする言葉をもらいました。
やるべきは、どんな状況をもチャンスに変え、新しい価値を生み出すこと。それは個人だけでなく、チームとしてもあるべき姿です。スタッフがそれぞれの仕事の領域を越え、一緒に練り上げ新たなものを創り出す。コロナ禍で、私たちはそんなチームに進化しつつあります。
この先もずっと結婚式が必要とされ続けるために、今、私たち一人ひとりが試されている時。多くの壁が立ちはだかるコロナ禍。私たちは「もっとやれる、もっとよくなる」と未来へ導くための、招待状を受け取ったのではないでしょうか。今こそ業界全体で結婚式を練り上げ、進化させる時です。結婚式を通して明るい未来を描くことで、結婚式をもっと価値あるものにできる。…そう私は信じています。
- どうしても実現したかった、両家のお母様からの「承認の言葉」。持ちかけた時は渋々の承諾でし たが、やがて「これを読んだら泣いちゃいそう」「当日が楽しみ」と温度感が上がっていきました。
評価のポイント
藤井さんは今回のプランニングで、従来の結婚式の既成概念を壊し、「時間」と「空間」の枠を広げることで、単なる改善ではなく、新しい結婚式の可能性を創り出してくれました。また、シェフやカメラマンなどチームの力を積極的に借りながら、結婚式に新しい価値を加え、関わる人々の役割さえも組み替えていきました。この方法を参考にしながら、また日本中で次々と新しい結婚式が生まれていく、そんな勇気と自信を与えてくれる発表でした。