結婚式の価値を上げられるのは、言葉。司会者兼プランナーとして2人とゲストが想いを届け合えるよう想いを言葉で繊細に可視化していく
お打合せでも日常でも、ほんのり添えた一言が誰かをほんの少し幸せにできていたら嬉しいです。昨年プランナー兼司会を始動したことで、結婚式の可能性を更に感じ、また当日を創るパートナー様への愛が募る日々です。
使い勝手のいい言葉ではなく
2人自身の言葉を届けることで2人とゲストの温度差を埋めてゆく
出会ったのは交際13年の2人。ゲストを語る際は「大切」という言葉が頻出していました。2人と大切なゲストに同じ温度で結婚式を感じてほしい。私は、『2人らしい結婚式』『感謝』『祝福』という使い勝手のいい言葉は誰の心にも刺さらず、2人の熱量も伝わらないため、温度差が生じるのでは?と考えました。もっと2人の言葉で届けなければ!
通常は2人の次にゲストについて聞きますが、それではつながりが見えにくくなると気付き、まず全員との関わりを聞くことに。2人を知るにはゲストごと知ってしまえばいいのです。言語化するうち、2人自身もゲストへの潜在的な気持ちにあらためて気づく場面が。次に2人について聞き、2人とゲストの人柄、関係性を把握。どんな言葉がどのゲストに届くかのイメージが鮮明になりました。大切なゲストを思い浮かべたことで、感謝を伝えたいと熱を持って話すようになった2人。そんな想いを、私が可視化していきます。
2人の想いを伝えるため、進行すべてに言葉を紐づけます。想いを伝え切るには結婚式は短すぎる。でも司会として進行の合間も言葉を紡ぐことはできます。そう。言葉は進行よりもずっと自由!
手紙や挨拶で2人が伝え切れない言葉を預かり、一日を通してゲストに想いを届け切ることに。
- 言葉でなければ伝わらない想い、2人だからこそできた結婚式。
進行の一つ一つに込める想い。
紡がれた言葉が会場を温め、想いと言葉が溢れる結婚式に
当日。入場を待つ時間は、ゲストの心をつくる時間。準備の様子や2人の想いを全力で届けると、入場前にも拘わらず歓声と拍手が!
「みんな、2人の応援団」という一体感が生まれます。すでに温まった会場内に温度差はなく、ゲストも想いを届ける準備が完了。打ち合わせで新郎が緊張して素を見せられないと話していた上司には、挨拶を楽しみにしていた想い、理想の上司と憧れる気持ちを伝えます。結婚式後、以前よりも会話が増えたのだと新郎が嬉しそうに伝えてくれました。
その後も進行ごとに言葉を紡ぎ、登場するゲストだけでなくみんなが仲間を笑顔で迎える雰囲気に。2人が打ち合わせで語った「13年の歴史を刻めたのは、みんながその時代の私たちに寄り添ってくれたから」の言葉通り、「みんな、2人の応援団」の温かい空気感がつくられていきました。結びは両家代表謝辞。3兄弟の末っ子である新郎の母にとってこの日は38年間の子育て卒業式だと気付き、新郎へ、そして新郎父へと、その意義が伝わり、その役目を妻に託したのです。私は「2人を見守ってきたお母様達の代表」であると、新婦母にも労いが届くよう伝えます。言葉と想いのリレー。言葉が想いを繋ぎ、最後に会場全体を優しく包み込んでくれました。
- お母様の謝辞を聞き、ゲストに対する想いを伝える新郎。ゲスト一人ひとりを想いながら紡ぐ新郎の言葉はゲスト全員の心を掴みました。
誰もがしたいと思える「想いを伝いあえる結婚式」を体現。
言葉の価値で結婚式の未来は変わる
一つ一つはよくある進行でも、すべてのシーンに2人だから紡げる言葉、このゲストだから受け取れる言葉があります。それを添えて大切につくる一日。2人自身の言葉が届けばゲストの心が温まるのだと、感じられる結婚式でした。「私たちの大切なものを、大切にしてくれてありがとう」。これは、式後に2人からもらった言葉です。
想いが届くから、結婚式は素晴らしい。その手段は無数にありますが、私が選んだのは言葉でした。言葉には、無限の可能性があるから。「こんなに想いを伝え合えるなら、結婚式をしたい」そう誰もが思う未来をつくりたいと、私は決意しています。
評価のポイント
きっとそのままおふたりの要望を反映していたとしても、素敵な結婚式ではあったかもしれない。しかし、井上さんは「新郎新婦とゲストとの関係性」に着目をしながら、「言葉の持つ力」を最大限に引き出すことで、進行の場の意味とその場にいる人の想いを丁寧に繋ぎ合わせていかれました。自らの気づきや視点を生かすことによって、結婚式の価値はまだまだ高めていくことができる。そんな未 来への可能性を感じさせてくれました。