新郎新婦と「チーム」で作り上げる、2人にしかできない結婚式。
自由な発想で結婚式の可能性を広げる大切さを、スタッフにも伝授
大学卒業後、地元の専門式場に入社。地元ゲストハウスに転職後は総支配人を務める。コロナで会社の倒産、事業継承を経て昨年夏に起業して現在は寿司店のオーナーと式場のGMを兼務 趣味特技:結婚式
固定観念にとらわれず、自由に。
とびきり愉快な結婚式を、単なる提案ではなくチームでつくっていく
人を笑わせるためなら体も張る新郎新婦。笑いが絶えない2人とは、ヒアリングから一瞬で意気投合しました。しかし試食後には一変。「この料理では結婚式はできません」。行列店で働いてきた食のプロである2人だからこその言葉でした。それでも「担当してほしい」と言ってくれた想いに応えるべく、2人にしかできない結婚式をつくろうと奮起! そこには同時に「とんでもない結婚式をつくることで、コロナで縮こまった結婚式の価値観を壊し、若いプランナー達のリミッターをはずしたい」という裏テーマもありました。
「夫婦初めての共同作業はケーキ入刀ではなく、自分たちの結婚式をつくり上げること」が私の持論です。私が提案するだけのものではなく、「これぞ私たち」と思える結婚式を2人につくってほしい。そこでヒアリングを重ね、ゲストとの思い出を変換した演出を提案しては2人がアイディアを重ねる、という手順の繰り返しで、突拍子もなく愉快な演出が量産されました。これはゲストに対する2人の潜在的な想いを発掘する作業。このプロセスにより、「この結婚式は自分たちのもの」という2人の認識が醸成されていきました。
挙式には後ろ向きな2人でしたが、サプライズ挙式を提案すると大盛り上がり。
結婚式のテーマは、オープン予定の2人のベーカリーの屋号「F」に決定しました。FはFriends、Family、Fantasticなどの頭文字。周囲を笑わせ続けてきた2人なので、真ん中には、Funを据えて。
- 自分達だけの特別な結婚式。列席者だけでなくスタッフを含めた全員が一心不乱に踊り笑顔が溢れる1日となりました。
ゲスト一人ひとりが大切な存在。
それぞれと2人を結ぶ愉快な演出、感動の演出を交えた特別なハレの日
インド王族に扮した2人の巨大タペストリーや、いきなりのダンス&ジャンプネタの練習など、ゲストの誰もが普通ではないと予感するスタート。サプライズ挙式は、誰もがあると思っていなかったことも相まって感動的なシーンに。…と思いきや、青春時代の思い出を再現しながら友人達が面白おかしく指輪を届け、暗転後には祭壇に2人のバカ殿(新郎の友人)が登場し、退場時には新郎の頭に金だらいが落下…と、「Fun」そのものの演出が目白押しです。
課題だった料理は、新郎の提案でビュッフェスタイルに。味で勝負するのではなく、「○○様専用」の札とともに友人の大好物を用意するなど、突飛な演出にゲストも大ウケ。クイーンの曲と会場全員の手拍子足踏みで最高のボルテージの中、フレディに扮した新郎が登場し、さらには即席ホストクラブもオープン。ゲストは大勢だけど、2人にとっては一人ひとりが大切な存在であることを伝えたい…という想いから生まれた、2人とゲストにまつわる型破りな演出は、80を超えました。
ただし、笑いだけで終わらせるわけにはいきません。サプライズで相手を想う気持ちを伝え合ってもらい、笑いに振り切った結婚式にどう感動要素を入れ込むかという課題もクリアしました。涙で言葉を詰まらせる2人を見守るゲストも、幸せな気持ちに。ゲストには「F」が頭文字の思い思いのメッセージを書いてもらい、それを持って集合写真を撮影。この先2人を待ち受ける苦楽もゲストみんなが支えてくれる…そんな光景を、しっかりと残しました。
- ビュッフェスタイルのパーソナルメニューなど、様々な場面にゲスト全員が楽しめる演出を組み込みました。
スタッフのリミッターも見事解除。
「結婚式ってもっと自由でいい」…
そんな想いでその可能性を広げたい
その後は、スタッフ達の価値観にも変化が。「もっとやれることはある、もっとこの1件に力をこめられる」そんな気持ちが、より熱く燃え上がった気がします。
結婚式をやってよかった、出席してよかったという言葉をもっと増やすのが私達の責務。そのためにもリミッターを外し、もっと自由で楽しく、感動的な結婚式を! 結婚式が人生で最も素晴らしいハレの日である世界を、私はつくっていきたいです。
評価のポイント
仕事や子育てで多忙なおふたりにとって、結婚式は「やっておくか」という位置づけからスタート。鈴木さんは、そんな新郎新婦の中にある思い出を軸に、その体験を結婚式の中で結びつけるためのヒントを新郎新婦に示し、考えてもらうことで結婚式を自分ゴトとして考える機会を丁寧に設計されていました。鈴木さん自ら既成概念を取り払い、背中で見せて働き掛けてゆくその姿に、誰もが心を動かされ、勇気を与えてもらえたのではないでしょうか。