式に「結婚」という言葉を当てはめることに違和感を持つ新郎新婦の想いに理解を深め、創り上げたのは2人らしく新しい「感謝を伝える」式
2019年にブラスへ入社。ウエディングプランナーとして経験を積み、現在はチーフプランナーとしてチームの教育も担当。1組1組心から寄り添い、新郎新婦の「ホントのキモチ」への深い理解を日々大切にしている
2人が違和感を持たないボーダーとプランナーとして譲れないボーダー。
折り合いをつけてつくる新しい式
多様化が進む中、従来の結婚式イメージが多くのカップルの結婚式への可能性を閉ざしているように感じます。私が担当した若い2人も、そうでした。2人から強く感じたのは、「結婚」式をしたいわけではない、ということ。夫婦になる、両家が一つになるといった従来持つ式の意味が、2人にとってはすべて違和感のようでした。
まずは頭の中が2人と一致するまで、想いをとことんヒヤリングし、2人の思う結婚式への理解を深めることに。誓いの言葉やキスはダメ、手紙や歓談はいい…そこから見えてきたのは、温かい2人らしい〝感謝〟というボーダーライン。ただし、今回列席するのは結婚式が初めての若い方ばかりなので、王道からかけ離れ過ぎた式にするとゲストを混乱させてしまう危険性が。だからこそセレモニーもいくつか組み込みたい。プランナーとして守るべきボーダーラインに、私は悩みました。その末にたどり着いたのは、古い慣わしに固執せず、2人の根っこにある感謝の気持ちに焦点を当てた、新しい式を創るという結論。誓いのキスは、感謝の恩返しを約束した言葉を封じ込めるため。フラワーシャワーは大好きなみんなを、災いから守るため。本来とは意味合いを変え、感謝に通ずる新たな意味を持たせることで、提案したセレモニーをすべて2人に受け入れてもらえました。こうして2人とゲストの気持ちのどちらも尊重することに成功!
- ゲストに触れながら入場をすることで、ゲストと2人の距離がゼロになり、会場全体が温かい雰囲気に包まれました。
ゲストへの愛と感謝が深い2人。
「あなたと歩む理由」をテーマに五感で感謝の気持ちを伝えることに
さらに2人らしい新しい式にするために、私は「あなた達」ではなく「あなた」と単数形にして、ゲスト一人ひとりに感謝を伝えることを提案しました。打ち合わせのたびに聞いた、「○○のこんなところが好き」「○○には感謝しかない」「○○のおかげで…」と、ゲストへの想いを口にする言葉。それは同時に、2人がそのゲストと歩む理由にも聞こえました。今まで出会った人達に対する、好きという気持ちや感謝の心がとても大きい2人だからこそ、「結婚」式ではなく「みんなへの感謝を伝える」式に。こうして導き出したテーマが、「あなたと歩む理由」でした。
さらに新しい式を創り上げるために私は、表情豊かで周囲の人への愛情溢れる2人らしく、感謝を「五感」で表現することを提案しました。「視覚」は文字で感謝を伝えるべく、ゲスト全員に想いが詰まった手紙を。「聴覚」は、ゲストに向けて「あなたと歩む理由」を肉声で届けます。「触覚」は、ゲストみんなでつくる退場時の花道など。ハグやハイタッチで触れ合う光景が広がりました。「味覚」「嗅覚」を演出したのは、製菓学校の講師を務める新婦手作りのお菓子のプチギフトです。
- 挙式中の新からのサプライズの手紙と花束。ゲストへの感謝ののちに渡すお手紙は新婦だけでなくゲストも感動しました。
結婚式は、もっと自由なもの!
その可能性を伝え、1組でも多くのカップルに前向きに捉えてほしい
五感を通して伝えた一日を締めくくる、2人のあいさつ。私は「やめましょう、カンペ」と急遽伝えました。一日を通して感じた気持ちを、ゲスト一人ひとりを見ながら2人の言葉で伝えたほうがよいと思ったからです。すぐさま受け入れ、涙ながらに深い感謝と愛の詰まった言葉を紡ぐ2人。見送り時にゲストが「あの挨拶ヤバかったな」と伝えるほど気持ちの入った言葉は、しっかりみんなの心に届けられました。
後日、2人の友人カップルが「式はやらないつもりだったけど、結婚式の見方が変わった」と見学にみえました。そう、結婚式は思った以上に自由なのです。どの2人にも、最善の結婚式があるはず。それを届けることで、結婚式をやらない人生からやる人生へと誰かを導き、それがまた誰かの人生を変えるきっかけに。可能性に満ち溢れた結婚式を広げていきたい。それが、私が結婚式と歩む理由です。
評価のポイント
従来の結婚式のカタチに違和感を持つ新郎新婦に対し、鈴木さんはおふたりが真に求める式を生み出すことで、結婚式が持つ多様な可能性を届けようとされました。ボーダーラインを見極めながら、おふたりが大切にされている「感謝」を軸に言葉をセレクトし、進行を構築してゆく。結婚式としての本質的な意味を残しながらも、新郎新婦が本当に叶えたかった【新しい式】がそこにはありました。「結婚式はもっと自由」多くの人の心に残るパワーワードでした。