リクルートブライダル総研は、結婚に関する調査・研究、未来への提言を通じて、マーケットの拡大と社会課題の解決に取り組みます。

第22弾 東 佐江子さん(WEDDING LAPPLE)

心が動く体感を通して、「この人生でよかった」と思える機会をつくる 心が動く体感を通して、
「この人生でよかった」と思える機会をつくる

  • GOOD WEDDING AWARD2013でクリエイティブ賞を授賞(前職にて)
  • GOOD WEDDING AWARD2025でグランプリを授賞

2005年〜 ゲストハウスの立ち上げ時に、新卒プランナーとして配属
プランナー業務・キャプテン・音響オペレーターとして現場に取り組む
2016年 フリープランナーとしてWEDDING LAPPLEを創業
2023年 チーム化し、合同会社SCENESを設立

現在のお仕事内容:オーダーメイドのウェディングプロデュースのプロデューサーやディレクターとして活動。
又、現役プランナー向け個人セッションを行い、式場の中でもできるプランニングの可能性を伴走しんがら引き上げている。
その他、ウェディングコンサルティング・ブランディングサポートとしての活動もしております。

プランナーの仕事を目指したきっかけ

高校生で進路を考えた時、大学には行かずに就職をしようかと悩んでいました。その時、偶然に雑誌の記事を通してウェディングの仕事を知り、関心のある分野での学びならと専門学校へ通う事を決めました。

学校行事での模擬結婚式や、式場でのアルバイトでサービスやアテンドの経験を経て、前職でもあるゲストハウスにて内定をいただき、10年間式場プランナーとして勤めていました。ここに集まる仲間が大好きで、お嫁にいくよりも職場を離れる事は辛い気持ちも感じながら、もう少しプランニングの可能性を自分なりに挑戦したいと思いフリープランナーへと転向しました。そして一人で始めたものの、体現力をあげるにはやっぱり同じ思想を分かち合う仲間が必要だとWEDDING LAPPLEをチーム化する事を決め、夫を代表にしてプロデュース会社として立ち上げ現在に至っております。

印象に残った過去の企画(苦労した経験など)

現在の事業は毎回がオーダーメイドの為、どれも毎回深くエピソードの語れるウェディングばかりです。ただその中でも、プロデュースの企画として印象深くあがってくるのは、式場やレストランではなく、思い出の場所・ご自宅で開催するウェディングではより一層場所からの想入れが強く込められます。

例えば、小規模にお披露目をするウェディングがご希望だった新婦様。レストランや旅館でのスタイルを検討していました。対話を重ねていくと、家族はとても仲良しだった中でお父様が半年前に他界をされ、大家族で集まって暮らしていたご自宅を引き渡す事が決まっていたのです。あともう少し対話を重ねていくと、その近くにはお父様といつも通っていた焼き鳥屋がある公園があり、いつもジョッキのビールを片手に焼き鳥を一緒に楽しんでいたとのこと。又、結婚式に対して少し後ろ向きだった新郎様も、お父様にドレス姿は見せてあげたかったと思ってくれていた事が分かってきました。

「お父様に近くで感じてもらえる場所で、ふたりの門出を祝ってもらおう」

ご自宅でまずはお披露目をし、その後公園に集まって挙式を。時期が高山の11月で紅葉が一番綺麗な時期だったこともあり、あえて装飾は入れずに落ちていた銀杏をバージンロードに見立て。お母様にエスコートをしていただきました。誓いを見守って祝福をしていただいた後は、全員がビールジョッキと焼き鳥をもって乾杯を。スタッフもみんなで泣き笑いした、忘れられない情景の一つです。

又、対話をしながら人生を振り返っていくと、お客様によって想い・本心・まだ気づけていない本当の気持ちが見えてきます。家族が仲良しでハッピーなご関係性のお客様もいらっしゃれば、家族関係に何かしらの悩みを抱える方は少なくないのが事実です。そんなお客様の中では、たくさん自分の本音と向き合った結果、結婚式という節目をキッカケに、親御様に感謝を伝え、縁を断つ決断をされるお客様さえもいらっしゃいました。この部分だけ切り取ってみるととても悲しい出来事のようにみえます。でもご本人にとっては、それを決め、節目に招き、感謝を伝えることをしっかりと行われた事は、とても未来に進むために大切な時間だと捉え向き合った結婚式が、二度もこの数年の中でありました。

その当時の場づくりが100%正解だったかどうかは分かりません。でもそのお客様は、ふたりで幸せな夫婦生活を送っている姿を見守っているからこそ、ふたりにとって一番未来のある節目にすることを大切にしていきたい、プロデュースしていく上で改めて軸としていきたいものを教えてくれました。

ご自身の仕事にかける流儀・思い

心が動く出来事一つ一つが、生きる力となる。
こんなスローガンを現在チームで掲げています。

結婚式は幸せ溢れる時間もあれば、私たちではどうしようもできない切なくなる状況に立ち合う事もある中、私たちは任せて下さったおふたりがこの先の未来をいい人生にする為に味方となり、ふたりの意思を正解にする為の場づくりを大切にしたい、シンプルにそのような想いが今は強いです。

最近では「感動させるような結婚式が嫌」「結婚式で泣きたくない」そんな想いを打ち明けるお客様も少なくはありません。でも、涙が出るって何かに対して心が動いている証だと思うのです。
私たち、今心からいい人生を送ってるね、そう思ってもらえるような節目の日となるように。結婚式をゴールとして捉えるのではなく、結婚式を機会にして、未来を、人生をより豊かにしていく、そんな時間を提供し続けることが目標です。

GWA受賞後の変化(ご自身・周囲)

前職の仲間たちから、登壇後にたくさんの連絡をもらいました。

実は今回偶然にも、前職のプランナーさんと登壇が前後に。これは、私の中では密かに怖さを感じていたことでした。一生懸命結婚式とは向き合っているけど、フリープランナーは「自由」だからできたんじゃないか、そんな風に捉えられたくもない。でも大好きな会社を辞めてでも自分がしたかった事が何だったのか、プランニングの本質って何なのか、世の中にこういう思想のもとでプロデュースする結婚式だったらいいよねって思ってもらうにはどんなプレゼン内容が最適なのか。出会った仲間に恥じない結婚式のプレゼンをしたい、「“今の等身大”を受けとってもらうこと」 それが賞を取ることよりも大きな目標になっていました。

そんな大きな不安と向き合ってプレゼンした舞台だったからこそ、退職して10年経った月日がアワードという舞台を通して、社長や上司・当時の仲間達にまた存在を思い出してもらえたことは、単純に嬉しい気持ちです。社長に、「いいチームをつくってやってるんだな」、育てて下さった上司から「遠くにお嫁にいった娘が、親孝行をしてくれたように感じた」と言ってくださり、この先も一生恥じない結婚式をつくっていくこと、それが自分の裏信念となっています。

又、一つの時間をつくりあげることにロジックに基づいて考えていったら、プランニングってもっと奥深くて楽しそう!そんな風に、式場プランナーの方に伝わった事も嬉しかったです。感情軸を大切に捉えた進行づくりと向き合っていくと、そこに居合わせる人たちの喜びやエネルギー感を大きく扱えるようになると、自分自身に対するやりがいや感動の共有も大きくなってきます。そういった体感の数が、プランナーを続けたい熱量に繋がっていくものだと、周りのフィードバックを通して再確認ができました。

現場に立ちながら、この仕事の楽しさや奥深さに触れる機会を、私なりに考え提供していきたいと思っています。

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