リクルートブライダル総研は、結婚に関する調査・研究、未来への提言を通じて、マーケットの拡大と社会課題の解決に取り組みます。

今、改めて考える「結婚式の意味」と「プランナーの介在価値」とは? (「GOOD WEDDING AWARD2020」より)

 先日8月25日、本年度のリクルートブライダル総研主催「GOOD WEDDING AWARD2020」最終審査会が開催されました。これは、全国のウエディングプランナーを対象とした『プランナー日本一』を決める「いい結婚式」のプランニングコンテスト。実際にあったご自身のプランニング事例を発表いただきます。なんと今年で10回目を迎え、一部では「プランナーの甲子園」と呼ばれることもあるイベントです。
 そして何を隠そう、私が10年前の“言い出しっぺ”で、以来プロデューサーとして実行責任者を務めてきました。今回は、今年のアワードで感じた「今、結婚式をする意味」と「ウエディングプランナーの介在価値」について書いてみたいと思います。

発表内容から見えてくる、多様化する家族像

 ご存知のように現在、コロナ禍で結婚式は大変な状況にあります。「不要不急」と言われることもあり、「この状況で結婚式をしてもいいのか」「そもそも今、結婚式をする意味はなんだろう」と、新郎新婦のみならず、プランナーやブライダル関係者全員が一度立ち止まって考える機会にもなりました。

 そんな中で語られた、今年の8名のファイナリストの発表タイトルを見てみましょう。

発表タイトル(発表順) プランナー名
Never Give Up ~想いを形に~ 藤迫正幸さん(鹿児島)
Find Happiness ~しあわせの見つけ方~ 杉本里佳さん(東京)
瞬き 芳賀恵理さん(茨城)
One step of the journey ~家族という名の旅の一歩~ 宮川瑛里さん(長野)
家族のチカラ ~the power of family~ 牧田綾香さん(石川)
Charm ~”新規接客を好きになれない” そんな私が変わったおふたりとの出会い~ 山本亜衣さん(北海道)
『One Family』 ~結婚式を挙げる意味~ 中村玲香さん(愛知)
GIFT -All for Thank you- 籔田宏美さん(東京)

 まず、一読して気づくのは、「家族」や「ファミリー」といった言葉が多いこと。ここ約10年間の動きとして、結婚式が新郎新婦「ふたり」のためだけでなく、「家族」やゲストに感謝を伝え、互いの繋がりを確認することを大きな意味・目的として行う結婚式がとても増えてきました。さらに昨年から今年にかけてのアワードでは、その家族関係も多様化し、以前のようないわゆる典型的な「家族像」がすでに存在しないことを強く感じさせられました。

 例えば、ともに再婚で、お互いの連れ子とふたりの間の子供がいる若い夫婦。
 例えば、離婚した母の長年のパートナーを父と呼んで育った新婦。育ての父を大切に思いながらも、幼い頃に別れた実の父とバージンロードを歩きたいと願います。
 また例えば、育児を放棄した父を憎んで育ち、結婚式にもイヤイヤ招待した新郎。
全て、今年の発表の中に現れた家族像です。そしてそれぞれの家族関係に応じた、よりよい未来をつくるきっかけを、結婚式の中で掴んでいかれました。

 誰にでも、無意識に諦めたり、気づかないふりをしたり、つい目をそらしてしまう家族関係や願いがあります。そのまま死ぬまで抱えることもできるけれど、もしかすると唯一それに前向きに向き合えるタイミングが、今の結婚式なのかもしれません。そして、決して諦めずに(Never Give Up!)結婚式の中でそのしこりを解くきっかけをつくり、「人生のターニングポイント」を起こすことこそが、今求められるウエディングプランナーの大きな「介在価値」なのだと感じました。

結婚式は、プランナーからの最高の「ギフト」でもある

 そして、もうひとつ。「Find Happiness(しあわせ探し)」「瞬き」「Charm(お守り)」「GIFT(贈り物)」のような、単なるモノではなく、何かその瞬間瞬間を掌の中で大切にくるみ、優しい光を当てるような言葉が目立つのも今年の特徴です。これらは言ってみれば、それぞれの新郎新婦にとっての「結婚式」を言い換えた言葉。ウエディングプランナーは、ふたりがゲストに感じてほしい、手渡したいと思える言葉にならない想いを捉え、具現化し、チームの力を借りながら当日の時間を創り上げていきます。それがゲストに伝わる時、一生の宝物になる唯一無二の時間が生まれるのです。

 例えば皆さんは、誰かに「感謝を伝えたい」と思った時に、その感謝の手触りや匂いがどんなものなのか、考えたことはあるでしょうか。同じ「感謝」でも、人によってその肌触りは異なり、伝え方も違う。それをプランナーが創造性とプロフェッショナリティを持ってとことん考え抜くからこそ、そこに「結婚式の意味」が生まれるのです。そうやって生まれた結婚式は、ウエディングプランナーからふたりへのギフトでもあります。こんな素敵な贈り物を、私達は一生のうちに何度受け取るのでしょうか。

 今の時代、結婚式に対する考え方は人それぞれ。無理にする必要はないし、しなくても困ることも無いのかもしれません。でも、やはり私は、今回のアワードを通じて、「結婚式のある人生と無い人生は、何かが違う、何かが変わる」と感じました。何より親でも友達でもない、究極の第三者であるウエディングプランナーが、ここまで他人の人生を考えてくれる、こんな機会はそうありません。
 コロナに負けること無く、この大切な機会をこれからもより多くの方に体験していただけるよう、結婚を考えている人と、何よりもウエディングプランナーに、「結婚式の価値」と「ウエディングプランナーの介在価値」を、これからも伝えていきたいと強く思った今回のアワードでした。

◆最終審査会の様子はこちら
◆上記8名の発表内容は、11月頃に更新予定です。

担当研究員
研究員金井 良子(カナイ ヨシコ)
兵庫県出身、1993年株式会社リクルート入社。
リクルートにて「じゃらんnet」「ゼクシィnet」など数々のネットサービス立ち上げと運営に携わる。2004年10月より「ゼクシィnet」編集長、2010年4月より現職。「GOOD WEDDING AWARD」運営責任者や「ブライダル専門家」としてテレビ番組でのアドバイザーを務める。