リクルートブライダル総研は、結婚に関する調査・研究、未来への提言を通じて、マーケットの拡大と社会課題の解決に取り組みます。

テーマ『そう』

テーマを提案し、新郎新婦の想いに
つながれた瞬間は、鳥肌が立つほど嬉しかった。

古城 香(ふるじょう かおり)さん
プレジール迎賓館(宮崎県宮崎市)

プランナー歴5年。小説から歴史、自己啓発まで色々なジャンルの本を、月に2冊は読む。また自然と触れ合う時間を最低月1回は取るようにしている。

披露宴は新郎新婦、二人でつくるもの。まず新郎に心を開いていただくために。

 新郎は人見知りで、なかなかご自身を表に出されず、新婦の思い描いている披露宴の打ち合わせにも、なかなか積極的に参加できないでいました。披露宴は新郎新婦、二人一緒になって作っていくもの。だから私は、まず新郎に心を開いていただくことが一番の鍵だと思いました。そのためにはまず二人のことをよく知ることだと、カウンセリングの打ち合わせを行いました。家族のこと、学生時代のこと、友人とのおつきあい、二人の出会いから結婚までの経緯など、本当にたくさんのことをお伺いする中で、新郎も少しずつお話をしてくださるようになってきました。もう一つ、年齢が離れた女性が担当ということで、話しづらい部分もあるのでは、と感じた私は、年の近いスタッフや男性のスタッフにも積極的に関わってもらいました。そんな中で、新郎は少しずつ心を開いてくださり、本当は打ち合わせにもっと参加したいのではないか、という一面に気づくことができました。

「そう」に込められた様々な意味、熱い想いを、ゲストにも伝えたい。

 二人は新郎の独立をきっかけに〈株式会社そう〉という会社を起こし、建築の仕事をされています。その名刺を二人からいただいたときのことです。そこには社名を「そう」にした想いが書かれていました。「出会いは一瞬。出会えば一生。」「想。創。奏。層。添。」これを見て私は、二人はこんなに熱い想いを持ってらっしゃるんだ、ぜひこれをゲストの方々に伝えたい!それが、プランナーとしての私の役割だ、と感じました。そしてすぐに、「そう」という言葉をテーマに披露宴を作っていきましょう!と提案しました。そしてこの瞬間から、新郎が笑顔で打ち合わせに参加されるようになったのです。二人と気持ちが一体となったような感じで、本当に鳥肌がたつくらい嬉しかったのを覚えています。
 後日、新郎からいただいた手紙にはこうありました。「元々、結婚式はどこであげても同じ、と思っていた僕は、打ち合わせにも消極的であなたを困らせていたと思います。あなたをはじめ、スタッフのみなさんの力で僕の気持ちを動かしてくれたこと、結婚式の大切さを気付かせてもらったこと、感謝しています。」

プランナーの古城さんも当日二人の介添え役として、会場入り。

ゲストの方にもわかりやすいように、視覚的に演出。

 次に課題となったのは、このテーマをどのようにゲストの方々に伝えるか、ということです。いろいろ考えた末、私が名刺をみた瞬間に感じたのと同様に、ゲストの方々にもそのまま伝えることで、感じていただきたい。まず披露宴の一番最初に新郎からウェルカムスピーチという形で「そう」に込めた想い、それをテーマにした二人の想いをゲストの皆様に伝えていただきました。そして、「そう」という言葉にいろんな漢字に当てはめて、披露宴の中の演出として表していくことにしました。たとえば、ゲストのお迎えでは、大きな「窓」から5月の「爽」やかな陽気を感じていただく。お色直しでは、大切な方に介「添」えしていただき、「装」い新たに再入場。そしてバルーンの音を「奏」でながらのテーブル廻り。演出前に「続いての〝そう〞はこちらです」と、「奏」などの漢字をパネルを掲げ、ゲストの方々に視覚的にもわかりやすく演出しました。
 ゲストの方々から最後に、「すごく楽しかった」「お二人らしい結婚式だった」「今までみたことがない」というたくさんのお言葉をいただくことができ、また会場が一体となる瞬間を実感でき、感動を一緒に味わうことができました。

テーマの「そう」に込められた色々な意味・想いを、漢字を使って演出。カラフルな「層」でできた2段ケーキの上に、家をのせて、二人に「創」っていただいたケーキの完成式を行った。

お二人との心のつながりを大切に

 私は、結婚式は披露宴当日だけでなく打ち合わせから始まっている、という想いを常に持っています。打ち合わせを楽しく、披露宴はもっと楽しく。打ち合わせごとのリザーブカードには、その日の打ち合わせ内容とともに前回お話した内容も記し、また自分の得意なイラストも添えて私を知っていただけるように工夫もしています。お客さまとプランナーとしての付き合いだけでなく、人と人の付き合い、お二人との心のつながりを大切にしていきたいと思っています。

審査員の目

 最初結婚式に消極的だった新郎に対して、「とにかく聴く」姿勢を貫き、その想いに深く入り込んでテーマを提案。新郎の心を掴み、さらに演出展開の中でゲストの心も繋ぎました。古城さんが担当でなかったら、結婚式は全く違ったものだったかもしれません。「プランナーはここまで新郎新婦と心の関係を築けるのか」と会場中が感動させられました。(2011年9月30日更新)