リクルートブライダル総研は、結婚に関する調査・研究、未来への提言を通じて、マーケットの拡大と社会課題の解決に取り組みます。

Journey ~絵本の国からの招待状~

新婦との徹底的したコラボレーションが
その後の人生まで好転させるチャンスに

内山 亜紀(うちやま あき)さん
ララシャンス迎賓館 宮崎(宮崎県宮崎市)

プランナー歴5年。新郎新婦様のご要望をじっくりと聞き出し、その思いに全力で向き合い、ご要望以上の提案ができるよう心掛けている。チームワークを大切に、全員協力での結婚式が幸せにつながる、がモットー。

感謝を伝える物語の中に、ゲストを招待するという提案を

 子供の頃から本が大好きな新郎新婦。二人の距離を近づけたのも本でした。二人にとって特別な存在である〝本〞をテーマに「絵本の世界で結婚式を挙げたい」。それが最初にお伺いした要望でした。
 でも最初二人が思い描いていらっしゃったのは、絵本を飾るなどの簡単なイメージのみ。「それを実現すれば、二人の想いは本当に満たされるのだろうか?」。 私は新郎新婦の心の中にあるものをすべて理解しようと心がけました。そして、わかったのです。何より二人が実現したいのはゲストに感謝を伝えること。しかし、ただ伝えるだけではなく、伝わるためにはどうしたらいいのだろう?
 そこで結婚式そのものを「感謝を伝える絵本の世界」に仕立て上げる提案をしました。そのほうが感謝の想いを体感していただけるはず。二人に話すと、みんなの気持ちがひとつになり、すべてが動き始めました。

絵本の世界で結婚式を挙げたい、という新郎新婦のシンプルな要望に、ゲストに感謝を伝えるための世界観を創り上げる、という提案をプラスしました。まるで絵本の世界に迷いこんだ演出を創り上げることで、ゲストに二人の感謝を体感していただけたと感じます。

絵本の世界にゲストをひきこむ。体感することで伝わる感謝の想い

 結婚式当日、披露宴会場へ続く道には天井からつるされた新婦が描いた絵本が。二人の歩いてきた人生を小さな木の成長に重ねあわせる物語を1ページずつ読み進みますが、最後のページが足りません。これは式のクライマックスへの仕掛けです。物語の最後は、ゲストのメッセージを集めて、新郎新婦の手で絵本の形に仕上げ、感謝の気持ちを込めて読み上げることで完結させました。
 入口では、これまた新婦が絵本仕立てで作った招待状に入っていた「絵本の世界への鍵」を渡し、表紙に見立てて作った回転扉をくぐります。新郎新婦席の後ろには巨大な見開き絵本を置き、新郎の大好きなギターも添えられました。席次表は絵本のタイトルをテーブル名に、席に着くと物語の中のモチーフがテーブルを彩ります。
 もちろん、ゲストに召し上がっていただく料理も絵本の一部。料理の下に絵本を敷き、一品ごとに料理と一体化した物語を紡いでいきます。最初のページでは職場の方へ、次は友人の方へというふうに、感謝にあふれた物語が展開されます。
 スタッフは手作りのエプロンや蝶ネクタイを着け、会場には新婦が描いた絵本の世界がムービーで流されました。

料理の下に新婦手書きの絵本を敷いた演出。これはシェフに早い段階から二人の想いと絵本の世界観を共有して、実現しました。

結婚式が人生のチャレンジへのひとつのきっかけにもなる

 新婦には本当にたくさんの絵を描いていただき、負担はとても大きかったはず。でも、私が提案をするほどにたくさんの想いを口にしてくださるようになっていたのです。その中のひとつが、「絵本作家になりたい」という、一度は諦めた新婦の夢。私が背中を押すことで心の奥にしまっていた想いとやる気を引き出すことにつながりました。ゲストからは「立派なイラストレーターになれるよ」と嬉しい声も!
 そしてこの結婚式が新婦の新しい人生の幕開けにもなりました。結婚式での経験を活かしてデザインコンペでグランプリを受賞されたのです! 今、新婦は絵本出版に向けて本格的に始動されています。
 実は新人の頃、後悔の残る仕事をしてしまった私。その時「人生でたった一度の大切な結婚式。もう二度と新郎新婦に同じ想いはさせない」と心に誓ったのです。そして今回、二人と真剣に向きあった結果、私は大きな可能性に気づくこともできました。「プランナーの想いひとつで結婚式は変わる」「結婚式には人生までも変える力がある」。この想いを胸に、プランナーとしての仕事を続けていきます。

新郎新婦はもちろん、ゲストも会場のスタッフも笑顔になる結婚式を

 どんなに素敵な結婚式を創り上げても、新郎新婦の気持ちがゲストに伝わらなくては意味がありません。そのためにはスタッフの笑顔も大切。スタッフが必死に業務的に仕事をこなしているのでは結婚式の雰囲気も台無し。新郎新婦、ゲストはもちろんのこと、スタッフも含めた会場にいるすべての人が楽しめる披露宴。それが目指すべきところなのです。

審査員の目

 絵本を点で使うだけでなく「結婚式そのものを絵本にしてしまおう!」という大胆な発想力、さらにそれを作り上げる構想力にまず驚かされました。二人の言葉にできない要望までも汲み取り、シェフを始めスタッフの理解と協力を得たからこそ創りあげられた世界。そんな内山さんの本気を見たからこそ、新婦は勇気をもって本来の夢に向かえたのではないでしょうか。(2015年10月15日更新)