本当のニーズを探り、二人の事を考え抜いたからこそ
「調和」の力で、自由と上質どちらも叶える結婚式に
立教大学 経済学部 卒業
2011年4月新卒にて星野リゾートに入社。2013年よりプランナーとして軽井沢に2年勤務した後、東京サロンへ異動し現在4年目。家族だけの少人数ウエディングから200名規模の披露宴まで幅広く担当。
お二人の要望にはぴったりの会場
でも、これで本当に良いのか?
「自由な結婚式がしたい」「ゲストには自由に時間を気にせず過ごしてもらえれば」新郎新婦からの要望に、私は「会場の魅力をいかして、いつも通り自由に楽しく過ごしていただくのが良さそうだ」と考えていました。ただひとつ気になっていたのが、新郎の「GWの最終日に来て下さる皆さんには、とにかく負担をかけたくない」という言葉。「本当にいつも通りで良いのだろうか?」なぜなら、自由に楽しんでいるゲストがいる一方で、過ごし方が分からず戸惑うゲストの姿も見てきたからです。
考えがまとまらない中、お二人が何度も口にした言葉があったことを思い出しました。それは「上質」という言葉です。「高級ホテルや海外リゾートを満喫した」という楽しいお話や、「お母様は老舗ホテルの結婚式をイメージされていた」というお話。お二人にとって「上質である」ことは当然のご要望だと気づきました。
いつもの「自由」はどのような印象を与えるのだろうか?「どこに座っても良い。お好みの料理はご自分で」という自由さは「自分の席が用意されていない。料理が運ばれてこない」不自由さであるとも言えます。自由と上質。そして負担をかけたくない。これらをすべて満たすにはどうすればよいか。性格も趣味も異なるお二人が、心地よい時間を創り出している様子を見て自然と「調和」という言葉が浮かびました。
流れるような場面展開ですべてのゲストが自然体で楽しめる空間
望まれているのは、単なる自由ではないと確信した私は、あえて道筋を作ってゆくプランを提案しました。ただし、ゲストが縛られていると感じない、心地良さを感じられる「調和、まとまり」の要素を大切にするプラン。この日にしか生まれない特別なハーモニーを全員で奏でてほしい、そんな思いを込め当日のテーマは「Harmony」に。プロローグ、メイン、エピローグと会場を移しながら場面展開をする結婚式です。ゲストが自由でそして自然体でいられるよう、随所に工夫を凝らしました。最初の舞台は、シックに設えた室内。お料理が運ばれ、披露宴のイメージを崩さずに安心感と上質なサービスを提供します。二つ目の舞台はテラス。司会者のアナウンスで無理やり移動していただくのではなく、お料理の香りとファンファーレでゲストを誘導。生演奏の流れるテラスでは、二人の出会いのきっかけにもなったホームパーティを、いつもより少しだけ特別にアレンジして、楽しんでいただきました。最後、エピローグの舞台となるのは開放的なガーデン。二人のルーツを幼い頃からの写真で巡る自由なひととき。ガーデンにはデザートやバーカウンターを用意。新郎新婦や友人による歌やダンスに、ゲストも手拍子で応え、全員の気持ちが調和する。そんな時間を過ごしていただきました。
- プロローグ、メイン、エピローグと会場を移しながら場面展開をするパーティー。お二人の出会いが「ご友人のホームパーティー」だったことも、このテーマのヒントに繋がりました。
お二人の事を考えぬいた時間
それが提案に勇気をくれる
お二人と最後の打ち合わせ。「プランナーと新郎新婦様」だった関係が、「結婚式を一緒につくりあげる仲間」と感じてくださったことに私は強い喜びを感じました。このような関係性を築けた理由、それはお二人が気づいていないニーズを見つけ、それを提案し実現できたから。とても勇気を必要とする事だけど、二人の事を真剣に考え抜いた末の提案であれば、それは自信を持って伝えられる。「自由」「アットホーム」「感謝」同じ言葉でも、その裏に隠れた本当の要望は人それぞれ。その要望に応えられるような結婚式を今後も創り出せるよう努力してゆきたいと思います。
- できたてのお料理の香りや、テラスでの生演奏の音楽によって、ゲストが自然と外に出たくなるような仕掛け。ゲストも上質な雰囲気を味わいながら楽しんでいました。
評価のポイント
「自由さはときに不自由さにもなる。このふたりが本当に求める自由とは、どんなものなのか?」言葉の意味をうわべだけで捉えず、深く問い続けた姿勢。そして進行の常識の枠をはずし、まるで美しく楽しく奏でられる音楽のように結婚式を組み立てた、素晴らしい構成力。プランナー次第で、会場も結婚式もいかようにも変えられることを改めて気づかせてくれました。