リクルートブライダル総研は、結婚に関する調査・研究、未来への提言を通じて、マーケットの拡大と社会課題の解決に取り組みます。

hand in hand

結婚式は家族にとっても大切な「人生の棚卸し」の機会
すれ違った気持ちを、手のぬくもりで通いあわせる

豊島 千紘(とよしま ちひろ)さん
アクイール風彩の森迎賓館(鳥取県)

大阪観光専門学校 ブライダル学科 ブライダルコーディネーターコース卒業
有限会社フローレスへ就職。アクイール風彩の森迎賓館プランナー部署へ配属され3年。趣味は映画鑑賞、旅行等、色々なものから刺激をもらうこと。

ご家族と一緒に辿る
幼いころの新婦の思い出

 「長女という事もあり、甘えることができなかった。感謝の気持ちを伝えたいけど今さら素直になれないんです」シングルマザーで4人の姉妹を育ててこられたお母様への想い。『結婚式は家族にとって人生を棚卸しすること』尊敬するある方の言葉が頭に浮かびました。これまでの人生を振り返るのは二人だけでなく、ご家族にもその時間が必要。そう感じた私はご両親にお電話をさせていただきました。「お二人の育ってこられた場所でお話を聞かせていただきたいのです」
 新婦の実家に訪問をしてお母様とご対面。通された畳の部屋には4人が遊んでいた当時のおもちゃが。私は、お母様に対する新婦の想いをそのまま伝えてみることに。すると、涙を流しながらも、27年前に新婦を宿した時の気持ち、たくさんの人から愛されて育った話、昔を思い出しながら聞かせてくれました。「ただ、長女だからと、いろいろ我慢をさせてしまった。そのせいであまり自分の気持ちを口に出さなくなってしまった」そのことに寂しさを感じていると。そんな中、おじい様とおばあ様も加わり、いつしか姉妹とのたくさんの思い出話に。自然と笑い声に包まれる思い出の部屋。「あの子たちとの時間を思い出させてくれて、本当にありがとう」いつのまにか家族で過ごしてきた時間を一緒に辿ることができたのです。
 お互いにうまく言葉で伝えられない想いがある。伝え合うにはどうしたら? 私は自分の家族に置き換え、幼い頃の記憶を辿りました。つないでくれるだけで安心する両親の手。頭を撫でる大きな手。思い返すだけで、なぜだか心がぽっとしたのです。「そうだ!この感覚を二人にも感じて欲しい」

手のぬくもりが通いあわせた
母と子の本当の気持ち

 結婚式のテーマはhand in hand。手を重ねることで懐かしい記憶を思い出し、手をつなぐことで温もりを感じることができる。挙式の入場前には「自分の服はそっちのけで、わたしたち4人姉妹に全部違う振袖を仕立ててくれたんです」と昔を懐かしみながら選んだ家族の写真を使ったサンクスムービー。
 挙式の最後には、家族だけでなくゲストひとりひとりが新郎新婦のもとへ。おめでとうの言葉と共に握手をし、両手で抱き合い、ぬくもりを伝え合うhand in handセレモニーを。披露宴では4人の姉妹が揃って振袖姿を披露するサプライズ。「お母さん!」の呼びかけに目を開いたお母様。その姿を涙ながらに目に焼きつけておられました。「大好きなお母さん。たった一人のお母さん。大きくて温かいその手で守り続けてくれて、ありがとう」

お母様に手を引かれて歩く新婦。結婚式に向けて、お互いに家族への想いを整理することが出来ました。その時間があってこそ、この一日が素晴らしいものになったのだと思います。
母一人で育てた4人姉妹。自分の服は買わずに貯めたお金で仕立てた振袖を着た娘たちとの対面。カメラマンに扮した新郎に目隠しされ手を引かれて目にした光景です。

結婚式をいつまでも振り返りたくなる
家族の大切な一日に

 式後、新婦は「家族のことがもっと好きになりました」お母様からも「自分の気持ちをあまり言葉にしなかった娘の思いを知ることができ、寂しかった気持ちが喜びに変わりました」と感謝のお手紙をいただきました。
 結婚式は、家族にとって大切な人生の棚卸しをする機会でもあります。そのお手伝いをすることでご家族の絆が深まる。この先、何年も何十年先も「しあわせな日だったね」と、振り返りたくなる一日。そんなターニングポイントとなる結婚式をこれからも大切な仲間たちと創り続けていきたいと思います。

評価のポイント

 プランナーが新郎新婦の実家を訪ね、育ってきた空気や時間を感じ、家族の思い出をじっくり聞いたからこそ提案できた温かな結婚式。すべての地域や会場でできることではないかもしれないが、ここまですることで、より深い結婚式の意味価値を引き出せる可能性の示唆がありました。言葉では伝えられない想いを、手のぬくもりで伝える丁寧な演出の積み重ねも、豊島さんならでは。