リクルートブライダル総研は、結婚に関する調査・研究、未来への提言を通じて、マーケットの拡大と社会課題の解決に取り組みます。

Overcome 克服

恐怖を乗り越え思い切って踏み込んだ結果、その気持ちがみんなの心を動かして生まれた幸せの連鎖。これからもこの勇気を届けたい!

西尾 涼歩(にしお すずほ)さん
エルダンジュ名古屋(愛知県)

中学生の頃、結婚式参列後の両親の姿を見てプランナーを志し、ブライド・トゥー・ビーに入社。お客様を自分の親友や兄妹と考え、とことん新郎新婦に向き合う事を大切にしています。

踏み込むべきか、触れざるべきか。
大事に思う気持ちが伝わるからこそ悩みながらも力になりたいと決意

明るく楽しい、仲良しな2人。けれど新婦の亡くなった弟様に席と料理を用意してほしいという、いつもとは違うトーンの依頼に、私は触れてはいけない何かを感じました。さらに仏壇に供えたいので当日は実家にも料理を送ってほしいとの要望。こんなにも大切に思っている弟様に、何も触れないまま当日を迎えていいの……? 私は自問し、何かしなければ、と強く感じました。

どう聞き出そうか悩んでいた時、GWAを通じて出会ったプランナー仲間から「カフェ打ち」を勧められました。友達同士の相談のようにカフェでなら、お互い緊張しないはず。私は早速、新婦に連絡しました。ここまで触れずに来てしまったけど、弟様を思い出す時間を作れないか考えたいこと、人生の節目となる日に一歩踏み出すお手伝いがしたいことを伝えると、「ずっと一人でこらえてきました。話したいです」とのお返事が。

勇気を持って二人の人生に踏み込む気持ちが新婦、お母様の絆を深め、さらにその姿が新郎の心を動かす。言葉では語りつくせない「幸せの連鎖」がこの結婚式で生まれました。

母娘と新郎新婦、それぞれが想いを伝え合う時間を前日に設定。
本音で向き合えたからこその笑顔

新婦は、2年前に自ら命を絶たれた弟様について話してくれました。救えたかもしれないとの後悔に今も苦しんでいること、辛い時期を支えてくれた新郎への感謝。何より、夜中密かに泣いている大好きな母に式当日は誰よりも笑顔でいてほしい、という言葉に、お母様への深い愛を感じました。同時に湧いた、お母様も1人で苦しまれているのでは?との思い。そこで「母娘と夫婦が、想いを伝え合う時間」を作ろうと決意。そうすれば、2人がこだわる「みんなが主役の結婚式」が叶うと思ったからです。結婚式に組み込むと、お母様に笑顔でいてもらえなくなる。GWAの過去の発表から着想を得た私は、前日に時間を作ることにしました。3人にお願いの連絡をしたのは挙式1週間前。「家族の問題には触れないでほしい」といぶかしがるお母様。一瞬ひるみましたが、「人生の節目の日だからこそ、伝えたい気持ちもあると思う」と伝え、承諾をいただけました。

こうして前日、3人が来館。新婦が「お母さんのほうが辛いだろうと、涙を見せずに我慢してきた。お母さんが大好きだからずっと笑っていてほしい」と伝えると、「お母さんは大丈夫。あなたには幸せになってほしい。笑顔が大好きだからずっと笑っていてね」とお母様。新婦は新郎にも感謝を伝え、新郎も新婦とその家族が大好きだから力になりたいと語りました。泣き声が聞こえていた部屋からは、いつしか温かい笑い声が。3人は楽しそうに帰られました。

新郎から「両親への手紙を読みたい」と連絡があったのは、その日の夜中のことです。素直な気持ちを伝えるのが苦手な新郎が、乗り越えようとする気持ちを感じ、急遽進行を変更しました。

新郎から「両親への手紙を読みたい」と連絡が。素直な気持ちを伝えるのが苦手な新郎が乗り越えようとする気持ちを感じ、急遽進行を変更しました。

怖さを克服して一歩踏み出す勇気。
諦めずに勇気をもって向き合えば結婚式直前でも幸せの連鎖は作れる

式後、お母様から「ここまでしてくださるとは思いませんでした。素敵なお仕事ですね」と言っていただき、新婦からは「当日は誰よりも楽しめた」と感謝の手紙をもらいました。私のおせっかいにも価値があったのだと感動しました。

この結婚式を通じて、プランナーとして克服できたことがあります。それは2人の人生に踏み込む勇気を持つこと。正直、すごく怖かった。でもその先の2人の未来を考えた時、勇気が湧きました。その勇気が新婦に伝わり、母娘の絆を深め、新郎の心も動かして幸せの連鎖となりました。だから今度は、私の勇気を皆さんに届けたい。そしてこれからは枠を超えて、業界のみんなで結婚式の未来に向き合えたらいいなと思っています。

評価のポイント

家族でも、いや家族だからこそ、相手を大切に思うばかりに言えないことがあります。結婚や結婚式のタイミングで、それに介入し、関係を解きほぐせるのはプランナーしかいないのかもしれません。それには大きな勇気が伴いますが、その背中を押したのが、社内外のプランナー同士の繋がりであったことに大きな希望を感じました。一人では難しいことでも、知恵や勇気を分け合うことで乗り越えることができる。その西尾さんの強いメッセージが響きました。