いい結婚式に必要なのは「2人がやりたいこと、好きなこと」ではない。
「なぜそれを希望し、その想いがどんな価値観から生まれたのか」が大切

2014年、新卒で Plan・Do・See に入社。社歴 = プランナー歴、ブライダル一筋でやってきました。最高にクリエイティブで、人の人生を豊かにする「結婚式」のお仕事にはまり続けてはや12年です!
その食事会は本当に必要なのか?
希望の奥に隠れた「想い」を大切に違った形の2部制の結婚式を提案
新郎がご両親不在なこともあり、両家の顔合わせがないまま入籍済みだった2人。ゆえに、1部は家族の顔合わせ食事会、2部は友人や同僚とのカジュアルなパーティ、その間の挙式で家族とゲストが挨拶する場を、という2部制が2人の希望でした。しかし私は、食事会が本当に必要なのか疑念を抱きました。結婚式を通して家族に何を伝えたいか尋ねると、新郎は親代わりの姉兄に、新婦は両親に、「仲間を会わせたい」という答えが。結婚を寂しがる新婦の母にも、心から安心して喜んでほしい。そんな想いもあっての、両家顔合わせ希望でした。
私が結婚式で形にしたいのは、まさにこの「想い」です。家族への想いを聞き、「この式を家族だけの食事会でスタートするのは違う。家族とゲストには、たった20分の挙式ではなく2時間以上の披露宴でしっかり関わってもらうことが、2人らしい式には欠かせない」と思い、「食事会をやめて1部は披露宴に」と提案しました。ただし顔合わせを前夜、かしこまらずカジュアルに行うことに。緊張感ある食事会よりずっと2人らしいと思ったからです。また新婦のご両親のために、最初に人前式を。2人が互いを想う気持ちを受け止めてもらい、2人への理解と祝福を深めることから、大切な一日を始めてもらおうと考えました。

2人の互いへの想いを知る人前式、親族がゲストと触れ合う披露宴、浮かれたパーティ〈バーカロ〉
2部はキャパの関係上、立食の契約。しかし「結婚式」と称して立食なのは上司にも失礼では?と懸念を感じた私は、集う方達はどんな存在かを質問。2人とも心から会いたい人だけを選んだこと、年末年始の街の雰囲気が好きで、あの浮かれた感じを大好きな人達と巻き起こし、その光景を見るのが2人の幸せであることを、話してくれました。これが「みんなで楽しくパーティしたい」という言葉の真意だったのです。
2人がパーティ会場に選んでいたのは、ホテル内の王道イタリアン。私の頭に浮かんだのは、立ち飲みで気軽に料理を少しずつつまむイタリアのワインバー文化〈バーカロ〉でした。結婚式ではなく「ウエディングバーカロへの招待」と謳えば、立食スタイルも楽しみに変えていただけそう!
式当日。人前式では、互いの想いを届け合う2人のありのままの言葉に、ご家族も感嘆。続く1部の披露宴は、ご家族が2人のルーツとなったゲストと存分に触れ合う場。どんな人達にどれほど愛されているのかを存分に感じていただく……披露宴でなければ生まれない、素敵な場面でした。2部は、バーカロのコンセプトに合わせて会費制に。「一番浮かれたお洋服」というドレスコードに、2人のお気に入りメニューの用意。誰もが思い思いに2人と触れ合い、バーカロを楽しむ時間となりました。

「DO」から「BE」を引き出す。
想いの本質を探ることが2人らしいいい式づくりにつながる
準備期間を経て仲良しになったという2人。聞かれないと考えないことを話し合い、互いを知ることができたからだそうです。
2人が育んできた価値観、囲まれてきた人々。お互いがどんな存在で、何を大切にしたいのか。2人とゲストにとってこの式の意義は何なのか。そう向き合った時に見えてくる想いこそが、2人らしさです。だから、2人の理想と希望「DO」から、その想いがどんな価値観によって生まれているのかという「BE」を引き出すことが大切。2人らしい式には、2人の人生を豊かにする価値があります。 結婚式に対してネガティブな意見があるのは、過去参列した式の影響が大きいはず。すなわち、私達プランナーは、そこに集う人達の「式の価値観」をも作っているのです。だからこそ私は、2人らしいいい結婚式を作り続けて、「こんな式ならやりたい!」という人を増やしたい。日本の結婚式の価値をもっともっと上げていきたいと思っています。
評価のポイント
吉原さんが新郎新婦の中にある「こうありたい」に向き合う姿勢には、ブレない一貫性がありました。本質的な投げかけを通じ、「おふたりらしさ」を見つけ出していく。大切なものを残してゆく「引き算」と代案としての「足し算」があり、そこに吉原さんならではの価値付けがなされることで、独自性に富んだスタイルが確立されていたように思います。BEに向き合う吉原さんの信念や方法が、結果としておふたりにとって最適な形へと導いてゆかれました。