リクルートブライダル総研は、結婚に関する調査・研究、未来への提言を通じて、マーケットの拡大と社会課題の解決に取り組みます。

age is just a number

立ちはだかる年齢の壁を、2人もプランナーも乗り越えられた結婚式。
概念を捨てて素直な気持ちを大切にすれば、かけがえのない式は作れる

大野 彩湖(おおの あやこ)さん
(富山県 ホテルニューオータニ高岡)

「結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです」中学生時代、この言葉に衝撃を受けプランナーを志しました。
休日はお客様おすすめのカフェやラーメン屋さんを巡ることが好きです!

年齢が原因で引け目を感じる新婦と自信が持てないプランナー。
打破のためにまず変えたのは接客スタイル

 プランナー歴3年・22歳の私が担当したのは、はるか年上の新郎新婦。常日頃若さに自信を持てずにいた私は、50歳前後の2人に信頼していただけるのか不安でした。

 新婦は年齢が原因で、式に引け目を感じている様子でした。私が自分の年齢に自信が持てないのと同じだ! そう気づけた途端、2人が仲間のように感じられ、幸せにしたい想いでいっぱいに。大好きなアーティストの歌詞「Age is just a number」の通り、年齢なんてただの数字。歳に縛られず、自分の想いを大事にするべきだと気づいた私は、「この歳でもやってよかった」と思ってもらえる式を作り、同時にプランナーの年齢が関係ないことをも証明したいと考えるようになりました。

 まず変えたのは、接客スタイル。年齢差を理由に遠慮するのをやめ、一組の新郎新婦としてまっすぐ向き合うことにしました。すると、娘のように可愛がってくれていた2人が私をプランナーとして頼ってくれるようになり、式に対しても意欲的に! 「歳も歳だからゲスト同様にパーティドレスでいい」と尻込みしていた新婦も私のすすめでウエディングドレスを試着し、似合うものと出会えました。「自分なんて」という思い込みを打ち砕くことができたのです。

意見の対立は、価値観をたどれば共通点が見える場合もある。
自身の体験や想いも重ねつつ提案した演出

 盛大な式をしたい新郎と、歓談メインの式が希望の新婦。演出に関して2人の主張は真逆だったため、私はそれぞれの価値観に注目しました。すると見えてきたのは、一つの共通点。「ゲストを飽きさせたくない」新郎と「スピーチなどでゲストに負担をかけさせたくない」新婦には、いずれもゲスト第一の想いがあるとわかったのです。このことから、ゲストファーストで演出や進行を提案すれば、2人ともが納得できる式を作れると確信しました。

 そこでまず、2人がエピソードを交えてゲストの人柄を紹介しつつテーブルをまわる、紹介ラウンドを提案。関係性を2人が披露することでその場が温かくなり、笑いと涙に包まれた時間が生まれました。

 また、新郎には死別した前妻との間にお子様が2人いること、2人が式を挙げたい一番の理由が「けじめ」であることから、宴内人前式でのセレモニーを提案。実は私自身、幼い頃に父を亡くし、義父がいます。大切にしてくれる義父に対して線を引いてしまう自分を責めてきた私は、新郎のお子様達にも伝え切れていない想いがあるのではと考え、お子様にオリジナル結婚証明書の作成を提案しました。自分の境遇と合わせて伝えると娘さんも共感してくれ、見事実現。当日結婚証明書を囲む4人の笑顔には、血のつながりを超えた想いが確かに宿り、これから始まる家族のけじめにつながる演出となりました。

2人と共に概念の壁を乗り越えた式。
プランナーとは自分の価値観さえも大きく変えることができる仕事

 私は今でも義父を本当の父と思うことはできませんが、この式を通してさまざまな家族の形を知りました。特殊な距離感も、義父と私がわかっていればいいことなのだと気付き、自分を認めることができたのです。誰かの人生に深く関わるからこそ、自分の人生観さえも大きく変えられる。改めて、この仕事はすごいなと感じました。

 年齢に自信を持てなかった私がここまで踏み込んだ提案ができたのは、プランナーとしてだけではなく、人としても大きな成長ができたから。年齢の殻を破った2人と私。共に「Age is just a number」を体現できたのだと思います。

 年齢に限らず、国籍や性別もただの概念に過ぎません。そんな概念に囚われず、素直な気持ちで式と向き合えた時、きっと人生でかけがえのない宝物のような式をつくることができるのだと思います。

評価のポイント

自身の年齢の浅さに自信が持てなかった大野さんですが、年齢を理由に結婚式に消極的な新郎新婦を前に、自らの考えを見直し、接客方法を変える努力をされました。1人の人として対等な目線で信頼関係を築き、おふたりの本音を引き出せたからこそ、たくさんの介在ポイントが生まれていたと思います。プランナーとして自ら殻を破り、アップデートし続ける先に、これからのプランニングや結婚式の未来も広がっていくと感じさせてくれました。