リクルートブライダル総研は、結婚に関する調査・研究、未来への提言を通じて、マーケットの拡大と社会課題の解決に取り組みます。

紡ぐ

「どんなことがあっても2人の味方でいる」この想いを届けるため
ご家族と2人の想いを紡ぎ、感謝を伝え合う結婚式を創り上げる。

土田 たか志(つちだ たかし)さん
駒ヶ根高原 古民家ウェディング 音の葉(長野県)

古民家ウエディング「音の葉」統括マネージャー。フローリストとしてブライダルに携わったことがきっかけで、プランナーに。趣味はロードバイクと庭造り。2人の子どもの成長が何よりの楽しみ。

「感謝を伝えたい」という2人と「味方でありたい」というご両親
互いの想いを紡ぎ合う結婚式に

 私が担当したのは地元が長野で東京在住の2人。コロナ禍で東京での結婚式を諦めたにもかかわらず、意外なほど2人は明るく楽しそうでした。その様子から、式を挙げるはずだった東京のプランナー様が、結婚式の楽しさを伝えてくれていたのだと感じました。打ち合わせは、最初からオンライン。急遽制作した「ご案内ムービー」で式場の空気感を伝えるなどして打ち解け合い、信頼してもらいました。

 2人の希望は、「感謝を伝えること」と「絆を深めること」。そこから見えてきたのは、家族に対する強い感謝の気持ちでした。コロナ禍で難しい判断が続く中、ある時ご家族が私にこう言いました。「2人の門出のため、どんな状況であろうと、味方でいようと覚悟を決めました」

 私には、ブライダルプランナーとしての自分の介在価値を見いだせなくなり、この業界から離れていた時期がありました。その時「いつでもあなたの味方だから」と支えてくれたのは、同じ地域でブライダルに携わる仲間たち。その言葉が、ご家族の言葉と重なりました。私自身も、2人とこのご家族の圧倒的な味方でいたい、と強く思いました。同時に、2人とご家族の想いを届け合える結婚式にしたいとも思うように。互いの想いを紡ぎ、確認し合うことこそがこの結婚式の意義だと確信したからです。そんな結婚式なら、東京のプランナー様の思いも成就するはず。私はすべての想いを届ける責任を感じながら、テーマを「紡ぐ」としました。

家族が想いを綴った手紙のリレー、「紡文(ほうぶん)の儀」。音の葉の茅葺き門があしらわれた便せんと、オリジナルの手紙ホルダーも作成。ここでの結婚式が心からの思い出になるように、と願いを込めて。

手紙に始まり手紙で終わる一日
2人と家族、ゲストの想いが丁寧に紡がれ、お互いを行き交う

 挙式当日は、新婦から新郎への手紙で始まりました。続いて、新婦が手作りのお守り袋に入れた手紙を、ご両親に手渡し。感謝の言葉を伝える、親子だけの時間です。森の中での挙式の冒頭では、新郎から両親へ感謝の手紙が贈られました。

 その後は、私が構想した手紙のリレーです。ご家族が「手紙を読み上げてはそれをホルダーに入れ、次の家族に手渡しする」ことを繰り返し、最後は2人のもとに届くという儀式。これを私は「紡文の儀」と名付けました。両家の家族間を何度も行き交いながら紡がれていく、心を込めて綴られた手紙の数々。コロナの影響で列席できなかった親戚からも手紙をもらうことができ、手紙ホルダーはパンパンに。それを見て私は、結婚式のような特別な場で想いを伝えたいのは、新郎新婦だけではないのだと確信しました。

 新婦のお母様がサプライズで用意した色打掛、ご兄弟が集めた友人からのサプライズムービー、新郎家からゲストへのお箸のプレゼント。その後も両家の愛があふれる和やかなパーティとなりました。一日の結びは新郎から新婦への、感謝の手紙のサプライズ。最初から最後まで2人とご家族、ゲストの想いが紡がれた結婚式でした。

手紙で紡ぎ合う、お互いの想い。この後は両家が好きだというバーベキューを日本庭園で楽しむなど、愛があふれる和やかなパーティーに。締めくくりは、どんなに忙しくてもお弁当を作ってくれる新婦への感謝の手紙。

何があっても味方だと、結婚式は想いの丈を届けられる場
コロナ禍の今こそ価値を守る時

 「どんなことがあっても、あなたの味方でいる」。この言葉を届けることができるのは、結婚式にほかならないのだと、この結婚式を通じて感じました。だからこそ今、結婚式は必要なのです。

 私たちは、自身が創り上げた結婚式のかけがえのないシーンから、あふれる幸せを受け取ってきました。これからも新郎新婦や2人を支えるすべての人の味方でいるために、また結婚式という文化の価値を守り育てるために、与え合う時です。会場や地域を超えてつながり、協力し合ってコロナという困難を乗り越えていくことが、結婚式を守ることにつながると私は信じています。

評価のポイント

私たちは一人で生きているのではなく、誰かに与えられた優しさをまた他の誰かに届け、支え合う網の中で人生を編んでいます。土田さんにとって結婚式のプランニングは、そうやって支えられてきたご自身の人生と新郎新婦・ゲストの人生をつなぐ結節点の一つでもあるのだと感じました。ここで生まれた結婚式は、列席者だけでなく、スタッフや地域の人々をも結びつけていく起点にもなると思います。準備・当日を通じて注がれる優しい視線が印象的でした。