リクルートブライダル総研は、結婚に関する調査・研究、未来への提言を通じて、マーケットの拡大と社会課題の解決に取り組みます。

誰かのために生きてこそ ~10年目の誓い~

人生で最も辛い思いをする夫を支えるためプランニングした
結婚10年目のセレモニー。今だからこそ気づけた誓いの言葉の意味。

渡辺 昌恵(わたなべ  まさえ)さん
ホテル椿山荘東京(東京都)

2019年GWAファイナリスト。東京ベイエリアのホテルでプランナーを10年経験した後、異動。人を喜ばせることと婚礼が無事に終わった後の一杯が大好き。結婚10年目で「いい夫婦の日」生まれ。

それまで仕事第一だった私
夫のうつ病という大きな試練をきっかけに大切なものに気づいた

 「誰かのために生きてこそ、人生には価値がある」私の大好きな言葉です。

 プランナーとして14年間全力疾走してきた私は、「仕事が一番。それが私らしい」と思っていました。結婚10年目で夫と2人暮らし。夫はスポーツクラブの支配人で、運動を通じて地域の方に健康に過ごしてほしいと、熱い想いを持つ人です。

 そんな夫が、うつ病になってしまいました。お客様の命に関わる店舗でのトラブルが続き、20年続けている仕事に行けなくなってしまう日々が続いていました。誇りを持って仕事してきた彼にとって、病気を理由に降格を命じられたことも大きなショックに。更に体調を崩してしまいました。

 夫を家に残すことに苦悩しながらも、朝から夜遅くまで仕事の日々「私は、一番大切なものに気づけていなかったのかもしれない」。家族が人生で一番辛い思いをする中、私に何ができるのだろうと考えるようになりました。「夫婦の誓いの場を作り、夫を支えたい」これが私の結論でした。結婚10周年の節目の年。「これからも2人なら乗り越えられる」お互いがそんな気持ちになれるセレモニーの企画は、プランナーの私だからこそ実現できると考えたのです。

セレモニーを行ったのは、思い出の場所、葛西臨海公園。セルフフォトだからこそ自然な表情になり、和やかな雰囲気に。

2人だけの特別なセレモニー
相手のことを想いながら書いた手紙を贈り合う、大切な時間

 セレモニーは思い出の場所、葛西臨海公園で。夫にプレッシャーを与えないよう2人だけで過ごし、お金をかけず、自分たちでアイテムを用意しました。私が一番大事にしたのは、お互いへ手紙を贈り合うこと。相手のことをたくさん考え、振り返る手紙を書く時間こそが、今の私たちには重要だと感じたのです。将来また辛いことが起きた時に振り返れるよう、手紙を贈り合う場面は動画で残すことにしました。お互い手持ちの白い服を引っ張り出し、少し特別感を出すために結婚式で着けたピアスを着用。私の手料理が大好きという夫が元気になるよう、お弁当も持参。外に出たがらない夫も、数日前から楽しみに準備してくれました。

 当日は晴天。スケジュールは決めきらず、好きな時間に好きなことをします。ゆっくりお弁当を食べて、手紙を読み合いました。便せん1枚仕上げるのに1時間以上もかけて想いをめぐらせ、夫が書いてくれた手紙。そこには10年分の感謝と私への気持ち、今まで以上にお互いを思い、2人で人生を歩んでいきたいとの気持ちが書かれていました。私は、夫がいてくれたからプランナーを続けられたこと、毎日駅まで迎えにきてくれることへの感謝の思いを書きました。また人生で一番辛い時間を過ごしている今が雨なら、やがて晴れて虹が出る日まで横で支えたいという気持ちも綴りました。読み終えた夫は、静かに涙を流しました。絶望の中に、一筋の光を感じたのだそうです。

 夫はこの日を境に自発的に行動を始め、ふさぎ込む時はこの動画を見て気分を変えるようになりました。先月職場復帰を果たし、一生懸命前に進んでいます。

渡辺さんが手紙を読んだ後、愛しさと嬉しさが込み上げて涙するご主人。人生で一番苦しいタイミングでの手紙がとても嬉しかったのだそうです。

夫婦で支え合い、生きてゆく
セレモニーをきっかけに誓いの言葉を理解

 10年前、私たちが結婚式で立てた誓いの言葉『健やかなるときも 病めるときも喜びのときも 悲しみのときも 富めるときも貧しいときも 愛し 敬い 慰め 助け その命ある限り 真心を尽くすことを誓いますか』その意味を当時は深く考えませんでしたが、今なら少し前のめりで「誓います」と言える気がします。この先更に、この言葉の意味を深く理解できるようになるのでしょう。今回のセレモニーがあったからこそ、今そう思えます。辛いことも幸せなことも共有し、支え合い、私たちは今、乗り越える時期なのだと思います。

 「誰かのために」がカタチになった時、このセレモニーを通じて一番変わったのは、仕事第一と言っていた私自身だったと気づきました。私は、プランナーは自分が幸せであることが大切だと思っています。今、私はとても幸せです。これからもプランナーとして大切なお客様のため、大好きな職場の仲間のため、愛しい家族のために、前を向いて生きていきます。

大事にしたのはお互いに手紙を贈り合うこと。10年分の感謝やこれからの人生について、お互い想いをめぐらせながら書きました。お互いを慈しむ心が伝わります。