勇気を出して正直な自分を2人にさらけ出した時、初めて拭えた怖さ。
2人を知りたい強い想いが自らの殻を破り、それが一歩踏み出す勇気に。
幼い頃から憧れていたウエディングプランナーになり早5年!入社当時から変わらないモットーは「みんなの太陽になること」と「限界を作らない事」大切な人達を輝かせることのできる存在でいたいと常に思っています。
自身の性の特性や過去のトラウマを正直に話してくれる2人を前に感じた、担当することの怖さと不安
最初の打ち合わせで和香さんから告げられたのは、自身がバイセクシャルという事実でした。同時に、これまでの結婚式での辛い経験も教えてくれました。同性のパートナーがいてもシングル扱いされ、ブーケプルズの参加や、次は誰が結婚するのかという話題を避けられなかったなど、深く傷ついてきた和香さん。2人の要望は、「新郎新婦という言葉はNG」「トイレはLGBTQの方が気持ちよく使えるよう、男女別だけでなく多目的トイレもあることを伝えてほしい」「全員が平等に楽しめる空間を作りたい」でした。
和香さんは、大切な友人の死をきっかけに自らの命を絶とうとした経験も話してくれました。それを救ってくれたのが、元同僚である三樹男さんだったそうです。「この世には結婚したくてもできない人がいる。私だけ幸せになってもいいのだろうか」と、祝福を素直に受け入れられない和香さん。奥が深すぎて、怖い……私に担当が務まるのだろうかと不安が膨らみました。でもこんな想いをする方が一人でも減り、和香さんにも結婚式をしてよかったと心から思ってほしい。私はLGBTQの方のお手伝いが初めてであることを打ち明けました。これは、2人を不安にさせるまいと今まで伏せてきたことです。でも正直に伝えて、まっすぐな2人と向き合いながら前に進みたいと思ったのです。2人は快く、「一生懸命考えてくれる松原さんと新しい結婚式を作りたい」と言ってくれました。その言葉の裏側には「ありのままの自分たちの結婚をみんなと共有し、肯定してもらいたい」という希望が感じられました。
- たどり着いたテーマは「みんなちがってみんないい」。これを提案すると2人は涙しながら喜び、感謝を伝えてくれました。
怖さが消えて芽生えた想いが生み出した、前向きな結婚式。
ありのままを認め合える一日に
打ち合わせごとに「怖い」という思いが「もっと知りたい」に変わっていきました。LGBTQのことを調べ、たどり着いたテーマは「みんなちがってみんないい」。「想いや個性はそれぞれ違ってもいいじゃないか」と言ってもらえる一日にしたい、との想いからでした。これを提案すると、2人は涙しながら喜び、感謝を伝えてくれました。「誰も悲しまない結婚式に」と少し後ろ向きだったスタンスが、「全員に感謝のおもてなしをする結婚式に」と前向きに変わりました。
衣装はドレスではなくパンツスタイル。誓いのキスや指輪の交換ではなく、ガッチリ交わす握手。ゲストとの撮影は一緒にレインボーフラッグを持って。最後に、和香さんが感謝の手紙の冒頭で「最初にありがとうを伝えたい人」と、私を名指ししてくれました。結婚式を何度も辞めようかと思ったこと、でも私の存在でどんどん楽しみになっていったこと。「出会うことができて心から幸せです」と、嬉しい言葉をもらいました。結婚式後ゲストからは「違和感が全くなかった」「お手洗いなど配慮が細やかで過ごしやすかった」「全ての人がありのままでいいんだという想いが伝わった」との言葉も届きました。
- 2人の誓い。ガッチリ交わす握手。
これまでの誤った認識や思い込みに気づくことができた出会い。
そこから見えたこれからの歩む道
人との出会いで、私は枠にとらわれていた自分に気づきました。また誉め言葉が、相手を傷つけることもあると知りました。どんどん自分の発言が怖くなりますが、怖くてもいいんだと思います。理解するには正直に「教えてください」と伝えればよいのだから。そこから一緒に作り上げる経験こそが大切なのです。
これからも、全てのお客様に対してまっすぐ向き合い、枠にとらわれず一歩踏み出す勇気を大切にしながら、「みんなちがってみんないい」結婚式を作っていきたい。そして「初めては怖くないよ」と仲間の背中を後押ししていきたいです。
評価のポイント
お客様の置かれた状況や価値観が多様化する今、プランナーが持つ知識や考え方だけでは対応しきれない場面がますます増えています。そんな時、無理に自分の枠に当てはめて考えるのではなく、素直に「知らないから教えて欲しい」と言えること、何よりお客様のことを知りたい、最良の結婚式を一緒に考えたいと思え、それを伝えられるスタンスが求められているといえるでしょう。お客様の手紙の冒頭で呼ばれた松原さんの名前に、感謝の想いが強く滲みます。