リクルートブライダル総研は、結婚に関する調査・研究、未来への提言を通じて、マーケットの拡大と社会課題の解決に取り組みます。

ふたりの栞~大切な一日をいつまでも~

プランナーが二人にとっての「栞」になる
結婚式だけでなく、人生にも寄り添える存在でいたい

奥山 玲奈(おくやま れな)さん
オワゾブルー山形(山形県)

東京観光専門学校 ブライダルビジネス学科 卒業
人生で出会った全ての人との縁を大切にしたいと考えており、よく遠方に住む友人に会いに行きます。プランナーとしてもその気持ちを大切にしています。挙式後もお客様との縁が繋がり続けていく事が何より嬉しいです。

母を思えばこその決定にも
二人にとって本当に良いのかという思いが

 結婚式は挙げたいけれど、具体的なイメージがなかった二人。家族や友人との想い出を鮮やかな言葉で語る姿が印象的で、「まるで人生を描いた一冊の本のよう」と感じました。そこから一歩踏み込んで提案したテーマが「栞」。結婚式が二人にとって何度でも開きたくなるページとなってほしい。過去だけではなく、未来に向けて沢山の栞を挟んでいくきっかけとなってほしい。そんな想いを込めました。
 まず、結婚式までの日々を鮮明に残すためのノートを作ることを提案。招待状には栞型のメッセージカードを同封し、テーマを予め伝えました。また、当館では挙式の中でお父様お母様からメッセージをいただくシーンがあります。親御様からの言葉は、生涯を支えるものになるからです。しかし二人は「お母さんの負担になるといけないから…」とおっしゃいました。何度か話をするものの二人の気持ちは変わらず。お母様からの想いが伝わらない結婚式は本当に二人にとって良いことなのだろうか?そんな思いが私の心に残りました。

幼い頃、読み聞かせてもらっていた絵本を見せあう新郎新婦。これから家族になるお互いの両親。その両親との思い出を一冊の「絵本」を通して語り合う姿がとても印象的でした。

真剣な想いを伝えるためには?
必要だった「読み聞かせ」の体験

 ご両親が集まる打ち合わせで、私は伝えたい想いがありました。それは二人の「絵本の記憶」です。「金魚を探したのを憶えている」「ワンピースの柄がいろいろと変わるのが好きだった」幼い頃の大切な思い出を通じて、両親への想いを伝えたかったのです。ただ、うわべだけの言葉になってしまうと感じた私は二人が実際に26年前に読み聞かせてもらっていた絵本を探しました。そして、過去に私が担当した新郎新婦に協力いただき、そのお子様に読み聞かせを体験させてもらったのです。今では親になったかつての新郎新婦に、お子様へ絵本を読むときの気持ちも聞くことが出来ました。その経験を経て臨んだご両親との打ち合わせ。「二人はちゃんとストーリーも憶えていましたよ。言葉は話せなくても絵本で親子の心は繋がるんですね」
 こうしてお願いしたお子様へのメッセージ。お母様も快く承知してくださいました。

忘れられない人生の1ページ
母から子に贈るメッセージ

 迎えた結婚式当日。ゲストからいただいた栞型のメッセージカードで二人のノートはいっぱいに。内緒で用意していた全スタッフからのメッセージにも二人は感激。そして、二人が両親のために手作りで準備をした革でできた「栞」をプレゼント。
 ご両親からのメッセージをいただく場面では、親御様自らゲストへ結婚式のテーマを伝え、我が子との記憶を辿った言葉を語ってくださいました。新郎のお母様からは絵本を入れる手作りのバッグのプレゼント。こみ上げる涙を必死にこらえる新郎。テーマを共有していたからこそ叶ったこの瞬間、私の願いがお母様に届いたのかもしれないと思い言葉になりませんでした。それはまさに、幾度となく振り返るであろう忘れることのできない結婚式。人生の大切なページに、様々な人がそっと栞を挟んでいった時間はこうして形になりました。
 人生が一冊の本であるならば、新郎新婦の栞は結婚式当日に残り続けます。結婚式を挙げたからこそ手に入る栞。その栞がウエディングプランナーではないでしょうか。プランナーが居ることで二人の記憶はいつまでも色鮮やかに残り続けることができます。「私だから出来る一日を一緒につくる」これが二人の人生に関わる理由。結婚式のテーマがこの先にも繋がる人生のテーマになる、私はそう信じています。

「これから先もずっと繋がっていたい。」そんな想いを込めて一枚の革から作った栞。家族の原点をイメージした栞の先は同じ一点から始まります。

評価のポイント

 奥山さんは、常に「さらにその先」に一歩踏み込みます。テーマは「本」ではなく「栞」に。「親子にとっての絵本」を想像するだけでなく実際に体験してみる。それを通じて結婚式がより意味深く、記憶だけでなく手触りを伴ったものになっていく。それを支えるのは、新郎新婦の人生に本気で寄り添う「覚悟」であることが、その真摯な言葉と表情から強く感じられました。