マリッジブルーになった新婦の心を開いた、合言葉の手紙
正面から向き合い続け、2人らしいDIYウエディングを実現
ブライダルコーディネーター歴6年目。当日はもちろん、お打合せも一生に一度だからこそ結婚式の準備から当日まで、全てを楽しんでいただけるようコーディネートしています。趣味は長野にたくさんある日帰り温泉巡り♨
希望でいっぱいだった新婦がある日突然マリッジブルーに
「ゲストも楽しめるアットホームな結婚式」。そんな希望とともに来館された2人。ところが結婚式5カ月前にかかってきたのは、「今からキャンセルできますか」という電話でした。思うように準備が進まない不安。やりたいことを実現しようとすればするほど膨らむ予算。更には「その式場で本当に大丈夫?」と心配する新婦のお母様の声。様々な理想と現実のギャップに直面し、新婦が深いマリッジブルーへの道を歩み始めてしまったのです。
うわべだけの言葉でその場を収めることもできました。でも「宮川さんがいるからこの会場に決めました」と大切な日を託してくれた2人と心から向き合うべきだと考えた私は、想いを伝えることにしました。選んだ伝達方法は、電話でもメールでもなく、より重みのある「手紙」。「手紙なら、今は前向きになれない新婦も好きなタイミングで読める。私の想いも届くのではないだろうか」…そう思ったからです。
そして「2人にとって本当に必要な言葉」となる合言葉を、何度も探しました。やっと見つけた合言葉は、「同じゴール=結婚式に向かって」。私は手紙で「もう一度、3人で同じゴール【結婚式】に向かって歩みませんか?」と伝え、本来の新婦の希望に立ち返って「ゲストが楽しめるアットホームな結婚式を作りましょう」と提案しました。すると数日後、新婦から「今度は3人でゴールを目指したい」と返信が来たのです!
2人もお母様も歓喜してくれた心温まるDIYウエディング
再出発の第一段階は「2人らしいアットホーム」の形を探すこと。「自宅は新郎のDIYで溢れていて、幸せな気持ちになる」という新婦の言葉から、その光景を会場で再現する「DIYウエディング」を提案。結果、様々なアイテムを一緒にDIYすることで2人の絆は深まり、予算の削減にも成功。「3人の姉達とは違う式に」という当初からの新婦の望みも叶いました。
会場に不安を抱いていた新婦のお母様には、2人がゲストを想って一生懸命準備していることや、4姉妹の末っ子で遠慮しがちな新婦が「母に認めてほしい」という一心で、お姉様たちと異なる式にしたくてゲストハウスを選んだことを伝えました。自ら刺繍で作ったウェルカムボードを、「ひと針ひと針に想いを込めて縫ってきた」と見せてくれたお母様。最終的に「宮川さんも、同じように想いを込めて結婚式を作ってくれているんでしょうね。娘のことはお任せします。よろしくね」と言っていただき、当日もお褒めの言葉をいただきました。
新婦も「準備、ワクワクしてきました!」とマリッジブルーを克服。私たちは晴れて3人で、同じゴール=結婚式を迎えることができました。式後の「諦めないでよかった。宮川さん、出会ってくれてありがとう」という新婦の言葉は忘れられません。
- 4姉妹で。お母様に「娘らしくて一番心に残る結婚式だった」と言ってもらい、新婦からも「なかなか認めてもらえなかった母に認めてもらえたことが本当に嬉しかった」という言葉をいただけました。
魔法の鍵で心の扉を開き、ゴールに導くことがプランナーの介在価値
「2人の味方になりたい」と無我夢中で向き合い続けたことで、私自身忘れかけていた結婚式への熱い想いにもう一度火を灯すことができ、成長にもつなげられました。
結婚式は、当たり前にあるものではありません。大切な時間を2人と共有していることを忘れてはならない、とあらためて実感しました。2人を本気にさせる鍵は、私たちプランナーが持っています。その鍵で心の扉を開き、2人では気づけないゴールを指し示して導くために、プランナーは覚悟と責任を持つべきではないでしょうか。今後もその鍵で、たくさんの新郎新婦をいい結婚式へ導いてゆきたいと思います。
- 「恥ずかしくてなかなか素直に好きと言えない」という新婦から新郎への、「トランプラブレター」。52 枚のトランプに好きなところを書き出してもらい、新郎に披露しました。
評価のポイント
宮川さんは「言葉」を軽々しく扱いません。ふたりが発する言葉の意味、今必要な言葉は何か、どう伝えるのが良いかをとことん考え抜きます。それは新郎新婦を一般化するのではなく、全員が違う顔を持った個人として捉え、その結婚式づくりに関わることの喜びと責任を心から感じているから。そのスタンスが、花嫁を変える「合言葉」や二人の関係をより良くするテーマや演出アイデアを生み出しました。