リクルートブライダル総研は、結婚に関する調査・研究、未来への提言を通じて、マーケットの拡大と社会課題の解決に取り組みます。

未来の幸せな私たちへ

大事なのは過去に立ち返ることではなく、未来に目を向けること。
結婚式を挙げることで、2人の未来はもっと幸せに変えられる。

仁藤 奈甫子(にとう なおこ)さん
ミュゼ四ツ池(静岡県)

2019年GWAファイナリスト。静岡県西部のホテルでブライダル課の支配人を経験したのち、ゲストハウスへ転職。大好きな結婚式の仕事ができることに日々感謝している。『宇宙兄弟』が大好きで、天体望遠鏡の購入を検討中。

結婚式に対してネガティブな新婦
未来の幸せに想いをはせることで少しずつ芽生える気持ちの変化

 「父とバージンロードを歩きたくない」と、やりたくないことだけが書かれた新婦のアンケートの要望欄。私はいったん新婦の想いを受け止め、ヒアリングすることにしましたが、本当にそれでいいのか?という思いが残りました。

 ある日新郎だけに来てもらい、私は伝えました。これまで結婚式を機に家族関係がよくなる奇跡をたくさん見てきたこと、もちろんその改善を望まない選択肢もあること。しかし、「結婚式にも顔合わせにも出ないというお義父さんに、彼女は頭を下げてくれました。僕と僕の家族のために。多くの我慢をしてきた彼女に、これからは夢を叶えてほしいんです」と、新郎。これまで私は、家族関係の改善が夫婦の幸せにつながると思っていました。でも新郎の願いを聞き、2人に必要なのは過去との対峙ではなく、未来の幸せに目を向けてもらうことだと気づきました。

 そこで私は2人に、理想の夫婦像を考えてもらいました。2人の意識がしっかり未来に向いたのを確認し、私は伝えました。結婚式は、理想の夫婦になるためのスタートであること。ゲストの前で決意表明をして認められ、幸せな時間を共にするからこそ理想に近づけること。すると新婦がこう言ったのです。「私たちも未来につながる結婚式を挙げたい!」。意識が過去から未来に向いたことで、新婦はどんどん前向きになっていきました。

挙式を未来への決意表明と位置づけた、2人での入場
さらにコロナすら楽しむ披露宴

 打ち合わせは順調でしたが、緊急事態宣言が発令。コロナ禍での式の事例も少ない中、さまざまな判断が求められました。私は、2人に最終判断を委ねるような責任逃れは絶対にしない。どんなことも3人で考えて答えを出し、笑顔を忘れず2人の光になろうと心がけました。以前ならキャンセルや規模縮小を選んだかもしれない2人は、明確な未来への意志を持った今、結婚式の実施を決断。私は2人の覚悟を感じ、どんなリスクも式場側が共に背負い、「絶対にコロナに打ち勝つ結婚式をする」と、心に誓いました。

 結婚式当日。チャペルの扉が開くと、腕を組んで立つ2人の姿が。父と歩きたくないというネガティブな理由ではなく、共に未来へ進むために歩む2人。それをゲストが見守ります。誓いの言葉は、理想の夫婦像を思い描きながら2人が作った家訓。2人には今日の誓いを大切にしてほしい。そう願って、結婚式のための言葉ではなく未来に残り続ける家訓を提案しました。

 披露宴では「コロナに打ち勝つ!」をキーワードに、再入場時に消毒しながらテーブルをまわる「消毒ラウンド」などを行い、大盛り上がり。そこには誰よりも笑顔の新婦がいました。

コロナという困難を、ネガティブではなくポジティブにとらえる結婚式にしよう、と強く心に誓いました。コロナで疲弊しているゲストにもとにかく楽しんでもらおうと企画した、「消毒ラウンド」。

気持ちが未来へ向いたことで次々に生まれる感動の奇跡
結婚式は夫婦の未来をより幸せに

 終盤、奇跡が起きました。親に手紙は読まないと言っていた新婦。しかし徐々に気持ちが変化し、自らの希望で感謝状を読んで渡したのです。未来を向いた新婦の心が過去の呪縛を解いた瞬間でした。

 さらに奇跡が。結婚式をしていないキューピットの親友夫婦に、新婦がフォトウエディングをプレゼント! 「結婚式は幸せになるために必要だ」という実感が、もう1つの結婚式を生んだのです。

 結婚式で、夫婦の未来をもっと幸せに変えられる。2人があらためて、結婚式の意義を感じさせてくれました。未来を変えるということは、2人の人生に深く関わるということ。私は今後も、2人の人生を背負う覚悟を持ちたいと思います。また、結婚式を挙げた夫婦がその先も幸せな人生を歩むことで、結婚式の必要性は人から人へ広がる。そう信じています。

結婚式への憧れから目を背けていた新婦。「結婚式の準備の中で未来に向き合ったご夫婦が、その後素敵な家族になるのを見てきた」という私の言葉から、どんどん前向きに。やりたいこともみるみる増えていきました。

評価のポイント

難しい状況においても、ふたりに選択の責任を押し付けるのではなく、「新郎新婦とプランナー三人で考え、一緒に決断する」という仁藤さんの覚悟が強く響きました。そうして共に向き合った時間があったからこそ、コロナ禍においても新郎新婦は結婚式を挙げる意味を見付け、決して見失わず、数々の奇跡を生んだのでしょう。新郎新婦と共に未来を見つめる姿勢がこれからのプランニングにより重要になることを伝えてくれる発表でした。