リクルートブライダル総研は、結婚に関する調査・研究、未来への提言を通じて、マーケットの拡大と社会課題の解決に取り組みます。

Promise & BatonTouch

当日までは、徹底的に「聴く」こと。
本番は、「感情曲線」「指揮者」「生き物」を意識。

荒井 さやか(あらい さやか)さん
宮の森フランセス教会&TERRACE VERVERGE(北海道札幌市)

プランナー歴4年。色々な分野の話題にも対応できるよう、他業種の人と関わったり、休日はとにかく出かけ、感性を磨く。特にファッションショー、演劇、ライブなど、限られた時間に起承転結があるものに触れ、心が動かされる瞬間を体感するように心がけている。

わずか2回の打合せの8割を、「聴く」ことに費やした

 新郎新婦がそれぞれにやりたいことがたくさんありながらも一貫性がなく、お互いに譲らない。しかも、最初の打ち合わせから本番まで1ヶ月で、東京在住の二人が挙式をする北海道に来られるのは、わずか2回。そんな中で私が、打ち合わせの8割を費やしたのが、「聴く」という作業です。「本番前にお互いの姿をみたくない」という具体的な要望から、「アルバムを開く様なイメージ」といった抽象度の高い要望まで。さらに要望だけでなく、二人の歴史やのろけ話を聴いたり、小さい頃の写真をみて、家族のような気持ちになったり。そこには、二人の最高の代弁者になるために、二人の価値観に自分の価値観をぴったり重ねたい、という想いがありました。

二人がずっと幸せであるために、ゲストを巻き込み、感謝の気持ちを。

 徹底的に聴いて見えてきたのは「自分たちらしく、頑張っていくことを伝えたい。そして、みんなにもそれを応援されたい」という想いでした。そこに私は、プランナーとして、ちょっとしたエッセンスを加えたいと考えました。二人がずっと幸せであるために、大切な人との絆を感じ、二人を支えてくれるすべての人への感謝の気持ちを深めてほしい。そのためにゲストも巻き込みたい、と。二人の大好きな歌からテーマを、「誓い」と「継承」―Promise & BatonTouchとし、未来にむけた想いを様々な形で誓い、ゲストからの祝福の継承を受ける形にしました。そしてそんな誓いと継承のシーンを何度も何度も繰り返し、そこにゲストを巻き込むことによって、二人の心の中へ積極的に働きかけ、想いがどんどん深まるように構成しました。

 たとえば最初の誓いの瞬間が、チャペルで初めてお互いの正装を見る対面式。新郎は対面した瞬間、絶対この人を幸せにしようと心に誓ったそうです。そしてバージンロードの入場で新婦の父から新郎への継承。続いて、大好きな歌の歌詞に置き換えた二人の誓いの言葉。二人の幸せを願いながらのゲスト全員での誓いのバルーンリリース。親友や幼馴染との入場や新郎の父から息子への歌。それぞれの心の中で誓い、お互いへ誓い、ゲストへ誓う。一方で、親友からパートナーへ、母から息子・娘へ、ゲストから二人への継承と、誓いと継承のシーンが何度も繰り返されます。結婚式のクライマックスでは、生まれたばかりの夫婦のファーストシューズに、50年後の二人へのメッセージを書いてプレゼント。今後の二人の長い人生への誓いと継承のシーンとなりました。

幼い頃使っていたフォークでがんばれのエールを込めてラストバイト。母から息子・娘へのバトンタッチ。

本番は、新郎新婦、ゲスト、スタッフ、三者でつくりあげていくもの

 いくら企画が良くても、当日の完成度が低くては意味がありません。そこで本番では、「感情曲線」「指揮者」「生き物」の三つを意識して進めました。
 まず、新郎新婦、ゲスト、スタッフそれぞれの「感情曲線」を意識し、描いていくこと。それぞれの人の感情を心の中に鮮やかにイメージし、どんな空気感のパーティを作りたいのか、一緒にスタッフと考えます。結婚式はプランナーの力だけではいいものは作れません。私は「指揮者」として、新郎新婦・ゲスト・スタッフにイメージだけを伝え、具体的な動きについては任せるようにしています。それによって最高のパフォーマンスが引き出せるということを、この結婚式を通して実感しました。最後にもう一つ大事なのが、「結婚式は生き物」だということです。当初、ファーストシューズを自分たちで履くと決めていた二人ですが、私は当日の二人の姿や親子の関係性を見て、両親から履かせてもらうことに変更しました。この突然のシーンに二人は感動が止まらなかったそうです。

生まれた赤ちゃんにその誕生とこれからの人生を祝福してファーストシューズを贈る話から、生まれたばかりの夫婦に、50年後のお互いにメッセージを書いた靴を贈ることを提案。靴に書かれた「金婚式、おめでとう」。50年後もこのときの気持ちが思い出せる、そんな人生に関わるくらいに大切なPromiseとなった。

夫婦の人生、一生分をプランニング

 私がプランナーとして、一貫して大切に持ち続けている想いがあります。それは、「結婚式の2〜3時間だけをプランニングするのではなく、お二人の夫婦としての人生、一生分のプランニングをする」ということです。二人に一生幸せでいてほしいから、結婚式に関わるすべての人たちが 「大切な人との絆を感じ、深められる」、「感謝する気持ちを深められる」ことを心がけています。

審査員の目

 準備期間1ヶ月という短い期間の中、お客様のイメージや想いを徹底的に聴き、受け止めることで本質的な要望を汲み取り、今までにない演出提案を実現させました。結婚式の瞬間だけでなく、新郎新婦の一生に関わるプランニングをするという自分なりのポリシーと、事前から当日までのプランニングのプロセスが可視化・体系化され、スキルとして伝達可能になっていることもポイントでした。(2011年9月30日更新)

ウエディングを進化させる