リクルートブライダル総研は、結婚に関する調査・研究、未来への提言を通じて、マーケットの拡大と社会課題の解決に取り組みます。

人のため結婚式 ~新郎新婦はゲストのために、ゲストは新郎新婦のために、スタッフは結婚式のために~

何が起きても、二人の想いを叶えるのが使命
強い想いが、かけがえのない結婚式を創る

今川 和恵(いまがわ かずえ)さん
ララシャンス伊万里迎賓館(佐賀県伊万里市)

プランナー歴4年。意識しているのは、思い込みを捨て固定観念を持たず、フラットな状態で物事を見ること。何よりも二人の想いを叶える結婚式を創り続けている。

「何を削るか」ではなく、「何ができるか」を考える!

 それは挙式前日の夕方5時、新郎が突然来館されました。聞けば妊娠5ヶ月の新婦が体調を崩し、病院で絶対安静、結婚式に参加するのも難しいと診断されたとのこと。「でも」と新郎は言葉を続けました。「余興もスピーチも全て予定通りでお願いします」。
 非常事態なのに、進行を削らないとはなぜだろう。真意を探ると、二人がよくおっしゃっていた言葉が浮かびました。「この日を迎えられたのは、お世話になった方々のお陰。ゲストが喜んでくれる結婚式にしたい」。そうか、二人はゲストを第一に考え予定通りに進めたいのだ。二人が本当にやりたいことを実現するのがプランナーの使命。「何を削るか」ではなく、「何ができるか」を考える!すぐに私は、外部パートナーを含む全スタッフに新婦の状態と、できることを精一杯やりたいという想いを伝え協力をお願いしました。

披露宴は施設をフル活用し、シーンに合わせゲストに移動していただく形に。食事は年配ゲストを考慮し着席形式。ガーデンでは素敵なDJ演奏の中、ウエディングカップケーキのブッフェ、同級生のダンスのサプライズ。ラストの友人たちによるハンドベルとピアノの生演奏は、礼拝堂を感動の涙で包み込みました。

新婦の意思と体調を最優先に、判断の連続と時間との戦い

 一夜明けた結婚式当日。新婦の体調は前日より回復し、会場に来ることができました。しかし絶対安静に変わりなく、予断は許しません。移動は全て車椅子、新婦の主治医と看護師に会場内に待機していただきました。挙式も披露宴も、進行は直前の判断の連続。新婦の意思と体調を見ながら、スタッフに臨機応変な対応を依頼しました。挙式では、新婦が大好きなお父様と一緒にバージンロードを歩くことを最優先。お支度等全ての時間を短くして新婦の負担を軽減しました。新婦は一人っ子のお父さん子。新婦の長年の夢をここで諦めたら絶対に後悔してしまう。最終的には新婦の強い想いから、ご自身でお父様と歩いていただきました。
 本来であれば次は披露宴の流れですが、私はここで、ガーデンでのミニ披露宴をご提案。通常は披露宴の最後に読む両親への手紙を、このタイミングで読んでいただきました。実は本番前、お父様が「本当は花嫁の手紙を聞きたい」とおっしゃっていたのです。体調が少しでも良いうちに手紙を読んで欲しいという願いは叶い、涙ながらに手紙を読む新婦の姿に、ご両親もゲストももらい泣き。ガーデンは感動に包まれました。
 続く披露宴は、新婦には支度部屋のテレビ中継を通じてご参加いただきました。新郎が状況を説明すると、ゲストは会場に設置されたカメラに向かって次々に手を振ったり、話しかけたり。すると披露宴の後半で新婦の体調が回復し、最後の余興を会場で見ることができるまでに。温かい拍手に迎えられ、二人は笑顔でゲストと共に披露宴を終えることができました。

新婦も一緒に披露宴を楽しめるように、支度部屋にベットとテレビを持ち込み、会場の様子を中継。ゲストは会場のカメラに向かって、話しかけたり、手を振ったり。

かけがえのない結婚式を創るのは、強い想いとたくさんの人の温かな手

 結婚式は無事に終えられたものの、私には気がかりが残りました。今回のような結婚式で、本当に良かったのか。私は新婦の本音を知りたくて、改めてご自宅へ伺いました。すると二人は「あの状況で、あそこまでの結婚式ができて本当に良かった」と笑顔でお話しくださったのです。思えばこの結婚式は、その場その場での判断を強いられる場面が多く、これで本当にいいのかと何度も考えました。でも、二人の想いを叶えるためには従来のやり方にとらわれない結婚式が必要だったのです。今回私が体感したのは「誰かを想う時、人は強くなれる」ということ。プランナーとして新郎新婦を想い、判断し続けられたように、結婚式は人の想いと人の手によって創り出されるものだということ。結婚式は二人と両家のその後の人生にかけがえのない影響を及ぼすもの。その瞬間を、プランナーとしてこれからも力強くお応えしていきたいと思います。

結婚式は勝手にできあがる訳ではない。 人の想いと、人の手で創り出されるもの

 “誰かを想う時、人は強くなれる”ということを、この結婚式で改めて実感しました。ゲストを想う新郎新婦、新郎新婦を想うゲストと両親、そして結婚式を想うスタッフたち。それぞれが想いを伝え心から一つになった時、それは大きな力となり、通常ではありえない状況でも「感動した」「とても自然で良い結婚式だった」とゲストに喜ばれる結婚式を創ることができました。

審査員の目

 多くの人が関わる結婚式では、いつ何か起こるかわかりません。そんな時に必要とされるのは、全てを引き受ける覚悟と、その場のベストを実現するクリエイティビティです。そして今川さんが新郎新婦と家族に「全て自分に任せて下さい」と言えたのは、日々の経験を通じたスタッフとの信頼関係とチームワーク。この全てを引き出し紡ぐ力が今川さんにあったからこそ、この結婚式は実現したのです。(2014年9月30日更新)

ウエディングを進化させる