リクルートブライダル総研は、結婚に関する調査・研究、未来への提言を通じて、マーケットの拡大と社会課題の解決に取り組みます。

Charm ~ “新規接客を好きになれない”
そんな私が変わったおふたりとの出会い~

自分の迷いと2人の希望に真摯に向き合う中で、学んだこと。
新規接客も施行同様、ウエディングプランニングの大事なパート。

山本 亜衣(やまもと あい)さん
宮の森フランセス(北海道)

「人生何をしよう?」悩みながら就職活動した結果導かれたブライダルのお仕事。プランナー歴丸7年「あなたと出会えてよかった」という言葉をいただけることが、最高の幸せです。チームで目標に向かうことが大好き!

苦手意識の強かった新規接客
さまざまな希望を抱く2人との出会いで、変化が見え始める

 3年前、施行担当の私は、完全分担制だった会社の方針転換で、苦手な新規接客もすることになりました。当時の新規チームには「希望に添えないことは曖昧に。できるかわからないことは忘れてくれることを願い、とにかく会場を決めてもらう」というやり方がまかり通っていました。成約がゴールで、施行は二の次というムードが漂っていました。

 そんな時出会ったのが、前向きで自己肯定感の高い2人。2人の要望は多岐に渡りました。新郎の実家がお寺なので、お寺を守る祖母のためにそこで式を挙げたい。でも新婦は父のためにバージンロードを歩きたいので、教会式も合わせて行いたい。芸術が趣味なので、大きなオブジェを飾りたい。フィーリング重視派なので、感覚的なものが伝わるプランナーを希望……すべてに理由はありますが、「宗教の違う2つの式を行うなんて」「貸切不可能なのでオブジェの搬入は無理」「施行まで担当する約束はできない」など、受け入れが困難な内容のものばかりでした。うやむやのまま進めることもできたかもしれませんが、「無責任な対応はよくない、正直に2人と向き合ってみよう」と私は思いました。

次々と立ちはだかる壁を越え
新規接客を経たからこその唯一無二の結婚式が見事完成

 まずは2つの式を行う違和感を伝え、宗教に関係のない人前式なら祖母・両親への想いを込めたセレモニーを両立できるのではと提案。また貸切の問題についても熟考。土日祝日の希望に叶って、個性溢れる2 人の心をつかみ、貸切も可能な日… … 模索する私が発見したのは、歴史に残る令和初日でした。祝日になるとニュースになったばかりで、この日はまだ空いていたのです。

 この提案に2人は大喜び。式と日程どちらも希望通りで、唯一無二の日に結婚式ができるというアイディアはプランナーへの期待も満たしたようでした。結果、当会場にて成約。会場にとっては本来ウィークデーだった日を埋めることができ、私もお客様の言いなりだった自分を卒業できて、「三方よし」を実現しました。

 半年後、ご指名を受けて私が施行も担当。新規接客で仮コンセプトが見えていたので、準備は万全でした。親族が宗教上、人前式には参列できないとおっしゃった際も、式ではなく結婚報告会という形に替えて、「誓いの言葉」を「2人の心得」にするなど宗教にまつわる言葉をすべて変換し、問題をクリア。気づけば、新規接客のプロセスがないと完成しないウエディングが、そこにはありました。

「父のためにバージンロードを歩きたい」という新婦の願いを叶えた「結婚報告会」で、多くのゲストの拍手と笑顔に包まれるお二人。

施行と別物ではないという気づき
新規接客での仮プロデュースが2人の希望と会場ルールを結ぶ

 新規接客も結婚式のプランニングの一部なのに、施行とは別物と決めつけていた過去。けれどこの結婚式を通して、私は大きく変わりました。チーム全体でも新規と施行の気持ちが通いあい、何でも相談しあえる雰囲気になりました。今、新規接客で提案するのは「会場のメリット」ではなく「ウエディングプラン」。お客様の希望と会場のルールの溝は、アイディア1つで埋めることができます。それを施行に引き継げば、結婚式をさらに進化させることができるのです。つまり、一貫制でなくとも「一貫制のような心意気で、新規接客時に仮プロデュースまで行う」ことが大切。新規接客は「営業」ではなく、まぎれもなくウエディングプランナーの役目なのです。

 今回、「自分を信じたい」という強い気持ちが私の原動力でした。「豊かな人生を応援できる人間」になるために、迷いや不安、違和感から目を背けず、真直ぐに生き続けます。

結婚式当日、ずーっと笑っていた新婦様に対し、抑えきれずに涙を流す新郎様。お二人には人を引き寄せる力があると感じ、その魅力を結婚式の中で表現したいと思いました。

評価のポイント

 お客様の無理な要望、慣習や会場の制限やルール。確かに不自由なことも多いけれども、見方を変え、アイデアをつなぐことで不自由から自由を創り出すことができる!これほどクリエイティブなことはありません。苦手意識を持つ人も多い新規営業のイメージを180度転換すると同時に、山本さん自身の迷いや不安を赤裸々に語り、それでも違和感から目を背けず立ち向かう姿が、同じ悩みを抱えるプランナーを強く勇気づけてくれました。