リクルートブライダル総研は、結婚に関する調査・研究、未来への提言を通じて、マーケットの拡大と社会課題の解決に取り組みます。

両家みんなの結婚式!

ご両親に結婚式のよさを感じていただければ、
心から二人を祝福してくださるはず。

中島 裕香(なかじま ゆうか)さん
ヒルズスイーツ宇都宮(栃木県宇都宮市)

プランナー歴1年5ヶ月。たくさんの結婚式を振り返って感じたのは、「お二人が喜ぶ提案ができる=お二人のことをよく知っている」ことだと考え、接客にしても、打ち合わせにしても、結婚式以外のお話をいかにできるかを心がけている。

式をあげられなかったご両親に、結婚式をプレゼントしたい。

 今回の新郎新婦ははじめから問題を抱えていました。新郎のご両親が結婚式に乗り気でないご様子なのです。よく話を聞いてみると、新郎のご両親が駆け落ち同然で結婚されていて、当時、金銭的にも式をあげられる状態ではなかったとのこと。二人はお付き合いも長く、両家公認の仲ということもあり、あえてお金のかかる結婚式をしなくても…と反対をされていたのです。一方で二人には、結婚式をあげていない両親にも、結婚式をあげてほしい、という想いがありました。そして育ててくれたご両親にどうすれば感謝の気持ちを伝えられるのか、一緒に必死に考えました。そんな中で「ご両親に結婚式のプレゼントをしましょう!」と提案。3人で決断したときには、ワクワクして今からスタートするんだ!という気持ちになったのを覚えています。
 きっと反対されている新郎様のご両親も結婚式の素晴らしさを知っていただければ、心から二人のことを祝福してくださるはず、そんな確信もありました。

新郎新婦の夢を叶えるために、深夜2時に郵便局へ走った、本番3日前

 ご両親へのサプライズ結婚式は、挙式リハーサル後・本番前の時間に行うことにしました。何度も何度も打ち合わせと挙式リハーサルを重ねました。前例がないため、早朝からの準備などパートナーさんには本当に無理なお願いをさせていただきました。その度に、「絶対にやってあげよう、やったほうがいい」という風に言ってくれて本当に心強かったのを覚えています。「結婚式はチームで作るもの」という私たちが日頃大切にしているこの言葉の大切さを実感した時でした。
 しかし結婚式の三日前、深夜の1時頃のこと。新婦から泣きながらお電話がありました。二人は費用をブライダルローンでお支払いされていたのですが、ご両親に心配をかけたくないと黙っていたそうです。それをご両親に知られてひどく怒られ、まったく元気をなくされていました。
 私は、「ここまでご両親のために頑張ってこられたのに、このままでは新郎新婦様の夢が叶わなくなってしまう!なんとかしたい!」と必死で考えました。そして無我夢中でご両親へのお手紙を書きました。ご家族のために素晴らしい結婚式を実現させるために、今まで二人がどれだけ準備を頑張ってこられたか、必死で伝えました。本番前日、なんとかわかっていただけたと伺った時には、本当にほっとしたのを覚えています。

挙式リハーサル後に、チャペルの扉がオープンし、お二人が登場。お二人から、扉の前に待機していたお母様へブーケをプレゼント。ご両親へサプライズ挙式が告げられ、そのまま執り行われた。挙式後は、3組の夫婦で記念撮影。

新郎新婦、そして家族が一つになって絆と笑顔が生まれた。

 そしていよいよ当日です。私は緊張で手が震えていました。チャペルの扉が開き、新郎がご両親にサプライズ結婚式について告げられました。新郎のお母様が涙をこらえて必死で上を向いていらっしゃったのがとても心に残っています。披露宴では、5年間も付き合っていたからこそなかなか言えなかった新郎から新婦へのプロポーズをしていただいたり、新婦の大好きな曲を会場全体でペンライトを振りながら大合唱をしたり、スタッフ全員で書いたウェルカムボードを飾ったり。披露宴後はみんなそろって一本締めをしたりなど、新郎新婦とご家族の夢が叶った素晴らしい結婚式なりました。

披露宴ではお母様と一緒に入場。 結婚式には、「子育て卒業式」の意味も。

家族と家族を結ぶ幸せ

 結婚とは二人が家族になること。そして結婚式は、二つの家族が一つになるための儀式なのではないかと私は思っています。あれだけ反対されていた新郎のお父様が、東日本大震災の日、危険を感じて真っ先に持ち出したものは結婚式のDVDだったそうです。本当に嬉しいお話です。実は今、新婦のお腹の中には新しい命が生まれています。私は5年後も10年後も、このご家族の幸せを見届けたいと思っています。こんなふうに、家族と家族を結ぶことができるこの仕事ができて本当に幸せを実感しています。

審査員の目

 新郎ご両親へのサプライズ挙式の準備を進める一方で、新婦ご両親へは「子育て卒業式」を提案。どちらかに傾きすぎることなく、あくまでも二つの家族を結ぶ「両家みんなの結婚式」を心がけたバランス感覚と、その一方で、お怒りのご両親に夢中で手紙を書く想いの強さと熱さ。その両方を兼ね揃えた、プランナーとしてのスタンスが高く評価されました。(2011年9月30日更新)