リクルートブライダル総研は、結婚に関する調査・研究、未来への提言を通じて、マーケットの拡大と社会課題の解決に取り組みます。

家族としての第一歩

お客様のこれまでの人生に深く入り込み
その時間の一つ一つを幸せな瞬間に変える

仲澤 ひかり(なかざわ ひかり)さん
アーククラブ迎賓館 新潟(新潟県新潟市)

プランナー歴2年。まだ知識や経験が少ない分、職場の内外を問わず、どのプランナーよりもお客様のことを考える時間はつくることにこだわっている。

新郎ご家族の絆を修復するきっかけを創りたい

 私は初回打ち合わせの前に、全ての新郎新婦と、じっくり話をする時間を必ず設けています。これまでの人生の歩みを伺い、結婚式の意味を深く感じられる一日にしたいからです。二人のこと、家族のこと、たくさん伺いました。見えてきたのは、非常に仲の良い新婦の家族と、あまり家族で過ごした思い出がないという新郎の家族、両家の家庭環境の違いでした。特に、新郎のご両親は良好な関係ではない様子でした。私は、何とか結婚式を通じて家族の絆を修復するきっかけを作りたい、大切な絆を感じられる場にしたいと、打ち合わせをスタートしました。

初めて全員で撮った家族写真。最初はぎこちない4人でしたが、徐々に笑顔が生まれ、撮影後半には、この数十年間のわだかまりが嘘のように、家族4人の笑い声がチャペル内に響き渡りました。さらにこの後、ご両親のツーショット写真も撮影。

「家族全員で写真を撮りたい」 その言葉の奥に込められた思い

 ある日新郎が、家族で写真を撮りたいとおっしゃいました。その一瞬の表情が気になり、理由を伺いました。実は新郎は家族全員で写真を撮ったことが一度もなかったのです。しかしご両親の関係は良好ではなく、式前日の宿泊もそれぞれ別々の部屋という状況です。私は思いました。何とか新郎の夢を叶えたい。ただ、そんな家族関係の中でただ写真を撮っても、あまり意味がないのではないか。一生に一度の結婚式を意味ある時間にするためには、家族全員の心の温度をあげる必要があると。そのために私は、新郎のお姉様に趣旨と状況を何度も説明し協力をお願いしました。
 新郎とお姉様にお願いしたのは、フォトアルバムの作成です。幼い頃の写真と共に、この時はこんなことを思っていた、こんなことがあったねというコメントを入れていただきました。これを当日ご両親にご覧いただくことで、家族全員にこれまでの家族ありのままの姿を振り返ってもらいたい、そんな想いをこめての提案でした。

幼い頃の写真と当時の思い出を綴った、新郎とお姉様による手作りフォトアルバム。

大切な時間の思い出に、少しずつほどけていく家族の心

 式当日、まずは新郎がお姉様と中座するシーンをつくりました。ご両親に、娘と息子の父と母なんだと改めて感じてもらい、心の温度を上げていただきたいという想いからです。そしてその流れでご両親を控室に案内し、アルバムをご覧いただきました。初めはとても固い表情でしたが、ページをめくるたびに表情が柔らかくなり、最後のページに書かれていた「お父さんとお母さんの子供でよかった」という一文に、お母様は声をあげて涙を流されました。
 その後、ご両親をチャペルに案内。そこで待っていた新郎とお姉様の姿を見て、子供たちがどんな想いであのアルバムを、この時間を用意したのか、全てを理解されたようでした。いよいよ家族写真の撮影。初めはぎこちない4人でしたが、徐々に笑顔が生まれ、撮影後半には、数十年のわだかまりが嘘のように、家族の笑い声が響き渡りました。いい機会だからという新郎の提案で、ご両親二人での写真も撮影。最初は恥ずかしげだったご両親も次第に笑顔となり、最後には小さな奇跡が起こりました。お父様がお母様の肩にそっと腕をまわしたのです。その姿に、新郎はその日初めて涙を流されました。
 再入場をした新郎の表情は何かがふっきれた、心からの笑顔でした。そして中座前は別々に行動されていた新郎のご両親が、撮影後は一緒にあいさつ回りをし、笑いあいながらお食事を楽しまれていました。会場が一つになり、心からの祝福につつまれた瞬間でした。式後、新郎から嬉しい言葉をいただきました。「さみしい想いを我慢して過ごしてきた24年間が、この1日ですべて忘れられたような気がします」と。そしてご両親からも感謝をいただきました。「大切な時間を思い出させてくれてありがとう」。

お客様が持つ時間を幸せに変えるプロフェッショナルでありたい

 幸せな時間が多いほど、人の心は、人生はきっと豊かになります。その後生きていくための大きなエネルギーになります。お客様が持つその時間の一つ一つを幸せな瞬間に変えるプロでありたいと思っています。お客様の人生に深く入り込むことはとても勇気のいることですが、お客様の心の中に入らなければ、これからの人生を豊かにできるような1日は生まれません。お客様が歩んできたこれまでの人生を受け止める真剣さと、強さをこれからも忘れずに人生で最高の一日を作り続けたいと思います。

審査員の目

 披露宴会場を流れる時間と並行して、家族の絆を修復する時間もまた流れていました。それをプロデュースしたのがプランナーである仲澤さんです。プランナーだからできること、やるべきことがまたまだあることを改めて気付かされました。並行していた時間が披露宴会場で再び合流したとき、この結婚式はつながりと祝福に満ちた最高の結婚式になったのだと思います。(2013年9月30日更新)

ウエディングを進化させる