リクルートブライダル総研は、結婚に関する調査・研究、未来への提言を通じて、マーケットの拡大と社会課題の解決に取り組みます。

映画のようなストーリー ~それぞれの想いをフィルムにのせて~

ゲストと過ごした時間、新たな旅立ちへの想い
それらをつなげ、結婚式という映画を創りあげる

稲垣 佐江子(いながき さえこ)さん
ブルー:ブラン(愛知県岡崎市)

プランナー歴8年。結婚式で大切にしたい事を最初に新郎新婦それぞれからヒアリングし、二人のそれぞれの想いがズレないように、打合せを重ねる中で一つに導いていく。

人前式では映画館をイメージ。来館時から気持ちを高める演出

 映画学校に通い、監督映画を映画祭で上映したこともあり、現在は映像会社に勤める新郎。新婦との出会いのきっかけも映画です。そんな二人だからこそ、映画というテーマに導き、さらにただ出会いのきっかけを表現するだけでなく、今まで過ごした時間、そして新しい旅立ちへの想いをゲストと共に一つ一つ繋げ、かけがえのない時間に変える、結婚式という映画を創ること。それが今回の目的でした。
 そんな二人が選んだのはゲストに囲まれての人前式。「誓いと賛同」、二人の決意をどう表現し、ゲストが二人を想って賛同できる空間をどう創るか。そこにこだわりを持ち、まずはゲストのご来館時に、短く切った8ミリフィルムをゲストにお渡しし、二人への賛同の証として、全員で繋げて頂きました。また挙式会場を映画館に見立て、8ミリフィルムの映写機を持ち込み、二人の生い立ちを紹介。これは映画の始まりをイメージし、会場を暗くして放映をする事によってゲストの想いを一つにさせます。続いて新郎に家族の想いをしっかりと受け止めてほしいと考え、サプライズで入場前に新婦の母から娘を託す想いを、扉の向こうからマイクを通して伝えてもらいました。映画館なみに響き渡るお母様の想いを聞き、結婚の重みを感じた後の誓いはより心に響く内容となりました。そして賛同は笑顔が二人らしいと考え、ゲストみんなで海外の映画上映後のようにスタンディングオベーションで、映画の名曲「OhHappy Day」を日本語にし、全員で合唱。スタッフも何度も練習し、ゲストと共に想いを届けることができました。

リメイク入場(お色直し)企画「ゲストの中心で愛を叫ぶ」。新婦の生い立ち写真をゲスト全員で持って、新婦をお迎え。ゲストの中心に立つ新郎が、「これからの時間を一緒につないでいこう」と新婦に愛を叫び、時計をプレゼント。感動の嵐となりました。

パーティーは、映画作りの現場をイメージしてプロデュース

 パーティーの始まりは、長いと有名な名物社長の祝辞です。30分のスピーチとなると、他の企画に影響が出るため、映画現場をイメージし、時間がわかるようなカンペを用意。結果、最短記録10分を達成しました。そしてカチンコを使ったキッチンオープン、さらに一番の目玉、お色直しならぬリメイク入場は、「ゲストの中心で愛を叫ぶ」。新婦の写真をもったゲストの中心に立つ新郎が新婦への愛を叫び、感動的な場となりました。
 しかし元々は、新婦は積極的に目立つことを好まず、お色直しもなし、あるいはシンプルなものを望んでいました。一方で新郎は、ゲスト全員によるサプライズで、新婦が一番輝く空間を創りたいと思っており、二人の想いが全く異なっていたのです。

賛同の証として、8ミリフィルムをゲスト全員でつないでいく

二人をよく知っているからこそ、二人の色を引き出せる

 実は、このリメイク入場の企画を生みだしたのは、新郎の同僚の方でした。なぜか毎回打ち合わせに同席しプログラムも知ってしまった彼を、私は初の試みで結婚式のサブウエディングプランナーに任命していたのです。素人を相方にするのはリスクがありましたが、それよりも二人をより理解している方と一緒に企画したほうが、絶対によりよい内容になる、そう思ったからです。私が大切にしている事は、新郎新婦それぞれの色を引き出す事です。なので今回のお二人の再入場の案も、プランナーとしての介在価値を悩んだ末、今回の再入場の案をサブプランナーと新郎に考えてもらうことにし、その案を私が掘り下げていくことに決めました。  一貫したコンセプトのもと映画を大きく二つにわけゲストとスタッフ全員で創りあげた結婚式。最後はエンドロールと共に、完成した一本の映画を上映しました。この想いを糧に、二人の人生という映画は一生続いていくのです。

お互いを選んでよかったと二人に実感してもらうこと

 新婦が輝く瞬間を肌で感じ、夫としての幸せを実感する。大切なゲストの前で愛を誓い祝福され、妻としての幸せを感じる。大切なのは、新郎新婦がお互いを選んでよかったと実感してもらうこと。それがウエディングプランナーの役割だと思っています。結婚式も本物の映画もチームで創ります。監督は私でしたが、この結婚式を創ったのは私たちです。最高の門出にしたい。ゲストとスタッフのその想いが、結婚式という最高の映画を創り上げたのです。

審査員の目

 二人の出会いのきっかけである「映画」を結婚式のテーマにすることはよくあることかもしれません。しかし稲垣さんはただ演出やコーディネートに終わらせず、結婚式を通じて新郎新婦とゲスト全員で一本の映画を作りあげるという、非常に立体的で新しいゲスト参加型の結婚式をプロデュースされました。「テーマウエディング」の新しい可能性を感じさせられました。(2013年9月30日更新)