リクルートブライダル総研は、結婚に関する調査・研究、未来への提言を通じて、マーケットの拡大と社会課題の解決に取り組みます。

二人からゲストへの感謝が伝わり 集まったゲストから二人へのまっすぐな想いが伝わる結婚式 ~亡き父と母の想いが形になった日~

二人の想いが伝わると、ゲストがそれに巻き込まれていく
そこに本物の感動と共感が生まれる

福西 則久(ふくにし のりひさ)さん
プリマディーバ(栃木県小山市)

プランナー歴3年半。当日二人らしく過ごしてもらえるよう、新郎新婦・ゲスト・プランナー、あらゆる視点から提案するよう心がけている。ゲストと一緒に笑い、涙し、気持ちを込めて担当。

カウンセリングを通して二人から出てきた本当の想い

 とても明るいお人柄の新郎新婦。でも会場見学時は「一応結婚式もやっとく?」程度のテンション、そのままいくと特にこだわりのない結婚式になりそうな雰囲気でした。何かが気になった私は、もう少し掘り下げて話を聞こうと思いました。すると、新郎は両親が離婚され、お母様が女手一つで育てられたこと、新婦は早くに両親が他界し、親族と兄に支えられ成長したこと、そんな二人は「親しい共通の友人が多い」「二人とも親戚にとても良くしてもらって、お世話になった」と話してくれたのです。さらに新郎からは「(新婦の)両親にどんな形であれ、結婚の報告をしたいです」という言葉が。二人の本当の気持ちに触れた瞬間でした。

バージンロードを歩く新婦のお兄様が挙式の直前、パーティグッズの鼻メガネをとりだされ、「新郎がとても緊張しているから、ほぐしてあげたい」と言われました。その優しい気遣いを、神聖な教会式でプランナーとして一瞬戸惑いましが、人が人を想ってする行動に悪いことはない、と決断、思い切ってそのまま入場して頂きました。チャペルはあっという間に、二人らしい明るい雰囲気で一杯になりました。

幼い新婦と亡き母の約束をゲストの皆の前で実現

 そこで提案したテーマは、友人や親族に支えられて今日まで来た二人の〝二人なりの感謝を伝える一日〞。二人からゲストへはもちろん、ゲストからも二人へ双方がしっかり伝え合える日。そのために必要なのは、「ゲストに心の準備をしていただくこと」だと考えました。どんなに強い想いで計画した演出も、その意図が理解してもらえなければ伝わり方も半減してしまう。効果を最大にするため、司会者にはシーンごとに声のトーンや間の取り方に配慮いただくよう入念にお願いしました。中でも注力したのは、幼い頃の新婦と亡きお母様の約束を実現するシーン。「ちかちゃん(新婦)の背中にはリボンが付いているの。ちかちゃんがお嫁さんになる時に、ママがそのリボンを解いて、お婿さんになる人にちかちゃんをプレゼントするのよ」。新婦がずっと心に抱いていた母との大事な約束、このシーンは披露宴の新郎新婦入場で行うことにしました。司会者に原稿を作成してもらい、事前にスタッフ間でもチェックしました。披露宴本番、まず新郎が入場し司会者がエピソードを紹介した後、新婦入場。微笑みながらも瞳は涙で一杯の新婦は、お母様の兄妹の前へ。司会者の合図でお母様代わりの二人がゆっくりとリボンを解きました。約束が現実となり、まるでお母様がいらっしゃるかのような光景…会場全体が一体感と感動に包まれた、その日最も印象に残るシーンでした。

披露宴の冒頭で、亡きお母様と新婦の約束をゲストの前で叶えることにしました。ゲストの注目度が高い段階で行い、印象に残る瞬間にしたかったのです。新婦は微笑みながらも目を潤ませて登場。亡きお母様も「約束を覚えていてくれて嬉しい。幸せになってね」と微笑みかけてくれているかのようでした。

二人らしい空間を、一緒に創りあげるのがプランナーの使命

 披露宴の前にも、予想もしていなかった出来事がありました。新婦とバージンロードを歩く新婦のお兄様が、挙式入場の直前、なんとパーティグッズの鼻メガネを取り出したのです!「新郎がとても緊張しているからほぐしてあげたい」。その優しい気 づかいを汲むべきか、神聖な教会式だからとお断りするべきか、一瞬戸惑いました。大事な一日を見守るお父様の遺影は、ピースサインの楽しそうな表情。お父様の叶わなかった想いを今日、お兄様が代わって叶える。「お父様ならきっとこうするはず。人が人を想って行う行動に悪いことはない。スタッフや牧師先生には後で存分に謝ろう」。私は決断し、思い切ってそのまま入場してもらいました。扉の向こうからはどよめきと笑い声、そして緊張が解けいつも通りの笑顔の新郎新婦!あっという間に、二人らしい明るい雰囲気でチャペルが一杯になりました。
 どのプランナーにも忘れられない結婚式があります。この結婚式は、カウンセリングの深さで新郎新婦の人生と向き合えること、プランナーとしての責任と覚悟を私に教えてくれました。

まっすぐな想いが伝われば人は必ずそこに巻き込まれ、一体感と感動を覚える

 披露宴では新郎新婦、ゲスト、それぞれの想いが存在します。お互いにそれらの想いに触れ、まっすぐに向き合い、まっすぐな想いを伝え合えるよう、ゲスト全員にその心の準備をしていただけるようなお声がけ、雰囲気づくりに努めました。友人たちのまっすぐな想いに自分たちの存在価値を感じた新郎新婦は、一心に耳を傾け、人目をはばからず涙を流していました。

審査員の目

 深いカウンセリングは、新郎新婦の大切な想い出や本当の気持ちを引き出します。そしてその想いをゲストに丁寧に伝えることが、本物の感動を呼び、二人への深い理解と共感を生むのです。このゲストを巻き込む繊細な空気作りが福西さんならではの持ち味であり、結婚式の意味を最大化するために、全てのプランナーにとって大切なスキルであると気付かされました。(2014年9月30日更新)