リクルートブライダル総研は、結婚に関する調査・研究、未来への提言を通じて、マーケットの拡大と社会課題の解決に取り組みます。

LITTLE WORLD IN THE MIND(心の中の小さな世界)

二人らしい人生を、二人で歩いて行く
そんな想いと決意を伝える力が、結婚式にはある

鎌倉 綾香(かまくら あやか)さん
プレジール迎賓館(宮崎県宮崎市)

プランナー歴4年。心がけているのは「二人が何を求めているか」「ゲストに一番何を伝えたいか」を納得するまで聞くことと、感性を磨くため様々な所に足を運び良い物に触れること。

二人らしさを表現し、全員に認めてもらえる結婚式を創りたい

 ウェブデザイナーの新郎と、美容師の新婦。二人は結婚式で、自分達らしさを、ティム・バートン監督が描くような独特な世界観で表現したいと望んでいました。 私はご要望の奥にある二人の想いを知りたくて、その理由をたずねました。すると新郎が、こんな話をしてくださったのです。「監督の作品には、楽しいことの裏に辛いことがあるなど表裏一体の世界が描かれています。その世界が僕達にはとても現実的に思えるんです」。
 実は、新郎は創業88年の老舗呉服店の跡取り息子。伝統と格式を重んじる家で育ちました。周囲の期待を感じつつも、自分らしく生きたいという想いから、表裏一体の世界観に共鳴していたのです。話を聞いて感じたのは、結婚式で自分達らしさを表現し、親族に認めてもらえなければ、この先ずっと二人は自分達らしさを押し殺していかなければならない、ということ。私は新郎新婦の心の中にある夢や想いをテーマにし、二人らしさを伝え、全員に認めてもらえる結婚式を創りあげようと考えました。

二人がイメージする世界観を徹底的に表現

 ティム・バートン作品を見て世界観を学んだ私は、会場コーディネートでいかに表裏一体を表現するかが大事と思い、二人と話し合って、ポイントとなるデザインをドットとストライプに絞ることに。世界観がブレないよう、3人で施設内を歩きながら イメージを固めました。ゲストが最初に足を踏み入れるラウンジには、二人の世界観にグッと入り込めるように壁一面にドットを貼り付け、ドットが会場まで案内してくれるというストーリーに。会場も、円卓と流しテーブルを組み合わせたセッティングで世界観を表現。さらに新郎新婦のためのメインスぺースも、ゲストと話しやすいように、テーブルを外してソファスタイルを提案しました。
 料理も世界観に合うものをシェフと一緒に考えました。1品1品シェフがデザイン画を描き、二人とイメージを合わせていったのです。装花も通常より早いスケジュールで進め、どこまでも二人らしさを追究しました。

衣装も二人らしさを追究。新婦のドレスはセミオーダーのデザインに理想のものが無かったため、イメージに一番近いドレスにハサミを入れてアレンジ。世界にたった1着のドレスを創り上げました。

結婚式のテーマは人生のテーマになる

 そして当日。私は二人に、披露宴の冒頭で親族への感謝を伝えることを提案しました。実は準備期間中、厳格な親族と意見が行き違い、新郎が「本当にこんな結婚式をして大丈夫だろうか」と迷ったことがあったのです。でもここで諦めたら、二人は 一生自分達らしさを表現できずに過ごすことになる。そう思った私は一番認めてもらいたい両親へ、二人の想いを最初に伝えることを提案しました。一番に呼ばれ驚いた両親も二人の言葉に涙を流し、普段は感情を表に出さないお父様が最後は笑顔に。会場全体が温かな雰囲気に包まれました。式が終わった後には新郎のお母様が「変わった結婚式だったけれど、二人らしくて楽しかった」とおっしゃってくださり、私は胸が一杯になりました。
 そして後日。新郎はお父様に「いつか稼業を継いで欲しいけれど、自分が元気なうちは好きなことをしなさい」と言われたそうです。結婚式が、これからの人生を二人らしく歩いて行くためのキッカケになれたのです。今回の結婚式で、二人らしさを追求して世界観を創り上げたことは単なる手段。自分達の想いや決意を思い切り表現し、ゲストに認めてもらい自分達らしい人生を歩んでいく。結婚式は今後の人生のテーマを探し、見つける機会にもなれるということをこれからも伝え続け、プラ ンナーとしてこれからも、その可能性を広げていきたいと思っています。

二人の世界感に入り込めるように、ゲストが最初に足を踏み入れるラウンジには、沢山のスタッフで壁一面にドットを貼りつけました。

結婚式で、自分達らしさを表現する勇気が持てるように背中を押してあげたい

 「結婚式でこんなことをしたい」という想いがあっても、昔ながらの伝統や周りの目を気にして自分達らしさを出せないという方も多いと思います。そこで私が一歩踏み込んで背中を押してあげると、想像しなかった嬉しい結果が待っていたり、家族との絆が深まったりします。もっと自由に二人らしい結婚式を挙げる新郎新婦が増えるよう、知識やセンスを磨きたいと思っています。

審査員の目

 難易度の高い世界観を表現した、というだけではこの感動は生まれません。鎌倉さんが「なぜその世界観・テーマなのか」を突き詰め、それが二人の今後の人生にとって絶対に必要であると気付き、親やゲストと二人をつなぎ理解と関係の変化を促したからこそ、この結婚式は魂を持ったのです。人生のテーマとなる結婚式のテーマを引き出すこと、それもプランナーの大きな役割なのです。(2014年9月30日更新)

ウエディングを進化させる