リクルートブライダル総研は、結婚に関する調査・研究、未来への提言を通じて、マーケットの拡大と社会課題の解決に取り組みます。

おひさま結婚式

この町で生きていくと決めた
二人ならではのウエディングを、ゼロから創りあげる

山本 恵(やまもと めぐみ)さん
ウエディングプロデュースショップ エクラ(茨城県水戸市)

プランナー歴10年。ウエディングで地域活性を応援する活動も行う。結婚式を創る時、ヒアリングの時間を多くとるようにしている。二人がどうしたいのかがハッキリすれば、途中迷ってもそこに立ち戻ることができるから。

農業を始めるために移住してきた町での、二人らしい結婚式を創るために

 「おひさま結婚式」の舞台は、茨城県と 福島県との県境に近い大子町。新郎新婦は農業を学ぶ専門学校で出会い、農業を 始めるためにこの町へ移住してきました。「この町で生きていくと決めたので、地域の施設を活かして結婚式がしたいんです。山本さんは結婚式を通じて、地域の活性化をなさっていると聞きました。ぜひ力を貸していただけませんか」。嬉しいメールをいただいて、早速二人を訪問、打合せを始めました。
 「地域にあるものを活かしたい」という想いから、二人は挙式をこれから暮らす場所の近くにある神社で行いたいと考えていました。特に新婦は、大好きな、でもなかなか見つけることができない「ヒマラヤ杉の実」を境内で見つけたことから、特別な想いを持ったのです。この小さな神社には、宮司さんが常駐しておらず、三人で宮司さんのご自宅へ。堀ごたつに入りながらいろんなお話を伺いました。とても歴史のある神社と分かり、改めてここで挙式したいと強く思った二人。ところがこちらでは、20年以上挙式の実績が無いと分かりました。そこで神前式の進行、誓詞、動きを全て私の方で確認。特に誓詞は宮司さんに見ていただいた上で、新婦に筆で書いていただきました。

農業を営む二人にとって「おひさま」は大事なもの。そして応援してくれる人達も、「おひさま」のようにかけがえのない存在。そんな「おひさま」に感謝する結婚式にしたいという想いを込めて、テーマを「おひさま結婚式」に。二人らしい結婚式を実現するため、ゼロから創りあげていきました。

地元の小学校で、野菜と笑顔が溢れる披露宴を実現

 披露宴会場は、二人の農園から車で10〜15分程の場所にある、廃校になった小学校の教室が候補に挙がっていました。昭和初期の面影が残る校舎は、テレビやドラマ、CMなどでよく使用されています。町役場の観光課へ相談に行くと、「あそこで披露宴を?」と驚かれましたが、保存会の会長さんへ繋いでいただきました。新郎新婦と三人で会長さんに会いに行くと、全面貸しは難しいけれど教室ならと承諾してくださったのです。
 招待状も席次表も全て手作り。教室の装飾も自分達で行いました。当初は普通に花を飾った方が良いのではと考えていた新郎新婦。でも二人が参加するマルシェを見に行き、ピンと来た私は、二人が 作った野菜を飾ることを提案。かぼちゃ、ピーマン、にんじん、ジャガイモなどを彩りよく飾ると、会場は二人らしさで一杯に。お開き後はゲストにお持ち帰りいただき、とても美味しかった!と好評でした。料理も勿論、二人の野菜を使って。親族顔合わせの場となった料理店のオーナーシェフに依頼し、〝お祝い弁当〞を仕立ててもらったのです。

長く挙式を実施しておらず誓詞が残っていなかった神社であったため、私の方で誓詞について調べ、宮司さんに見て頂いた後に、新婦に筆で清書して頂くことにしました。

これからも結婚式を通じて地域活性に貢献していきたい

 そして当日。秋晴れの空の下、二人の結婚式が始まりました。神前式は厳かに進行。場所を移しての披露宴は、黒板に装飾した「おひさま結婚式」というテーマ通り笑顔がいっぱい。ゲストテーブルには地元特産のリンゴと、1年かけて集めたヒマラヤ杉の実を飾りました。テーブルや椅子は近所の公民館から、大人用の長テーブルや椅子をお借りし運びました。ウエディングケーキも、二人が作った野菜でできた〝クロカンブッシュ〞。スライドショーで二人の農園を紹介、二人らしい温かな披露宴になりました。
 後日、私は新郎新婦から「山本さんに出会えて本当に良かった」という言葉をいただきました。1時間半かかる大子町へ10数回通い、二人の想いを形にすることにこだわったのは、「この町で農業をやっていく」という決意を持って移住してきた若い二人を応援したかったから。これからもウエディングで地域を活性化していきたいという想いが、ますます強くなりました。

結婚式の素晴らしさ、行う意味をたくさんの人に伝えることが私の使命

 結婚式終了後、新郎新婦から「結婚式をしなければ感じなかった、様々な感謝を実感できた」という言葉をいただきました。結婚しない人、結婚式をしない人が増えている中、結婚式の素晴らしさ、行う意味を伝えていくのがこの仕事に携わる者の使命と感じています。結婚式を通じてできる繋がり、思い出、お互いの決心、親の安堵を多くの人に体験していただきたいです。

審査員の目

 「この町で生きていく」という新郎新婦の決意と、地域の活性化を応援してきた山本さんの気持ちがシンクロした時、この結婚式は生まれました。温かさと歴史を感じる空間で、ここで作った野菜を振る舞われた時、ゲストは二人をずっと応援し続けようと思い、この町を好きになるでしょう。幸せな繋がりが人だけでなく地域にまで広がっていく、プランナーが果たす役割の大きさを感じました。(2014年9月30日更新)

ウエディングを進化させる