リクルートブライダル総研は、結婚に関する調査・研究、未来への提言を通じて、マーケットの拡大と社会課題の解決に取り組みます。

挑戦 ~古都奈良だからこそ出来る結婚式~

勇気をもって挑戦することで、プランナーとして成長できる
何事もあきらめない、引き受ける覚悟ができた

荻田 啓子(おぎた けいこ)さん
ザ・ヒルトップテラス奈良(奈良県奈良市)

プランナー歴2年。普段から笑顔を欠かさず、持ち前のチャレンジ精神を持って常にお客様のご要望を引き出すことを心掛けている。新郎新婦、ご家族は自分の大切な友人だと思って幸せのお手伝いをすることが信条。

新人の自分が、若草山での結婚式を任されることに

 二人の結婚式のテーマは「自然と奈良らしい鹿がいっぱいの結婚式」。そして、初めての打合せの日に思いがけないご希望をいただいてしまいました。新婦が雑誌を広げ、「若草山で結婚式がしたいです」と。成約時には、チャペルでの挙式が決定していたのに、です。
 実はこの時、若草山での挙式は雑誌での掲載がスタートしたばかり。実際に挙げたお客様もおらずリハーサルさえもしていない。「まさか自分がこんなに早くご希望をいただくなんて」と不安がよぎりました。
 もともと若草山のある奈良公園は規制のある国定公園で簡単に許可が下りるものではありませんでした。しかし、県庁、奈良の婚礼マーケット、会社、それぞれの「奈良を盛り上げたい、奈良でしか作れない価値を創りたい」という共通の想いが重なり、若草山での挙式プランを創る一大プロジェクトが立ちあがっていたのです。
 挙式の許可が下り、運営は私の会社が手掛けることになりましたが、正直私は今の業務で手がいっぱい。今の自分には無理だとこのプロジェクトには一切関わっていませんでした。そんな時に頂いた新郎新婦の要望。プランナー歴1年半の自分に担当できるのか、不安でいっぱいになってしまったのです。

前日に高熱で倒れられた新婦も回復、素晴らしいお天気にも恵まれ、若草山での結婚式という大きな仕事をやりきりました。私にはできない、という気持ちを初心にかえることで突破。新郎新婦には、プランナーとして成長させていただいた感謝でいっぱいです。

プランナーを目指した原点。その想いで自分を奮い立たせた

 その時にふと思い出しました。大事な大事な、プランナーを目指した原点。それは目の前にいる人が幸せになるために頑張りたい、荻田さんが担当でよかったと言っていただけるプランナーになりたい。ここでやっと、「主体的になって、全力でやろう」と決意が固まりました。プロジェクトチームに入り、ミーティングに参加するだけでなく、若草山へも実際に足を運び、イスを並べ、運転してみて、スタッフにそのすべてを共有。やっと全体的なイメージがつかめたのはリハーサルの時。挙式を2ヵ月後に控えたタイミングで出た問題点は100個以上。しかし、挙式をなんとしても最高の形で実現したいと、率先して問題を整理し、改善していきました。
 ところが、結婚式前日に大きなハプニングが。新婦が高熱で倒れられたのです。「治らなければ室内のチャペルで」と、おっしゃる新郎。二人の気持ちを考えると悲しくて涙があふれます。それと同時に、絶対に若草山を体感していただきたかったという私の悔しい思いも…。そして当日、嬉しい知らせが。「体調がよくなりました! 若草山で結婚式をさせてください!」。当日は最高の秋晴れ、世界遺産の若草山で素晴らしい挙式が行われました。

「荻田さんが担当でよかった」打合せから当日まで新郎新婦と奈良で挙式を行う価値を見出しました。

奈良という「場所」に価値を見つけた、新しい発見の瞬間

 この結婚式を担当するまで、私は式をする場所自体に価値があるとは思っていませんでした。しかし今回のような自然あふれるロケーションで行うことにより、結婚式で感じる感謝や決意、人間愛を強く実感しました。二人が奈良を好きになっていただく姿を見てプランナーとして「場所に価値を見出す」ことの大切さを学びました。  日々の仕事の中で、どうしても業務的になり一歩踏み出せないことがあります。でも、この結婚式を通じて私は変わることができました。恐れず、挑戦する勇気が大事。この気持ちがあるからこそ生涯の思い出になる結婚式を創り上げることができるのです。現在も若草山の挙式を担当しながら、新しい要望にも勇気をもって向き合っています。これからもお客様の幸せをお手伝いできることに感謝し、夢を叶えるプランナーを目指して挑戦を続けていきます。

新米プランナーの成長の種は、数々のハプニングの中に眠っている

 数々のハプニングはプランナーを成長させてくれるもの。私自身、初めてのチャレンジばかりで不安でいっぱいでしたが、二人にとって後悔のない結婚式にしようという決意で乗り切りました。どんな無理だと思うことに直面しても二人のために最善を尽くすことが大切。この気持ちはきっとお客様に伝わるはずです。

審査員の目

 忙しい日々の中で、目をそらすこと、逃げ出したくなることはどんなプランナーにもあります。でもあえて立ち向かおうとするとき、自分の原動力が何なのかが明らかになるのだと思います。荻田さんの場合、それは目の前の二人を幸せにしたいという強い想いでした。自分のモチベーションの原点はどこにあるのか、改めて自問したくなる、勇気をもらえる力強い発表でした。(2015年10月15日更新)