リクルートブライダル総研は、結婚に関する調査・研究、未来への提言を通じて、マーケットの拡大と社会課題の解決に取り組みます。

Re-Tolocca~良縁をつなぐ日~

感じた違和感を見過ごさず、真摯に向き合い、
高いクオリティでカタチにする

二谷 真知子(にたに まちこ)さん
ウェディングプロデュースCALARS(京都府)

プランナー歴10年(フリー7年)1児の母。7年前に夫とともにウェディングプロデュース会社を設立。新郎新婦の希望に合わせた場所で二人らしさを叶える自由なオーダーメイド結婚式をプロデュースしています。

ビジュアルが決まる一方で苦心した「家族との向き合い方」

 ご紹介するのは、以前、私が担当した結婚式で知り合ったプロのフォトグラファーのご夫婦です。2年前に「Tolocca(トロッカ)」というブランドを立ち上げ、リスクを負いながらも自分たちの理想を追い求める二人。私は密かに親近感を抱いていました。

 二人の希望は、結婚式に「写真・カメラ」を取り入れること。感謝の表現と同時に、ゲストと一緒に喜びを体感するツールとして演出することにしました。ビジュアルテーマは、フィルムカメラが普及し始めた明治〜大正の「レトロモダン」。ドレスコードはモダンガール・モダンボーイ。そして一人一台ずつ、マイカメラを持ってのご参加をお願いしました。ビジュアルが決まっていく一方で、内容の組み立てに違和感が残ります。実は二人とも、家族に対しては今ひとつ歩み寄れずにいました。結婚式では、その壁を取り払い絆を強めたいという願いがあったのです。とは言え、ゲストがいる披露宴で本音を伝えるのは難しい。模索した結果、宿泊先のホテルで「結婚式の朝に時間を作る」という案が浮かびました。

全員カメラを構えての集合写真。大判のフィルムカメラでこだわりの撮影に興奮!撮影は新郎が尊敬する先輩カメラマンに依頼。

「カメラ」でゲスト全員が繋がり、その先には私達も

 挙式当日の朝、ホテルで行われた「家族式」では、これまで言い出せなかった家族の本音が溢れます。両家がお互いの地元のお酒を酌み交わす場では、味の感想を言い合いながら涙目の中に笑顔がこぼれました。

 その後の人前式・披露宴は「全員が分け隔てなく繋がる」を実現。ゲストが会場に到着すると目の前にはカメラを持った新郎新婦の姿が。お洒落に決めた姿を撮られることで、カメラが普及し始めた頃のようなワクワク感が体感できます。集合写真は各自マイカメラを構えたポーズを大判フィルムで撮影。貴重な体験にゲストから驚きと微笑みが溢れます。最後は「写真とろっか!」の合図で写真締め。紙吹雪が舞い、その様子をゲストに激写して頂きました。

 起業の大変さを知っている私は、この結婚式に「ゲストが二人をさらに応援するきっかけになって欲しい」という願いを込めました。応援してくれる人がいる事は、自分を信じる力になります。そして結婚式に参加されたご友人からお申込みが! 二人の結婚式で私達も繋がることができたのです。

互いに持ち寄った地元のお酒を相手家族に振舞い、飲み干した「家族式」。味の感想を言い合いながらふっと緊張が解れた瞬間でした。
高砂は大正レトロな応接室をイメージ。ベルベットの赤×ゴールドの配色バランスなどモダンな装飾にこだわりました。高砂周りには新婦のお祖父様の私物の映写機を。

二人らしい結婚式実現のためにヒヤリングで想いを探る

 結婚式のテーマだけでなく、新郎新婦の生い立ち、趣味嗜好はもちろん、考え方や未来への希望、結婚式への期待をお聞きしつつ、お二人の思考や人生観を整理することからスタート。結婚式を挙げる意味を見つめ、数ある選択肢のなかからベストを見つけられるよう細やかなコミュニケーションを心がけています。

審査員の目

 「実はそれぞれの家族に対して本音が言い合えていないのでは?」 という違和感を見逃さなかった二谷さん。結婚式の当日の朝に家族が向き合う「家族式」を実施し、親御様へ想いを伝える機会を作ったことで家族との関係性の変化を生みました。さらに結婚式では写真家の二人らしい時間を創出。ここまでこだわってこそ素敵な時間を創れると改めて感じさせる発表でした。