「二人の想いを叶えたい」試行錯誤の末、
一歩踏み込み新婦の本音を見出した
プランナー歴は今年で10年目。新婦へのメンタルケアの一環として、今年からハーブ・アロマの勉強をスタート。昨年からはブライダルコーディネーター資格習得にも取り組んでいます。夢は司会者になること。
会場決定後に新郎からキャンセル検討の声
5年間のお付き合いを経て結婚を決めた二人。新郎のお母様、新婦のお父様とお兄様は天国にいらっしゃるとのこと。「人に恵まれた人生への感謝を天国に伝えたい」という新郎の想いをお聞きしました。私は「天国に向けてお手紙を読むこと」を二人にご提案。気に入って下さりすぐに会場の決定となりました。しかし翌日、二人が他の会場を検討しているとの連絡が。「僕には遠慮して何も言ってくれないけれど、彼女の表情を見るとわかります。僕は彼女が笑顔になる場所で結婚式がしたいんです」。新婦の不安を思いやる新郎の判断から出た言葉でした。実は「ここで僕が井上さんと話したことは新婦には内緒にして欲しい」と新郎と約束していたのですが、私はその約束をあえて破り「新郎の一番の望みは新婦の喜ぶ顔。だから本音を言ってくださいね」と新婦にお伝えすることにしたのです。「自分がイメージする森の雰囲気に出来るのか不安」「ここで挙げたい新郎を想うと、言えなかった」と、新婦はご自分の言葉で話して下さいました。
- 高砂位置を逆転することで動線等にリスクが生じるとスタッフは猛反対。全ての問題を洗い出し、周囲の理解を得ながら、結婚式ではスタッフの手による予想以上の森のコーディネートを完成させることができました。
二人の望みを両方叶えたいだからこそあえて伝えたこと
新婦の想いを叶えるにはどうすればいいか?私は高砂の位置を逆転することで、森のコーディネートを実現することにしました。「木目のブラインドを背景にすれば森のコーディネートを創れる!」。二人に森のコーディネートのデッサンをお見せした翌日「井上さんと結婚式を創りたい」と新婦からの言葉を頂くことができました。「人に恵まれた人生への感謝」という想いを踏まえ、人との結びつき、時間との結びつきを“誓い”という紐で“結ぶ(ムスビ)”をテーマとしてご提案。時のムスビは二人が持ち寄った砂で砂時計を作り新たな時を刻みます。人前式ではご両親から二人へ、二人からご両親へ、二人からゲストへ3つの誓いを述べました。
新郎との約束を破ることでプランナーとしての信頼を失うかもしれない。でも、私は二人の結びつきをより強いものにするために伝える必要があると確信したのです。式当日の朝、新婦からの手紙に胸が一杯になりました。「今日1日、私達3人で考え抜いた時間を全員で楽しみましょう」。
- 新郎新婦が選んだ会場は、バリやモルディブの水上コテージをイメージした空間。天国へのメッセージは、青空に向けたバルーンと共に感謝の気持ちを伝えました。その後はゲストとの集合写真も。
- オープンテラスから手を振る新郎新婦。
肯定感を高める言葉選びで、幸せを届けるプランナーに
引き出しの多いプランナーになるため、普段から情報収集は欠かしません。プランニングをご提案するときは、ヒヤリングで得た情報を元に、インターネットや前例に頼る前に、まず自分の頭で考えることを優先するようにしています。すべてのお客様に“私は私でよかった”と感じていただけるよう、肯定力を持った言葉を選び、お話するようにしています。
審査員の目
新郎と新婦で叶えたいことが違っていた時、プランナーはどのように対峙したらよいのでしょうか。今回、井上さんはリスクを恐れず踏み込むことで、新郎と新婦それぞれの本音を見出し、それぞれの想いを実現していきます。自社会場の制約も前例も乗り越えていく。プランナーとしてだけでなく、自身の人間としてのスタンスも大いに感じられる発表となりました。