笑いで本音をほどき、涙で人生の祝福へ。
「おあとがよろしい」本気の結婚式

楽しむことを原動力に結婚式を創造しています。
いそがしい中でもちょっとした遊び心を忍ばせながら
パッションを大切にプランナーをしています。
育休復帰後の迷いの中で出会った
笑いを愛するふたりの本音
ふと気になった、違和感。
育休から復帰したばかりの頃、私はプランナーとしての在り方に迷いを抱えていました。以前のように仕事にすべてを注ぎ切れていない感覚があり、「本気で向き合えていないのではないか」「本気でいられない自分に価値はあるのだろうか」と、自問していた時期でした。そんな中で出会ったのが、お笑いをこよなく愛するふたりです。新郎様は、親御様の反対を受けながらも、かつて本気で芸人を目指した経験を持つ方。新婦様もまた、笑いに何度も励まされてきた方でした。ふたりが望んだのは、「楽しく、笑い泣きできる、幸せな結婚式」。打ち合わせは明るく、テンポよく進みました。
しかしその一方で、私はある違和感を覚えていました。提案に対してすぐに「いいですね」と受け入れてくださるものの、ふたり自身の本音が見えにくい。ゲストを楽しませたいという思いの奥には、自分たちも主役として思いきり楽しみ、祝福されたいという願いがあるはずでした。けれどその願いは、笑いという明るさの中にそっと隠されているように感じたのです。
笑いに隠れた本音をすくい上げ、
まだ言葉になっていない願いも
笑いと涙の祝福に導く
その本音に近づくきっかけとなったのが、三人ともが大好きな一組の漫才師でした。新郎様はその漫才師に憧れて夢を追い、新婦様はその笑いに支えられ、私もまた仕事への向き合い方を学んでいました。共通する好きなものを通して会話を重ねるうちに、ふたりにとって笑いは単なる演出ではなく、人生を支えてきた価値観そのものなのだと気づきました。苦しい時に心を守るもの。大切な人を楽しませるもの。言葉にしにくい感情を届けるもの。だからこそ私は、「笑い泣き」を、面白さと感動が同時にあふれる状態として再定義しました。
提案したコンセプトは「GERA‼―笑いこそ人生―」。式当日だけを盛り上げるためではなく、この先の人生でも、笑いを糧に立ち上がれるようにという願いを込めました。準備期間で重視したのは、安心して本音を出せる関係づくりです。あえて少し大きく笑いを交えた提案を重ねながら、「ふたりの結婚式を大切に思っている」「私自身も楽しみにしている」と言葉と姿勢で伝え続けました。その積み重ねによって、「いいですね」という受け身の返答は、少しずつ「こうしたい」という主体的な言葉へ変わっていきました。プランナーの価値は、要望を正確に形にすることだけではありません。まだ言葉になっていない願いを見つけ、その人らしい意味へと翻訳し、体験として設計することにあります。
新郎新婦のふたりはコンビ
私も含めた最強のトリオとなって
笑いと涙で結ぶ絆が生み出す一日
当日は、笑いが祝福へと変わる場面がいくつも生まれました。挙式の冒頭では、新郎様には内緒で、親御様による生い立ちフリップ芸を実施しました。芸人を目指した過去を心配し、時に反対してきた親御様だからこそ、息子の人生を笑いで肯定できる。そう考え、想いを丁寧に伝えたところ、涙ながらに引き受けてくださいました。親御様が涙をこらえてフリップで語り、新郎様が優しくツッコむ姿に、会場には笑いと涙が同時に広がりました。それは、新郎様が大切にしてきた笑いが、家族の祝福として受け止められた瞬間でした。
挙式の結びには、新婦様のお父様が、幼い頃の「のど自慢ごっこ」の記憶を込めて歌を届けました。用意した鐘の音が響いた時、家族の歴史と愛情が、ユーモアを通して会場全体に伝わりました。友人余興も、内輪だけの盛り上がりにせず、照明やBGMまで一緒に設計し、すべてのゲストが熱量を共有できる時間へと磨き上げました。そして退場の瞬間、大好きな歌に合わせて会場中が大合唱に包まれました。熱唱する人、笑う人、涙する人。それぞれの感情が重なり、新郎様の挫折も、ふたりが言葉にできなかった本音も、すべてが祝福へと変わっていきました。
式の一ヶ月前、新婦様へのサプライズを新郎様に提案した時、返ってきたのは「柘植さんと一緒に何かをすることが、一番喜ぶと思います」という言葉でした。私はふたりをコンビだと思っていました。しかしふたりにとって、私はいつの間にかトリオの一員になっていたのです。そこで最後に、新郎様と私は本気の漫才を披露しました。この結婚式は、ふたりの本音を引き出しただけでなく、私自身の迷いにもひとつの答えをくれました。本気で楽しむ姿は、プロとしての覚悟そのものになる。そう感じたのです。結婚式をつくるとは、進行を整え、演出を配置することにとどまりません。その人が歩んできた人生を見つめ、奥にある想いをすくい上げ、祝福という形で立ち上げること。そこに、ウェディングプランナーという仕事の本質的な価値があるのだと思います。




評価のポイント
育休復帰後の迷いを出発点に、ふたりの「笑い」の奥にある本音を丁寧に見立て、結婚式全体のコンセプトへ昇華している点が高く評価できます。親御様、友人、チームを巻き込みながら、笑いを単なる演出で終わらせず、家族の承認や人生の祝福へと変換した設計力が光っています。さらに、自身も当事者として本気で楽しみ、その姿を通してプランナーの価値と仕事の可能性を体現した発表でした。