リクルートブライダル総研は、結婚に関する調査・研究、未来への提言を通じて、マーケットの拡大と社会課題の解決に取り組みます。

12STORE ―私はふたりの人生の設計士になった―

1日を彩るだけでは終わらない。ふたりの関係性まで育て、
結婚式の可能性を広げていくプランナーの価値

佐藤彩香さん
佐藤 彩香(さとう あやか)さん
(東京都/ampersand By LAGUNAVEIL ATLIER)

プランナー道13年目。「ふたりらしい結婚式を創ること」を一番にこだわっています!推し活やドラマ・映画鑑賞などエンタメが大好物。それらが私の人生を彩りお客様へのご提案にも還元出来ているように思います!!!

結婚式に向き合う温度差
本音を飲み込む新婦を前に
私は得意を手放した

結婚式を、新郎と一緒に創ることを楽しみにしていた新婦。「どっちでもいい」と今ひとつ結婚式に積極的になれない様子の新郎。新婦は現役のウェディングプランナーでしたが、自分の意見より調和を大切にされるタイプの方で、そんな新郎の様子に、自分の本音を飲み込み始めるのが伝わりました。

このままでは、この結婚式は、新郎はわからないまま参加するだけの日になってしまう。そして新婦は本当にやりたいことを諦めてしまう。そんな一日には絶対にしたくない。ふたりらしいテーマを私が考え、世界観を創り、特別な一日を創ることは得意だけれど、このふたりのためにもっと、できることがあるのではないか。

私は素敵な提案をするプランナーだけではなく、ぶつかっても一緒に考え、対話し、選び取っていける関係で「対話をデザインする設計士」として、このふたりに向き合おうと決めました。

新郎の「わからない」をほどき
ふたりでたどり着いた答えを
特別な体験へ変えた

ふたりで結婚式を創った、そう言える状態を創るために、まずは少しシャイな新郎の本音を率直に尋ねます。

「結婚式に前向きになれない理由は何ですか?」

返ってきた言葉は、「結婚式がわからない」から。新郎はやる気がないわけでなく、体験したことがないから、自分ごととして想像ができなかったそうです。それを知った私は、打合せの仕方を変えました。新郎新婦それぞれと時間をとり、本音を引き出したのちに、私を交えて3人で打ち合わせを行う。さらに普段なら、そこで結論を出して進めたものを、一度持ち帰ってもらい、改めてふたりで話してもらうことにこだわりました。遠回りな進め方に、これでいいのか葛藤しましたが、ふたりでたどり着いた答えを大事にしてほしい一心で、勇気をもって自分の得意を手放し、ふたりを信じて待ちました。

そんなある時、おふたりの共通言語となるテーマを決める際

数々のワードから自ら選び取り、なんと新郎から、素敵な発案がありました。結婚式の日付の「12」と「お店」という意味を合わせて「12STORE(トゥエルブストア)」というテーマで会場を創ったらどうか。買い物が好きなふたりらしいテーマでした。まさに新郎が、結婚式に参加する側から創る側へと変わった瞬間に、新婦も驚きつつも嬉しそうでした。

新郎にとっての結婚式が「自分ごと」となった今、そのアイデアを形にするのは、私の得意とするところです。ふたりがたどり着いたテーマ「12STORE」をもっと特別な空間にしてみせると意気込みました。

会場はリボンカットセレモニーで「開店」。テーマにちなんだ12色のクロスや、ポイントカード、コンビニエンスストアのホットスナックのような仕掛けなど遊び心を満載し、購買体験を意識した空間づくり、そしてプログラム。家族の時間は「原点のSTORE」、プロフィール紹介は1ふたりからの他己紹介形式で「人生の仕入れのSTORE」、そしてふたりの未来につながる「これからのSTORE」をそれぞれ設計しました。

「原点のSTORE」でのファミリーミートで、内緒で用意いただいたお母様のお手紙に、「絶対に泣かない」といった新郎は、涙をこぼしました。「結婚式がわからない」と言っていた新郎にとって、「自分ごと」となった結婚式準備を超えて、「意味のあるもの」となった体験を設計できた手ごたえがありました。

さらに、お互いへの理解と歩み寄る時間を、この先も大切にしてほしいと思い、私が提案したのは、新郎による、新婦の職場訪問でした。新婦の仕事も、「分からないもの」から「自分ごと」と捉えることができるようにとの思いからです。新婦にも、理解される喜びと、分かり合うことを諦めなくていいということを知ってもらうことができました。

「ありがとう」のその先に
ふたりの人生を支える
結婚式の価値が広がり続ける

これまでたくさんいただいた、「ありがとう」は、思い出に残る結婚式を創ったことに対する感謝でした。結婚式には、人と人の関係、人生の選択、未来を変える力があります。プランナーとして私は、結婚式の一日だけでなく、これから歩むふたりが支え合って未来を選び取っていくための、人生の土台を設計していきたいと思います。

プランナーが新郎新婦のためにあと一歩寄り添う。あと一つ問いかける。あと一回一緒に考える。そのあと一つの積み重ねが結婚式の価値を何千何万と広げていくことが、結婚式の未来すら変える力になると信じています。

評価のポイント

新郎の「興味がない」の奥にある「わからない」という本音を捉え、自身の得意を手放して向き合った姿勢が印象的でした。ふたりの会話や選択を待ち、日常に置き換える工夫で主体性を引き出した点に、プランナーとしての柔軟さと誠実さが表れています。「ありがとう」の先を見据え、結婚式が関係性や未来に与える力まで示した点が、結婚式の価値の拡張につながると感じ、グランプリとして選出しました。