リクルートブライダル総研は、結婚に関する調査・研究、未来への提言を通じて、マーケットの拡大と社会課題の解決に取り組みます。

ずっと一緒に(^^) ~3人で歩む結婚式への道~

ママプランナーだからこその、視点と提案
パパママ婚の本当の幸せな姿の創り方

市川  加奈子(いちかわ かなこ)さん
浦安ブライトンホテル東京ベイ(千葉県浦安市)

プランナー歴7年。結婚式はプランナーに言われて創るものではなく、新郎新婦自身が自分たちの意思で創るもの。プランナーはその道しるべのような存在。一緒に進む道中が思い出深いものになることを常に願っている。

ママプランナーだからこその、視点と提案
パパママ婚の本当の幸せな姿の創り方

 お会いする前からの二人の要望に、「打合せも、結婚式当日も、ベビーシッターを」ということがありました。二人は近くに頼れる身内がいない状況でしたが、直接お会いして感じたのは「もしかしたら新婦は少し育児に疲れているのかな?」ということ。それを確認したわけではありませんが、新婦の様子に違和感を感じ、後で結婚式を思い返した時に「お子様がずっと蚊帳の外だった」と後悔されないかな、結婚式の後も幸せな家族の道を歩むためにお子様も一緒のほうがいいのでは、と思いました。ひとまず安心してもらおうと、ベビーシッターの準備を整え、私自身も「ママ」であることを伝えて初回は終了しました。ただ、私の中では密かに、家族3人の喜びを感じる結婚式をゴールに決め、当日までの道のりで二人にもそれを自然と感じてもらえるようにプランニングをしていきました。
 まず、チャイルドシートやベビーカーは嫌がらないか、お昼寝のタイミングなどを確認。また、おむつ交換や授乳に便利なよう個室も用意。スムーズに進むように、パートナースタッフにはお子様の動向に反応しすぎないようにお願いし、私自身もいつでもお散歩に行けるようにしました。このような工夫で、新婦も安心されたのか少しずつお子様の家での様子を話してくださったり、抱っこで打合せしたりと、表情やしぐさが自然に変化していったのです。

最初はお子様と一緒の結婚式に後ろ向きだった二人。その心を徐々に開くことで、最後にはお子様との3ショットも実現しました。この3人一緒の幸せな姿を見ることができ、とても嬉しく思いました。

だんだんとつながる家族の絆。新郎新婦に変化の兆しが見えてきた

 私は、家族の絆を深めるために、二人にも是非お子様と一緒の演出をしていただきたいと考えていました。「お子様がいる喜びが感じられて負担も少ない、ゲストも楽しめる演出…。『つみきつかみ』はどうだろう?」。ゲスト名が入った積木をお子様に掴んでもらって、プレゼント当選者を決めるという演出です。ヒントになったのは私自身の育児日記。私の娘が二人のお子様と同じ月齢だった頃に、「何でも上手につかめるようになったね」と書いていたことから考えついたものでした。
 もうひとつが、新婦とお子様、お揃いの花冠です。お揃いの物を身に着けることで自然とママと娘の絆を感じられると、あえて女同士だけの演出にしました。このほかにも「新郎新婦二人きりの時は、とても仲むつまじい」と聞き、新郎から新婦へサプライズの時間も設け、新婦が、母としてだけでなく、女性としても輝くシーンを作りました。
 このような提案を通し、家族の絆を深められたのでは…と感じ始めていた頃、二人に変化が。両親の元へ長めの里帰りをしたり、お姉様と会う機会を作ったりと、当日ベビーシッターを頼まなくて済む体制にしていただけたのです。私も、お子様専用のスケジュール表を作成し、皆がスムーズに対処できるようにしました。そして最大の嬉しいことが! 挙式リハーサル前日、初めて二人からのお子様演出の希望が聞けたのです。「子供と一緒にウエディングキスがしたい。」と。これまでの打合せは間違っていなかった、そう実感できた瞬間でした。

積木は定番のおもちゃ。結婚式後も使う機会があるので用意しやすく、みんなで楽しめるいいとこづくしの演出です。

プランナーの「こうしたい」を自然に伝え、ゴールに導くことが大切

 今回私が目指した、『結婚式を通して自然に家族のつながりを感じていただく』というテーマは、あえて二人には話していませんでした。私に言われて気づくのではなく、自発的に見出すことが、二人の幸せと自信に繋がると信じていたからです。プランナーとして、直接アドバイスするだけでなく、二人に共感し、味方になることで信頼を得て、自然と同じゴールへ導いていくことも、大切なのだと思います。

母としての経験が、長く仕事を続けていくためのカギになる

 結婚・子育てをはじめとした日々の経験を常に活かし、その経験から新郎新婦の状況や心情を理解しようと心がけています。お客様により背景は様々なので自身の経験だけを押し付けないように、例えばパパママ婚でお子様演出を組み込む際には、お子様の月齢や個性に合わせた内容をその都度考え提案していくことが大切だと考えています。

審査員の目

 市川さんは新郎新婦の表情を良く見、敏感に感情を捉え、ご自身の経験と想像力をフルに動員して出来る限りの準備をしながらも、決してそれを表には見せません。でもきっと二人には、静かに導かれる大きな安心感があったことでしょう。その後の人生を変えるような結婚式の背景には、プランナーの「こうしたい」という意思と人間力とが必要なのだと感じさせられました。(2015年10月15日更新)