リクルートブライダル総研は、結婚に関する調査・研究、未来への提言を通じて、マーケットの拡大と社会課題の解決に取り組みます。

『One Family』 ~結婚式を挙げる意味~

違和感を感じた時、立ち止まるには勇気がいる。
それでも向き合うことが結婚式の未来をつくると、
教えてくれた結婚式。

中村 玲佳(なかむら れいか)さん
ベルアンジュール(愛知県)

入社して5年、現在は店舗のチーフプランナーを務めています。
趣味はミュージカル鑑賞です。歌やダンスももちろん素敵ですが、音楽や照明をフルに活用した演出効果にわくわくする時間が大好きです。

順調なはずだったプランニングにストップをかけた新婦の言葉
頭を離れず、立ち止まり見直す決断

 それぞれお子様連れで再婚、という2人。新たに生まれた子も含めた5人との打ち合わせは、いつも賑やかでした。新郎の希望は「普通でいい」。新婦は2度目の式なので前回と被らないよう留意し、お子様の名前から取った「海」と婚礼時期の「夏」を絡め、サマーウエディングを提案しました。新婦の初回とはイメージを一変し、季節感やワクワク感にこだわったテーマウエディング。しかし準備も順調な式2カ月前、新婦から「素敵だけど、挙式して入場、ケーキ入刀って流れだけ見ると前と同じかも」と言われてしまったのです。その場は流したものの、打ち合わせ後もその言葉が頭を離れませんでした。

 再婚同士で踏み込みづらく、新郎の素っ気なさなど、違和感から無意識に目を背けていたこれまで。安易な見つけやすいワードだけを、もっているアイディアで繋いだそれらしい結婚式を提案していた私に必要だったのは、「立ち止まること」でした。なぜ新郎は普通にこだわるのか。なぜ新婦は同じ流れが気になるのか。結婚式を挙げる意味とは何か。そこから一緒に考えようと思い、受話器を手に取りました。

「意味」を見つめ直すことで一つひとつの課題をクリアに
披露宴後の家族宣言は大成功!

 新婦のいない場で話を聞くことにより、式への列席経験がないので口を出せず、また奇抜なことをして恥ずかしい思いをしたくないという新郎の想いを知りました。彼が当日の自分の姿だけを思い浮かべていると気づき、「新婦や子どもたち、大切な友人に囲まれ、新しい家族の門出を認めてもらう一日にしませんか」と伝えると、「それ、やりたいです」と答えてくれました。

 ゲストが新郎または新婦をよく知らず、子どもたちも緊張モードの最初の段階に挙式をすることに意味はない、と考える新婦には、披露宴後の挙式を提案。前例がないため社内からはマイナス意見も次々挙がりましたが、「私がやりたいのではなく2人がやりたいことを叶えたい」という想いを時間をかけて話した結果、多くのスタッフが温かくサポートしてくれました。

 当日。ワクワクの始まりは駐車場から!誰もが楽しめるスタンプラリーで、大人×子ども、ゲスト×スタッフ、友人×親族の壁を取り払うことに成功しました。披露宴ではキッズスペースを会場中央に設置して、みんなで子どもたちを見守る温かい雰囲気に。お料理はガーデンでのBBQ。子どもはスタッフと遊び、新婦・親族は食事を、新郎は友人とのお酒を。同じ空間でそれぞれが自由に楽しむ「アットホーム」を、最高の形で実現できました。

 エンドロールに浮かんだのは「大切な皆さん、私たち家族の証人になってくれますか?」というもの。挙式会場に到着するゲストを待っていたのは、家族5人。「家族宣言」で一人ずつ元気に決意表明すると大きな拍手が湧き、頑張れよー!と飛ぶ声援、子どもたちの宣言に涙する2人。披露宴後の挙式は大成功でした。新婦からは「今日あたらめて、家族が一つになれた気がします」と嬉しい言葉もいただきました。

子どもと大人が一緒に楽しめる「なぞなぞスタンプラリー」を開催するなど、スタッフ・ゲスト・子供の壁をなくすことで、全員がリラックスして楽しめる空気が生まれました。

知っている答えに当てはめず様々な問題に向き合う大切さ
今後も結婚式を変えていきたい

 結婚式を挙げる多くのカップルが「意味」を通り越して目先のアイテムにこだわり、多くのプランナーもまた、その希望を広げるに留まりがちですが、プランナーとは、式を挙げる意味から一緒に考えて理解し、最高のかたちにする存在。時には立ち止まる勇気も必要です。田舎の小さな式場から来た私ですが、本気で日本の結婚式を変えたいと思っています。みんなで結婚式という素敵な文化を守り、盛り上げていきましょう。

挙式後、新婦からは『結婚式ってひとつひとつ違うんですね。今日あらためて家族が一つになれた気がします』という、忘れられない素敵な言葉をいただきました。

評価のポイント

 「似たような流れに思える」これは残念ながら多くのお客様の本音でしょう。それを流すのか、勇気を持って一度立ち止まるのか、そこが「ブライダルの未来」の分かれ道。奇を衒うことがゴールではなく、「なぜお客様が結婚式をするのか」にまっすぐ向き合うこと。出た答えを最高の形で実現するために全員が心を配ること。「現場にいる私達にとって、『いい結婚式をつくること』は『実施率をあげること』そのもの」という中村さんの言葉が胸に響きました。