NGずくめから生まれた「新しいパーティ」の形
2人をより知ることで、未来を変える結婚式ができる
2006年入社後チーフプランナーを経て現在エグゼクティブプランナーと副支配人を兼任。ブラス全体のプランニングスキル向上を目指す活動も行っています。「枠は出ずに期待を超える結婚式」を日々追及しています。
NGだらけでも挙げる結婚式には新郎と息子への新婦の強い想いが
とにかくNGが多かった再婚同士の2人。「入籍後2年も経っていて今更なので、『結婚式』という言葉は使わずゲストファーストで」が、2人の希望でした。ほかにも「指輪交換、誓いの言葉、父とのバージンロード、立会人の選出、新郎新婦の入場、ケーキカット、中座は不要」と、NGのオンパレード。あまりの制限の多さに、2人がなぜ結婚式を上げるのか疑問でした。
私が「このまま希望通りに進めていいのだろうか」と気がかりだったのには、理由がありました。新婦はシングルマザーとして8歳のお子様を育てられていたのですが、新郎とお子様に微妙な距離を感じたからです。ある時、新婦が「この結婚式を通して新郎に『父・家族になる覚悟』を持ってほしい」と強く想っていると知りました。このまま進めれば表面上は満足いくものになるかもしれないけれど、新郎にその覚悟を持ってもらうのは難しい。新婦の想いに応え、結婚式を「家族3人の明るい未来へのリスタート」にするべく、私は「NGをOKにするための仕掛け」を考えることにしました。
工夫と提案でNGをクリア
新しいパーティの形を見事に実現!
まずは挙式。誓いと承認の儀式を行うことで、新郎に父・家族になる覚悟を体感してもらえるはずと考えた私は、通常の進行に変化を加えて様々な提案をしました。ネイルサロン経営の新婦に「女性の指が最高に輝く瞬間を、自身で体験すべき」と説き、指輪の交換を実現。また「冬来たりなば春遠からじ」という言葉を伝え、「それぞれの離婚=冬の時代を支えてくれた皆様に、家族3人の時間=春の訪れを感謝とともに伝えてはどうか」と提案し、「誓いの言葉」も承諾してもらいました。
お子様を立会人にする「誓約式」も提案。お子様の登場は、新郎に新たな覚悟を感じてもらう最大のチャンスです。お父さんお母さんの好きなところや、前述の「冬」「春」というキーワードから季節の思い出などをお子様にヒヤリングし、当日語る文章を2人に内緒で一緒に作りました。
披露宴ではゲストファーストを実現すべく、新郎新婦が入場するのではなく、入場するゲストを2人がお出迎え。中座はお手洗いの機会に3人揃って退出し、親子で歩む時間を味わってもらいました。再入場はせず、テラスにビュッフェを用意してカーテンをオープン。披露宴後半は2人がゲストを迎え、前半とは違う雰囲気のパーティを楽しんでいただきました。
エンドロールの場面では、胸ポケットにマイクを忍ばせて録音した、お子様の誓約式の言葉を流して感動的な幕引きに。「結婚式」という言葉を「感謝を伝える日」に言い換え、こうして入場も中座もない「新しいパーティ」の形が完成しました。
- 立会人であるお子様が2人の誓いを見届け、サインをした誓約式。お子様が何を語りかけるかが重要だと思ったのでスピーチ文は推敲を繰り返しましたが、結果、その言葉が新郎の心を強く打ちました。
人に変化をもたらし未来を変える結婚式を、よりよく残したい
後日、何度もエンドロールを見返しているという新郎から、「子どもの言葉が沁みた」と言っていただきました。親子でキャンプの約束もしたそう。新郎の、父親としての気持ちに変化が生まれたのです。
また私にも変化が。それまでヒヤリングは自分がするべきと思っていましたが、今回はメイクさんを頼りました。できる限りの方法で2人を知りスタッフと共有すれば、残るものの形と密度が変わると学びました。プランナーとして、結婚式でしか生まれない瞬間をどう刻み、残すかによって、未来は変えられます。様々な境遇の2人と向き合い、その瞬間を最高の形する。それを見た人たちが結婚式の価値に共感して広めることで、この業界の未来は明るくなると信じています。
- 新しい家族となる3人の、よりよい未来を見据えたテーマ「RESTART ~冬来たりなば春遠からじ~」。そこには、明るい状況ばかりではない業界全体への想いも込もっています。
評価のポイント
価値観や人生の選択が多様化する中で、結婚式に対する想いや期待、温度感も人それぞれ。しかしただ希望を聞くだけでは「結婚式をする意味」を失ってしまうことも。今回鈴木さんは、希望を否定するでもなく、かといって無条件で受け入れるでもなく、ふたりの視点に立った言葉や提案でNG をOK に変え、家族の未来を変える結婚式を実現。その方法が今の時代、まさに求められているものだと高く評価されました。