リクルートブライダル総研は、結婚に関する調査・研究、未来への提言を通じて、マーケットの拡大と社会課題の解決に取り組みます。

結婚式の本質、ウエディングの未来。

「2人にとって最高のものを」クリエイターの力と
想いを束ねて輝かせ、見えてきた結婚式の本質と未来

佐伯 恵里(さえき えり)さん
REVE&Co. & Free Style Wedding UNREVE(群馬県)

16年間の式場勤務の後、フリーに。GWAは2014年・16年に続き3度目のファイナリスト。ニュートラルな視点で二人に寄り添い、本質的でパーソナルな1日を作ることを心がけている。ビールと読書が大好き。

世界一のフォトウエディングを最高のスタッフとプロデュース

 最初に新郎のお母様から伺ったのは、新婦が妊娠していることと、きちんとお嫁さんを迎えたいという温かな想いでした。一方2人は、「式を挙げたほうがいいのはわかるけど恥ずかしいから写真だけで」という考え。私は結婚式の本質や親御様の気持ちなどを話し、「2人にとって本当に省いていいものか、もう一度だけ考えてほしい」と伝えました。後悔しないためにもよく話し合って結論を出してほしかったからです。
 一週間後の返答は、「やはり写真だけ」でした。2人が出した答えなら応援するのみ! 私は「世界一のフォトウエディング」のためにヒアリングを始めました。
 その中で、美容師さんはこの人を、というリクエストがありました。サロン専門の美容師さんとヘアメイクアーティストは、似て非なるもの。未経験の現場でも安心して仕事をしてもらえるよう、直接会って条件を整えました。ドレスを着せる練習にも一緒行きました。ドレスは、妊婦である花嫁の撮影であることを踏まえて、フィッティング技術が高い目利きのスタイリストさんに依頼。フォトグラファーは、写真撮影に対する考えが2人にフィットする人を、県外から呼びました。日頃からクリエイターの希望をストックし、合うお客様を引き合わせるのも私のプランニングの一つです。

急遽行った手づくり結婚式は自然な写真を撮るためのアイディア

 準備を進めるうち、親御様の想いを反映しつつ2人のイメージに合う写真を撮るには何かが足りない、という想いが膨らみました。「ドレス姿の2人を自然に美しく残すには、セレモニーの動きが最適」と考え、私はやはり結婚式を計画することにしました。
 いよいよ英国庭園で撮影開始。私はシンプルなシナリオを用意して暗記。スタッフ全員に計画を伝え、ロケハンでフォトグラファーとふさわしい撮影場所を選びました。
 撮影後半「これからご家族だけの結婚式を挙げませんか」と切り出すと、全員が頷いてくれました。小さな結婚式の始まりです。私が2人の想いを汲んでクリエイターに伝え、作り手全員で2人を深く理解するという作業。今この瞬間は結婚式ですが、本来の目的は「自然な結婚写真を残すこと」です。それが最大のミッションだとわかり合えているからこその連携が生まれました。

突然の提案に、その場ですぐ快諾してくれた2 人とご家族。新婦のお母様に「お嬢様が花嫁になるためのお支度を整えてさしあげてください」とお願いし、ヴェールを下ろしていただきました。

関わるクリエイター一人ひとりの想いが、輝かしい結婚式をつくる

 スタイリストの真心、フォトグラファーの技術、フローリストのセンス、美容師の覚悟。そのすべての積み重ねが美しい結晶となり、素敵なセレブレーションになりました。関わるプロフェッショナルの「2人にとって最高のものを残したい」という強い想いが、未来に深く刻まれる瞬間をつくり出す。結婚式もフォトウエディングも、その本質は同じだと思います。こうした、関わる一人ひとりの想いが、結婚式やフォトウエディングを作っています。その価値をどれだけのプランナーがお客様に伝えられているのでしょうか。
 フリーランスになってから「結婚式なんて高い、意味がない」とネガティブな言葉をぶつけられる機会があり、私たちや2人の想いが伝わっていないことが多いと痛感します。でも本質を伝えられれば、作り手の仕事一つひとつの意味や価値を理解してもらえるはず。結婚式をつくるということは、2人やご家族、立ち会うすべての人々の人生をつくるということ。そして仕事にかける仲間の誇りをも、輝かせるということです。ウエディングプランナーによるこの営みを守り、磨き続けていくことで、私たちの未来は開けると確信しています。

新婦のリクエストでヘアメイクを担当した美容師さんと、ツーショット。美容師さんにとっては初めての現場でしたが、彼女たちの絆がより深まる時間になっていたら、嬉しいです。

評価のポイント

 結婚式をしてほしい親の気持ち、ただ写真で自然な表情を残したい新婦の気持ち、ふたりにとって最高の仕事がしたいクリエイターの気持ち。すべてを丁寧に掬い取り、繊細に紡ぎ合わせた佐伯さんの意思と行動力が、唯一無二の時間と記憶を生み出しました。新郎新婦の未来への想いと、ブライダルに関わる人々への深い尊敬と愛情があってこそ、我々はこの仕事の価値を輝かせることができる。そう確信させてくれました。