「宴会案件」とされた願いは、「ふたりらしい結婚式」の形だった。
固定概念を越えチームで叶えたライブウェディングの可能性

“結婚式みたいなパーティー”という施設のコンセプトをもとに
こんな結婚式だったらやってみたい、と思ってもらえる1日を創ることを大切にしています。
「宴会案件」ではなく
ふたりの希望する「結婚式」として。
願いを受け止めて実現したい
結婚式がしたい。そう願っているのに、表面的な条件だけで「宴会案件になります」「1.5次会案件になります」と、結婚式の外側に置かれてしまうことがあります。でも、本当にそれで良いのでしょうか。ふたりがなぜこの一日を必要としたのかを知る前に、「結婚式とはこうあるもの」という式場側の固定概念で、思いに線を引いてはいないだろうか。この出会いは、私自身の固定概念を取っ払い、ふたりの思いから結婚式を作るきっかけとなりました。
ふたりは式場見学4件目。他会場で「宴会としてならできます」と言われ続けていました。希望は、予算を抑えたオールビュッフェのカジュアルなパーティー。条件だけ見れば宴会案件に見えたかもしれません。けれどふたりは、「私たちがやりたいのは結婚式なんです」とはっきり言いました。私は提案したい気持ちをこらえ、まずはふたりにとっての結婚式の意味を知ることから始めました。
できない理由を超えて、
チームで叶えたライブウェディング
新郎新婦はともにライブが大好き。新婦はフィリピンにルーツがあり、もともとは結婚式をせず、新婚旅行や新居にお金をかけようと考えていたそうです。けれど参列を重ねる中で、結婚式にはその日だからこそ生まれる価値があると気づきました。「私たちの人生には結婚式が必要だ」。そう話してくれた瞬間、私は確信しました。これは絶対に宴会案件ではない。私はふたりのウェディングプランナーとして、この願いを結婚式として叶えると覚悟を決めました。
ふたりの要望は、挙式、料理、ライブパーティーの3つ。私はそれらをすぐに演出や進行へ置き換えず、何度も「なぜ」を重ねながら、まだ言葉になっていない願いを掘り下げました。通常4回の打ち合わせを9回に増やし、一度に全てを決めるのではなく、一つ一つの希望の意味を考える時間を大切にしました。
まずは挙式です。望んだのは厳粛な教会式でしたが、問いを重ねるうちに、本当に届けたかったのは大切な人への感謝だとわかりました。教会式の神聖さを守りながら思いも届けるため、私は牧師の先生やチームに、ふたりがなぜこの挙式を望むのかを伝え続けました。
当日はオープンレターセレモニーとプロフィール映像から始め、ゲストがふたりの歩みや愛されてきた時間を知る場にしました。その後は聖書朗読、誓い、指輪交換という教会式の意味を残し、結びに親御様への手紙を届けました。厳粛な空気の中だからこそ、ふたりの声がまっすぐ届く儀式になりました。
次は料理です。会場はイタリアンレストランで、フィリピン料理の提供実績はありませんでした。けれどふたりの願いは、新婦を育てた文化をゲストに知ってもらうこと。その思いを伝え続けると、シェフ自ら「食べに行こう」と動き、支配人も巻き込んで試作を重ねました。当日は一部の予定だったフィリピン料理がデザートにまで広がり、チームの判断も変わっていきました。
最後はライブパーティーです。ふたりが求めたのは、立場も世代も国境も越えて全員が一つになり、結婚式後もまた会いたいと思える時間でした。挙式からパーティーへの転換に必要な1時間は、待ち時間ではなく余韻を分かち合うウェルカムパーティーに。会場内ではスタッフ全員が動き、私は「ライブウェディングを成功させよう」と声をかけ、ふたりの願いをチーム全員の願いに変えました。
ゲストが戻ると、厳粛だった会場はこの日限定のライブ会場へと変わっていました。銀テープが舞い、ペンライトが光る中でふたりが入場。余興やスピーチがなくても、ゲストは自由に会話や写真を楽しみ、会場全体が一つになりました。
この結婚式は、型にはめられたものではありません。挙式では厳粛さとふたりらしさを両立し、料理では新婦のルーツを伝え、ライブのように垣根を越えて一つになる時間を生み出しました。ふたりの大切なことを知ってもらい、大好きな人とつながる、紛れもなくふたりが望んだ結婚式でした。
結婚式はもっと自由でいい。まだ見ぬ一日を作り続ける使命
私は今なら、どんなカップルも結婚式として受け止められると感じています。その変化は私だけでなく、チームにも広がりました。結婚式の可能性は無限大です。これまでの形や常識にとらわれるのではなく、まだ見ぬ結婚式を見せることこそ、ウェディングプランナーの使命。結婚式はもっと自由で、もっとふたりらしくていい。私はこれからも、目の前のふたりの思いを結婚式として作るプランナーであり続けます。




評価のポイント
「宴会案件」とせず、自らがふたりの願いを結婚式として受け止めると決めた姿勢が印象的でした。繰り返した「なぜ」も、関係性を築き、人生や背景を丁寧に受け止めた上で探っていった、本音に向き合っていたプロセスが素晴らしいです。固定概念で線を引かず、結婚式として扱うために必要なことを逆算し、チームを巻き込みながら願いを叶えた姿勢を感じました。