リクルートブライダル総研は、結婚に関する調査・研究、未来への提言を通じて、マーケットの拡大と社会課題の解決に取り組みます。

自信の居場所〜結婚式がもたらすもの〜

違和感や不安に気づいたら
手を差し伸べ笑顔に変えるプランナーの役割を再認識

加藤 彩也(かとう さや)さん
浦安ブライトンホテル東京ベイ(千葉県)

レストラン・宿泊業務を経て、プランナーとして3年目。新郎新婦の想いに耳を傾け、そのおふたりの想いが大切なゲストへと伝わるような演出や進行を考えることを心がけている。

美しくなれる結婚式こそが、コンプレックス解消のチャンス

 「学生時代の写真が5枚しかないけど、生い立ち映像は作れる?」。そう尋ねられ「作れます!」と即答したのに浮かない顔の新婦。その表情の理由を探ってみると、新婦は写真が苦手とのこと。「自分の顔が嫌。目立ちたくない」と外見を全否定されるのでした。その後も「私には無理…」と様々な場面で葛藤する様子を見て、私は新婦に自信を持ってほしいと心の中で思いました。ふと、美しくなれる結婚式こそがコンプレックス解消の最高の機会だと感じ、「新婦に自信を持ってもらおう作戦」をひとり密かに開始したのです。
 準備期間はスタッフにも新婦が緊張せず意見が言える環境作りを呼びかけ、話しやすい雰囲気を心がけました。演出は新婦の不安を払拭するものを考案。そのひとつはキャンドルピラミッドです。ゲストの方から火をつけに来てもらえば、新婦がプレッシャーを感じながらテーブルをまわる必要がありません。さらに絵を描くのが好きな新婦にウエディングケーキのデザインを依頼するなど、定番の演出も新婦の気持ちを考慮し工夫。新婦に自信を持ってもらえるよう努めました。

ゲストがミニキャンドルを灯した後、二人がメインキャンドルに点火。ゲストも楽しめる演出と好評でした

結婚式当日、そこには自信を身につけた素敵な女性が

 その甲斐あり、前向きなセリフが目立つようになった新婦。猫背だった背中も「衣裳スタッフに怒られるから(笑)」と伸ばすようにしたり、嫌がっていた写真撮影も「した方がいいよね!」と確実に自信をつけてきているようでした。心配だったのは、式と同じ衣裳で撮影をするプレフォト。いつも通りの様子でプレフォトに臨んだ新婦でしたが、撮影直前に倒れてしまいました。「写真のことを考えすぎて頭が真っ白になっちゃった」と横たわる新婦に、「無理しないで大丈夫ですよ」と声を掛けると、はっきり「撮りたい」と。私は、新婦の強い気持ちを感じ取りました。
 結婚式当日。そこには、ウェルカムスピーチで自分の想いを堂々と語る新婦の姿が! 写真撮影にも笑顔で応じる新婦は、もうすっかり自分に自信を持った素敵な女性でした。
 結婚式は全ての人にとって、待ち望んだ晴れ舞台とは限りません。でも、結婚式には人に自信を与える力がある。前向きになれない理由を抱えている方がいたら、そっと手を差し伸べ導いてあげる。プランナーとしてそれが大切なのだと気づかされた結婚式でした。

結婚指輪を披露し幸せそうに微笑む二人。新郎と新婦の出会いは大学時代。子どものような純粋さと繊細な部分を持ち合わせる新婦を優しく見守る新郎の表情が印象的でした
友人ゲストから「かわいい!」「一緒に写真撮ろうよ!」の声に満面の笑顔で応じる新婦

リラックスして会話できる雰囲気作りを大切に

 新郎新婦がリラックスできる雰囲気を心がけています。打ち合わせでは、二人の緊張を解くために私の雑談からスタート。会話をたくさん引き出し、二人の情報を得ることは素敵な結婚式を作る上での土台です。表面には見えてこない結婚式への不安や、違和感を察知するためにも会話の重要性を重視しています。

審査員の目

 「結婚式は人生を豊かにする」「人を成長させる」という言葉があります。今回加藤さんが担当したお二人は、まさにこの言葉を実感したのではないでしょうか。特に加藤さんの細かな気配りによる環境創りとプランニング力があってこそ、新婦が結婚式に前向きになり、自身の人生を向き合う機会を自然と創り上げたのです。