「諦めたくない」。自分にできることを考え続けた日々が
引き出した、結婚式が持つ「大切な想いを運ぶ」という力
目標を探し、もがいていた時に受けた面接で『ウェディングプランナーをやらないか』と採用され、やりがいに溢れた人生が始まりました。メンバーやお客様、家族に支えられ結婚出産を経て充実した毎日を送っています。
お母様ともお兄様とも不仲の新婦テーマはお互いの「想いを運ぶ」
「母とは性格が合わないので目立つ演出はできません」と新婦。私は「何か自分にできることはないだろうか」と考えました。「結婚式を挙げてよかった」と思ってほしかったからです。
頻繁に遠方へ出向く新婦を、新郎が送迎したことから交際が再開した2人。「車中の時間がお互いの想いを運んだのだろう」と考えた私は、「2人の『感謝』とゲストの『祝福』、2つの『想い』を運ぶ」というテーマを提案。2人も喜んで賛同してくれました。
しかし新婦のご両親は離縁しており、お父様は欠席。「兄とも不仲なので、挙式の入場は新郎新婦で。母からは感謝の手紙は不要と言われています」と顔を曇らせる新婦。「何かできないか」と諦めきれない私は後日、新婦に「結婚式を機に仲直りを、と言うつもりはありません。ただ、式がいい思い出になったと皆様に思ってもらいたいんです」と伝えました。新婦は少しずつ心を開き、「中座のお相手はお母様に。仲良く手をつないでいた頃のお写真をスクリーンに映し出して、司会者の代読という形で感謝の気持ちを伝えませんか」という提案を、聞き入れてくれました。これで新婦からの「感謝の想い」が運べます。お母様からの想いも届けようと新婦の名前の由来を尋ねてみるも、意味はないとのこと。でも諦めず、ひと言でも「祝福の想い」を運ぼうと心に決めました。
祝福のカードと感謝の手紙言葉で想いを届け合う新婦とお母様
迎えた当日。ゲストのテーブルには新郎新婦が「感謝」を記したカードが。一方で私はゲストにも「祝福」をカードに込めてもらい、2人にサプライズで贈ろうと画策。新婦のためにお母様とお兄様から祝福の言葉をもらいたかったからです。
いよいよ新婦中座の場面に。映し出されたのは、笑顔で幼い新婦の手を取るお母様。私は「どうかこの時の気持ちを思い出してほしい」と願いました。エスコート役が発表されると、お母様は驚きながらも微笑みを浮かべて前へ進み、自ら新婦の手を握ってくれたのです。そこで代読された新婦の手紙は、「お母さんは働き者です。小さい頃から看護師として働く母の背中を見て、気づけば自分も同じ職業に。好きなようにさせてくれ、応援もしてくれました。本当に感謝しています」というもの。親子の想いが通じ合った瞬間でした。
披露宴が終わり、私は2人にゲストからのカードを渡しました。お母様は「末永く幸せになってください」、お兄様は「何かあったら連絡してこい」と書かれていました。後日お電話で新婦から「母は楽しかったようで、私の同僚を招いて二次会をしたそうです。兄とはずっと喧嘩していましたが、カードを見てもう怒っていないと知りました。仲直りのきっかけを作ってくださり、ありがとうございます」と嬉しい言葉をいただき、私は「諦めなくてよかった!」と胸が熱くなりました。
- 新郎の後押しもあって実現した、新婦とお母様の中座。感謝の思いを受け取ったお母様の表情と、固く握られた2 人の手に、「結婚式だからこそ訪れた2 人の気持ちがつながる瞬間」が感じられました。
結婚式が持つ「大切な想いを運ぶ力」を引き出すため、これからも諦めない
当日までの道のりで、何度も心が折れかけました。そんな中、「ママ大好き」と抱きついてくる幼いわが娘。彼女への深い愛情は、この先絶対変わりません。そんな想いが、「諦めたくない。お母様と新婦、双方の愛情を運びたい」という気持ちを強く持ち続ける原動力となりました。
結婚式には、「大切な想いを運ぶ力」があると信じています。その力を引き出せるのが、ウエディングプランナー。私はこれからも結婚式を通じて大切な想いを運び続け、どんな状況でも自分にできることを諦めずに探し続けたいと思います。
- お母様との関係性について初回は聞くことができませんでしたが、「少しでもいい式の思い出を」という想いは、やがて通じました。
評価のポイント
普通であれば、途中で心折れて「もういいや」と投げ出してしまいそうな状況でも、福田さんは諦めません。それは「想いを運ぶ」結婚式の力を信じているから。我が子との記憶を重ね、このタイミングで出会った新郎新婦の未来に少しでも関与したい気持ちが強く伝わってきました。ウエディングのテーマを単なる飾りにせず、互いの感謝と祝福の交歓を細やかな仕掛けで実現させていくその手腕も見事でした。