お見合い結婚が主流だった時代から結婚へのプロセスが恋愛に変化して久しい。恋愛結婚は相手選びの自由度が高いというメリットがある一方で、自力で相手を見つける必要がある分、難易度も高くなり、加えて近年は“多様化”というキーワードの元、様々な価値観が広がり、そもそもの恋愛についても難しさに拍車がかかっているように感じる。平成から令和へ時代が変わり、すごいスピードで価値観が変化する中での”恋愛“について、20代を中心に考察する。
まず実態を「恋愛・結婚調査2019」からみると、20~40代の現在恋人がいない割合は67.9%であり、20代男性においては、交際経験がない割合が約4割という結果だった。若年層の特に男性においては、恋愛に消極的になっているようだ。一方で、恋人がいない20代のうち、恋人が欲しくない割合は男女とも2割を下回っており、恋愛をあきらめているわけではないことがうかがえる。
では、なぜ恋人ができないのか。恋人ができない理由は「出会いがない」が最も多く20代~40代で共通している。そして、20代の特に男性においては、「コミュニケーション力に問題がある」「魅力に自信がない」が、他の年代よりも高く、「自信のなさ」が目立つ。その背景には、20代の“リスク回避志向“が関係していると考える。20代は、生まれながらにしてインターネットがあり、SNSなどで個人がいつでも、いつまでも簡単につながることができる環境にある。そんな中でミスを犯してしまうと、ミスが容易に共有され、且ついつまでも残ってしまうため、リスクに対して敏感になっていると言える。また20代は、人生の大半を「失われた20年」と呼ばれる時代で過ごしてきた。政治・経済的に不安定な世の中を目の当たりにしてきたため「安定」の価値の高さを実感しているのだ。そんな環境下で育ち、失敗を恐れているからこそ、恋愛においても“失敗しない自分”という高い理想と比較してしまい、自信喪失につながり、恋愛意欲があっても恋愛に踏み出せず、恋人ができない。そして恋人ができないから、さらに自分に自信が持てないという負のループ、いわば“自信喪失ループ”にはまり、恋愛を難しくしてしまっているように思う。
そんな自信喪失ループに陥り、恋愛したいのに恋人ができないと悩む若者たちにとって、恋愛に踏み出すためには大切なのは、やはり“行動”だろう。「沢山出会いの場に行って、好きな人ができたらどんどんアプローチしよう」ということだけではない。もちろんそれも恋人を作るためには必要なことではあるが、恋愛にしり込みしてしまっている人にとっては、その前段階として、まず普段の生活においての行動の幅を広げることが大切なのではないだろうか。同調査によると、恋人がいる人と交際経験がない人では、普段の行動から差が生まれていることがわかった。恋人がいる人は交際経験がない人に比べて、新しいものに対する好奇心や情報収集に対して積極的で、休日に外に出かけたい意識や友人に会う頻度が高いなど、興味や行動の幅が広いのである。情報収集やさまざまな体験を積極的に行うことで、知識が深まり、話題の引き出しが増える。会話の幅が広がるからこそ、「何を話せば良いのだろう・・・」というコミュニケーションの不安が改善でき、その体験を通じて、人とのコミュニケーションにも自信が持てるようになるのではないだろうか。さらに興味の幅が広がり、行動が広がれば、おのずと交友関係も広がり、出会いが生まれる可能性もある。加えて言うと、能動的になることを意識することもポイントだと思う。近年は無意識に自分の“好み”にあったものが身の回りに集まりやすい。例えば、ニュースやネットショッピングでは、購入履歴や閲覧履歴から自動的に個人最適化された情報が表出する。実際に大学生に話を聞いていると「動画サービスを見るときはおすすめを辿っていくので、気づいたらいつも大体同じジャンルのものを見ている」という声も聞く。受動的にあつまるものだけに意識を向けていると、いつもの自分の生活からの脱却は難しいうえに、より幅を狭めてしまう。能動的な行動を意識することも大切だと言える。“行動を変える”。言うのは簡単で、実行するのは難しいかもしれないが、一度に劇的に行動を変えなくてはいけないというわけではない。少しずつ身近なところから始めてみてはどうだろうか。例えば、自分の好きなものを調べるついでに関連するものも調べてみる。今まで触れたことのないものに少し目を向けてみる。今まで誘われても行かなかった友人との飲み会に1回くらいは参加してみる。など、少しずついつもと違う行動を意識して加えていくことが、自信をつけることにつながり、恋人がほしいと思う人の恋愛への第一歩となるのではないだろうか。
※出典:
『恋愛・結婚調査2019』(リクルートブライダル総研)