リクルートブライダル総研は、結婚に関する調査・研究、未来への提言を通じて、マーケットの拡大と社会課題の解決に取り組みます。

ケニアウエディング

最初は、「披露宴でケニア!?」と戸惑い、
どう表現するか、とても悩みました。

高橋 芽衣(たかはし めい)さん
浦安ブライトンホテル(千葉県浦安市)

プランナー歴7年。今のトレンドをいち早く確認するために、朝の情報番組チェックは欠かさないように心がけている。

ホテルの宴会場に、ケニアを体感できる空間をどうつくりあげるか。

 新婦が幼い頃、両親の仕事の関係でケニアに住んでいたこともあり、ケニアで式を挙げた二人。とても感動的だったという挙式の様子と、ケニアの雰囲気をゲストにも伝えたいという想いから、ケニアをテーマにした披露宴を行いたいというご要望でした。最初はケニアのイメージがまったくわかず、しかもホテルの宴会場でどう表現すればいいの?と、とても悩みました。それでも、フラワーコーディネーターや映像・音響スタッフなどチームみんなの協力を得ながら、一つひとつ空間をつくりあげていきました。
 まずはオープニング映像。サバンナの動物たちをバックにライオンキングの曲を使用し、巨大スクリーンとスピーカーの重低音で一気にケニアの世界へゲストの気持ちを引きこみます。会場内には、ケニアの大自然を表現するため4mもの大きな木を設置。加えてアフリカの雰囲気をもつ花をアレンジすることで華やかさも演出しました。また、新郎新婦から、木彫りの動物を席札立てにしたいという希望がありましたので、ゲストテーブルにも木を飾り、動物たちが木の周りにたわむれるイメージを表現。さらにゲストの入場時からケニアの音楽を流し、照明にもこだわって、目と耳でケニアを感じていただく会場コーディネートを実現しました。チームで何度も話し、連携しながら作り上げただけに、私たちスタッフにも心に残る披露宴となりました。

ケニアの雰囲気を演出するため、会場内に深いグリーンの大きなユーカリ・カクレミノを設置。ゲスト卓の装花にもその枝と葉を使用。それだけでは華やかさに欠けるため、赤いグロリオサや黄色いルティア等の花でアフリカの雰囲気をアレンジした。

それぞれの両親のストーリーと、感謝の想いをゲストに伝える。

 こうしたケニアへのこだわりを、私は単に、挙式に感動したことと新婦が小さい頃から住んでいたという理由だけだと思っていました。しかし打ち合わせが進むにつれ、その根底に、両親のストーリーと深い感謝の想いがあることがわかりました。今から38年前、ある青年が大きな夢を抱き、ケニアへ旅立ちました。その二年後、一人の女性が、周囲の猛反対を押し切り、青年を追ってケニアに向かいました。それが新婦のご両親です。「38年前のそんな二人がいたからこそ、今の自分がいる。そんな両親への感謝を伝えたい。」それが新婦の想いでした。
 一方で新郎にも両親のストーリーがありました。新郎のご両親は結婚式で、『関白宣言』をお母様が演奏しお父様が歌うという演出を行ったそうです。この関白宣言をスタートとして夫婦生活を歩み、自分を育ててくれた、そんな両親を、自分もお手本にしたい。それが新郎の想いでした。そこで私は、この演出を二人の披露宴でも再現することを提案し、感謝の想いを歌で伝えていただくことにしました。新郎が歌ったのは両親と同じ『関白宣言』、新婦が選んだ曲は、『Wind Beneath MyWings』。「あなたがいてくれたから、今の私がいる」―新婦が歌った曲の歌詞の一節です。

感謝を歌で伝える場面では、生映像や歌詞と共に、両親の若い頃や親子写真も流し、ゲストにも想いを伝えた。

通常とはあえて逆にすることで、全体の流れを感動的に演出。

 この歌のシーンがより感動的な場になるよう、通常は中座中に流すことが多い生い立ち映像を、歌の直前に上映することにしました。そしてその映像も、幼い頃から現在へという流れではなく、あえて現在から徐々に過去へとまき戻すことで、両親のストーリーの始まりを予感させました。
 そしてケニアの魅力とそれぞれの両親のストーリー、感謝の想いを十分にゲストへ伝えた上で、披露宴の最後にケニアでの挙式写真をエンドロールとして上映しました。そこにうつる二人と両親のこぼれるような笑顔、素晴らしい景色で、すっかりケニアの魅力にはまったゲストに、結婚式をより感動的にご覧いただくことができました。

チーム全体にもストーリーを共有

 イメージがつかなかったり、会場の作りこみがとても大変なことは、今回に限らず多々あります。そんな時でも協力して一体感を持ってやれるよう、スタッフやパートナー企業の方とは日頃から密にコミュニケーションをとるようにしています。打ち合わせや施行前には、なぜそのような希望に至ったかなど、理由や経緯を必ず伝えますし、結婚式後には新郎新婦やゲストからいただいた感想やお礼などを報告することも心がけています。満足感や達成感をチームみんなで感じ、笑顔になれるのが、私にとっても嬉しいですね。

審査員の目

 「ケニア」という大きなテーマを、表面的にではなく「なぜケニアなのか」を突き詰めた上で、家族のストーリーを軸に展開。スタッフの協力のもと、音楽、映像、装花、会場コーディネートすべてを使ってケニアを体感させたその演出は、「ホテル」の概念を取り払う素晴らしいものでした。(2011年9月30日更新)