リクルートブライダル総研は、結婚に関する調査・研究、未来への提言を通じて、マーケットの拡大と社会課題の解決に取り組みます。

THE MUSICAL WEDDING〜パイでございます〜

ホテルウエディングという枠にとらわれることなく、ホテルだからこそ叶うミュージカルウエディングで2人のストーリーをゲストに届ける

根岸 竜(ねぎし りゅう)さん
浦安ブライトンホテル東京ベイ(千葉県)

サービススタッフ・キャプテンを経てプランナーに。現在は支配人として受注・施行と幅広く奔走。お客様とブライダルサロンの兄貴分をモットーに、日々ホテルウェディングの可能性を追求している。愛娘は2歳。

ミュージカルウエディングへの道を
模索し「主演=2人・観客=ゲスト・脚本=私」の図式を導き出すまで

 観劇が共通の趣味なので、「ミュージカルをテーマにしたい」「思い出の場所でロケ撮影をした映像を、披露宴で流したい」という希望の新郎新婦。稀に見るほど結婚式に対する熱量が高く、はたしてホテルウエディングでどこまで2人の期待に応えられるのだろう、と若干の不安を抱えながらのスタートとなりました。

 まずはミュージカルを研究し、私は「歌って踊ることにとらわれ過ぎず、エンタメを通してゲストをもてなし、感謝の想いを伝える結婚式」というイメージにたどり着きました。さらに多くのスタッフが関わって成り立つミュージカルは、結婚式に通ずるものがあることを発見。そこから「2人が主演俳優で、ゲストは観客、自分は脚本家。ミュージカルにホテルウエディングをかけ合わせ、2人のストーリーをゲストがたどれるような結婚式に!」と思い立ちました。 しかしそんな中気になったのは、ノリノリの新郎に反して、置いてきぼりとなり笑顔がどんどん減りゆく新婦。このままでは新郎と私の一方的な舞台になってしまう……そう感じた私は新婦の意見をそっと聞き出し、自分の意見として新郎に伝えることを意識しました。配慮の甲斐もあり、次第に新婦に笑顔が戻り、打ち合わせの雰囲気は一変しました。

新郎の想いを熱を持ってスタッフに伝えることで、ロケ撮影が実現!
渾身の映像で2人の物語が描かれる

 最もこだわったのは、ロケ撮影。場所は東京のど真ん中。前例のないことでしたが、綿密なシナリオを作成する新郎の熱い想いを汲んだ私は映像スタッフに相談し、快諾と協力を得て実現へとこぎつけることができました。私も2人からの嬉しいサプライズ要請で、「パイでございます」の台詞とともに友情出演! 2人、カメラマンともども、ワンチームとしての達成感を味わいました。

 また劇場のロビーをイメージして、ホワイエには2人の思い出の品や結婚指輪の紹介コーナーを展開。開演前からゲストを2人の舞台へと引き込み、会場でも照明とスモークで開演を待つワクワク感を演出しました。さらに、パイを中心にストーリーが展開する2人が大好きなミュージカルにちなみ、料理長の「どうぞお召し上がりください」のかけ声と共に、パイを一斉に提供。観客参加型ミュージカルのような一体感を生み出すことにしました。結果、披露宴は大盛況! 打ち合わせを進めるうち、新郎はただ賑やかに楽しみたいのではなく、エンターテイナーとしてお世話になった方々をもてなし、感謝を表したかったことが次第にわかりました。私が描いたコンセプトは間違いではなかったと確信でき、とても嬉しかったのを覚えています。

プランナーもロケ撮影で友情出演。楽しく感謝を伝えたいというふたりの想いがゲストにも伝わり当日は大盛況でした。

制約を生んでいたのは自らの先入観。
プランナーは諦めない心の分だけ、2人の期待に応えることができる

 プランナーの仕事は、式場の枠の中でできることを提案することでも、ただ希望を実現するだけでもありません。脚本家として2人の見えないストーリーを引き出し、具現化し、演出してこそ、プランナーの存在価値が生まれると改めて感じました。これまで「ホテルだからできない」と決めつけていたけれど、できない理由は会場ではなく自分自身だったのです。できないと思った時点で、そこからは何も生まれません。ホテルだからこそできることはたくさんあるはず。2人の想いをホテルウエディングとかけ合わせることができるのは、我々プランナー以外にはいません。そしてそこには、プランナーの熱い想いが必要なのだと思います。

 ここ数年、コロナを理由に「できない」と決めつけていたことはありませんか?
私たちプランナーがそんな偏見を捨て、熱量をもって挑めば、どの会場にもいい結婚式があふれる日が来ると信じています。一緒に盛り上げていきましょう!

ふたりとスタッフがワンチームになり創り上げた結婚式。そこには先入観や既存の枠を超えた新たな可能性がありました。

評価のポイント

根岸さんの着想が創造性に富んでおり、自らを脚本家、新郎新婦を舞台俳優、ゲストを観劇者として見立てることで、2人の描く結婚式の世界観を上手に具現化し、「ミュージカル×ホテルウエディング」の融合を目指されていました。会社として今まで対応したことがない事例においても、やったことがないからできないではなく、どうしたら可能なのかという視点をもって実現されており、その高い熱量が最高のエンターテインメントを誕生させたのだと思います。