ゲストに感謝を伝えるのは、当たり前のことではないと学んだ結婚式。
国籍も文化も、価値観も違う2人だからこそ分かち合える、式のカタチ
ウエディングにまつわることはもちろん、目の前の事象にまっすぐで在ることを大切にしている。趣味は尊敬するプランナーさんのウエディング実例を見ることと、好きな音楽バンドのライブに行くこと。
国際結婚ならではの価値観の相違。
日本式の良さを伝えたいけれど根本の理解がなければ意味がない
インド人の新郎と日本人の新婦。2人の共通の願いは「互いの国、家族、友人を知り、ゲスト同志が繋がる日にしたい」でした。「来てもらうからこそ大事なゲストに自分のルーツ・福知山を知ってほしいし、感謝を伝えたい」と熱望する新婦。一方で、インドの結婚式は通りすがりの観光客すら参加OKの、食べて飲んでと賑やかなお祝いの場であるため、新郎は結婚式のために過去や未来について考えることの意義が理解できずにいました。
大事なゲストに感謝を伝えたい新婦と、感謝は心の中にあるものだから言葉で伝える必要はないという新郎。本来結婚式は準備期間にも意味があり、それを踏まえるからこそ当日に伝わる想いがあります。でも理解し合えないまま準備をしても、日本の概念を押し付けるだけになってしまう……価値観の大きな違いに、私は悩みました。
価値観の違いを受け入れ、ゲスト同士が分かち合い、
つながれる2人にとってベストな結婚式を
そんな折、新婦に誘われ、先輩夫婦も交えて食事をする機会がありました。気づけば私は結婚式づくりの想いを熱弁。ざっくばらんな場で「ありがとう」を伝える大切さについての会話で盛り上がりました。腑に落ちた表情の新郎。ラフな場で会話しながら私は、プランナーとして意義を伝えなければと、あるべき論に囚われていた自分に気づきました。価値観が違う2人だからこそ、夫婦として何を選び、何をゲストに伝えるのかを考えれば、2人らしい結婚式になる!
もっとフラットに同じ立場で結婚式をつくっていこう、と私自身の向き合い方が変わりました。次の打ち合わせで、「感謝の手紙を書いてみようと思います」と新郎。一歩前進です。
とはいえ課題は山積み!
まずは全員が楽しむための下準備です。事前に作ったWEBサイトで、結婚式にかける想いや福知山について、当日の進行などを伝え、各国から来るゲストが楽しめる種まきを開始。感謝を伝える概念のないインドのご家族には、日本の結婚式がわかる動画を作成しました。次は、当日に向けて気持ちを高めるしかけです。前日に新婦のルーツをたどる福知山ツアーと、インド流前夜祭としてヘナタトゥーを。2人とゲストがつながる時間を育みました。
結婚式当日は、互いのゲスト同士がつながり、輪を広げるための場づくりを。座席フリーのビュッフェ形式で、お酒はそれぞれが注ぎ合える瓶ビールに。全員が自己紹介入りの名札を着け、プロフィール映像の代わりに壁一面に思い出写真をほどこすことで動かなければ始まらないしかけを。その甲斐あって、会場のあちこちでゲストたちのつながりが生まれます。進行の前半は日本式。2人の感謝の手紙には、ゲストも感動。後半はインドタイムです。民族衣装に身を包んで踊りあり、新婦の故郷の味を体験する巻きずし作成タイムありで、大いに盛り上がりました。
- 事前のWEBサイト告知や福知山ツアー・前夜祭を行うなど各国ゲストが楽しめるように種まきを行いました。
過去と未来、価値観を深く考え共有して乗り越えるからこそ最良の関係が築ける。それが結婚式の力
後日には、互いのゲスト同士の交流が続く嬉しい展開が待っていました。これこそ結婚式という場を通して2人が叶えたかったことそのもの。準備期間で互いの考え方を知り、受け入れたことで2人もよりよい関係になったそうです。これが「結婚式の力」だ、と私は思いました。
「結婚式で大切なゲストに感謝を伝える」……よく耳にする言葉です。当たり前のようですが、新郎新婦が感謝を伝えたいと思う経緯は、みな違います。今回は特に顕著でしたが、どのカップルも価値観は違う。その違いは、愛にあふれて奥深いもの。そんな2人らしく愛おしい結婚式を、あるべき論に囚われることなくつくり続けたい。それが私の信念です。
- お互いの国の文化を理解し歩み寄ることでふたりにとってベストな結婚式を考えていきました。
評価のポイント
どんな新郎新婦も、もともとは異なるルーツを持った人間同士。国も違えば価値観に違いが出てくることは当然。佐々木さんは、1人の人として2人と向き合いながら、結婚や結婚式への考え方にある背景を引き出し、2人の大切な想いから丁寧に紡いでいかれました。2人や家族同士が結婚式を通じて互いの文化や価値観を知り、理解を深められる場づくりや仕掛けには佐々木さんの独創性も光ります。多様なあり方を尊重する、時代を象徴する結婚式でした。