リクルートブライダル総研は、結婚に関する調査・研究、未来への提言を通じて、マーケットの拡大と社会課題の解決に取り組みます。

「旅立ちとはじまり」

2人から見た結婚式だけでなく、親御様から見た結婚式もある。
結婚式までの過程を大切にプランニングすることで見えた、新たな視点

徳永 彩奈(とくなが あやな)さん
ブランレヴュー宇都宮アクアテラス(栃木県)

幼少期から始めた音楽の経験が、私の結婚式創りの土台。目に見えない音に込められる情景や意味を大切にすることは、結婚式でも同じ。人がもつ想いや話す言葉の背景を考えなら、結婚式を創っています。

「疎遠の親に認めてもらいたい」と願う新婦。
当日だけでなく結婚式を迎えるまでの時間をプランニング

 野球一筋で甲子園にも出場し、常に自分の意思で歩んできた新郎と、自分より親の意思を一番に考え生きてきた新婦。正反対な歩み方をしてきた2人の話です。

 ある日、実はご両親と深刻な疎遠であると、新婦から聞きました。お母様から結婚の承諾や結婚前に家を出る許可をなかなか得られなかったこと、いざ家を出る日にもめて、見かねたお父様に「出て行け!」と追い出されたこと。「母に結婚を認めてもらいたい」と切実な想いを聞き、この結婚式が双方の今後の関係性を決める、究極の状態であることを感じました。結婚式の可能性を信じたい! そう思った私は、結婚式当日だけでなく、「結婚式を迎えるまでの時間」をプランニングすることにしました。親御様に気持ちの整理をしていただき、当日は2人を気持ちよく送り出していただくためです。これがうまくいくかどうかで、当日の結婚式が変わってくると強く思いました。

ヒヤリング、自分を肯定してもらうための働きかけ、本心の把握。
お母様の心と行動に少しずつ変化が

 まずは、結婚を認めない理由をお母様から聞く必要があります。2人に何度も頼み、お母様にも試食会に来てもらうことに成功。しかし当日のお母様は無表情で無反応。このままでは話が聞けないと思い、私は二つの段階を踏んで本心を引き出すことにしました。一つは、シチュエーション。お腹を満たして穏やかになったところで、結婚を最も実感できるチャペルへ親御様のみを案内。新婦がおらず、お母様が本心を打ち明けやすい場を選びました。二つめは、視点を切り替えた会話。お母様の結婚式、新婦の誕生、家族との思い出など、過去をさかのぼって少しずつ最近の話までをヒヤリングしました。今縛られている感情を切り離し、本来の想いを引き出せるかも?と思ったからです。

 途中、「私の子育ては失敗だった」と後悔の念を聞き、私は気づきました。子どもの結婚は、親にとって「自分の人生を振り返る機会」なのだと。後悔しているお母様に、まずは自分を肯定してもらいたい。そう思い、新婦にお母様の想いを伝え、新婦から歩み寄ってもらうよう根気強く働きかけるなど、種まきをし続けました。

 挙式1カ月前、お母様の気持ちに変化が!
娘のドレスフィッティングに同行したのです。お電話で、お母様が子育てを振り返り、プレゼントを手づくりして結婚に向き合い続けていると知りました。

 結婚式当日、ファミリーミートの前にサプライズでお母様からの手紙を新婦に渡しました。これまでを詫び、祝福する言葉に、喜びの涙を流す新婦。扉を開けると、親として子どもの結婚式を心から祝い、幸せを願うお母様の姿がありました。

結婚式当日までのプランニングという新たな挑戦を通して今まで気付かなかったプランナーの介在価値を見つけることができました。

 お母様にはもう一つ懸念がありました。新郎のことをよく知らないので、祝福・応援できない、ということ。そこで披露宴では2人の人柄や出会い、築いてきた人生を知る時間をつくりました。きっとお母様も「2人でいるのが娘の一番の幸せ」と感じてくれたはずです。子育てという肩の荷を下ろしたお母様は、結婚式の結びにわが子を優しく抱きしめました。

目指したいのは祝福と応援に満ちた人々が集まる、心温まる結婚式。
プランナーの介在価値はそこにある

 これまで新郎新婦に向き合った結婚式をつくってきましたが、それは「2人から見た結婚式」でした。今回視点を変えたことで初めて見えた、「親御様から見た子どもの結婚式」。この世には、関わるすべての人から見た結婚式があると気付くことができました。夫婦、家族、大切な人の愛や想いをつなぐことにこそ、私たちプランナーの介在価値があります。祝福と応援であふれる結婚式をつくれたら、関わるすべての人にとって人生の宝物となるのではないでしょうか。

最初は結婚に反対していたお母様も当日は新婦を優しく抱きしめてくれました。

評価のポイント

結婚式までの過程の捉え方や視点の置き方に徳永さんならではの独自性が発揮されていました。新郎新婦だけでなく親の目線から結婚式を捉えるなど、視点を切り替えることによって介在に繋がる突破口を見出す手法や、相手の本音を引き出していくために場所や問いなどをステップを踏んで切り替えていく打開策には、他のプランナーも真似できるポイントがたくさん詰まっていたかと思います。徳永さんが丁寧に想いを紡いだからこそ、実現した結婚式でした。