最善の式をつくるためには踏み込み、導くだけでなく「待つ」ことも大切
2人を信じて気持ちに寄り添い、見守り続けた1072日のストーリー
中学3年生の頃に憧れを抱いたブライダル業界。夢を叶え株式会社ジョインへ入社。途中他部署も経験し、ウエディングプランナー13年目。おふたりの表情や言葉に意識をおいて打ち合わせ、当日を迎えています。
コロナ禍での延期、ご懐妊で心身の不調から無期限の延期に。
連絡できずひたすら信じて待つ日々
2020年春に結婚式を迎える予定だった2人。コロナ禍で半年後に延期となったものの、その間にはご懐妊の嬉しいニュースもありました。しかし式までひと月を切った時、新郎から「新婦にドクターストップが出ました。キャンセル料はどれくらいですか」と連絡が!
新婦は無事に出産できるのかという心配から不安定になり、自分を責めているとのことでした。結婚式の話ができる状態ではないと知り、私が提案したのは「日にち未定の延期」。連絡のタイミングが難しくなるため、このような提案は通常こちらからすることはありません。でもこれが最善だと思った私は、「いつでも待っています」と伝えました。
4カ月が過ぎ、SNSで新居の完成を知った私はメッセージを送りました。返信はなく、代わりにご友人からの電話で偶然早産を知り、送ったメッセージを後悔しました。連絡したい気持ちを抑え、再び待つことに。2か月後にSNSで、4カ月もの早産で医師から今後のリスクを伝えられたこと、自分を責めたこと、今は母として強く生きていることを知り、涙が溢れました。今なら…と再び送ったメッセージに、今度は「絶対松浦さんと式をつくると決めています」と返事があり、感激しました。
2人の意向は「息子の酸素チューブがはずれたら式を」。私からの連絡は重圧になると考え、文章やタイミングに配慮したメールでやりとりをしました。迫らず押さず、待ち続けた日々。ほどよい距離感で見守る関係を保ち続け、ようやく挙式へとこぎつけることに。こうして打ち合わせが始まりました。
時には意見が食い違うことも。
否定はせず、2人の気持ちを大切にタイミングを見極めつつ最善を提案
ウェルカムコーナーには「子どもの写真を」という新婦と、「2人の写真を」という新郎。これまでパパママ婚ではお子様軸の式を提案してきましたが、ウェルカムコーナーには家族の始まりを象徴する夫婦写真を、お子様の成長と感謝を伝える披露宴会場の壁にはお子様中心の家族写真を飾るよう提案することで、双方の気持ちを尊重。披露宴中にウェルカムコーナーにお子様の写真をプラスし、式後に「夫婦」から「家族」になったことをゲストにより感じてもらえる仕掛けも用意しました。
また「支度は子どもと3人同じ部屋で」との希望でしたが、「パパママ婚であっても、家族の原点である2人の時間から一日を始めることに意味がある」と考え、希望は否定することなく、受け入れてもらえるタイミングを待って、それぞれの部屋で支度をし、ファーストミートをすることを提案しました。2人だけだからこその感情を味わってほしかったからです。ファーストミートの直後にはお子様が花束を携えて登場。より夫婦としての喜びが溢れるシーンとなりました。
- 1,072日もの待ち続けた時間はふたりにとって最高の提案をする自信と決意を与えてくれました。
タイミングや返事を待った時間が生んだ数々の提案。
待つとは、足を止め同じ歩幅で未来を見ること
大切な人を想い、時を待つのは、簡単なようで難しいこと。私はプランナーとして、いつしか「一歩踏み込んで導くこと」が正解だと思うようになっていましたが、この結婚式を通じてそれがすべてではないと学びました。見守り続けた時間が育んだのは、2人の最善策を見つけるための洞察力。そして待ち続けたあの長い時間がなければできなかった提案が、たくさんありました。
人は不安な時、焦る気持ちを抑えられず、待てなくなります。でも待つとは、何もしないことではありません。一緒に足を止めて見守り、いつでも手を差し伸べられるよう心で伴走すること。便利な世の中だからこそ、すぐに答えを出すよりも大事なことはあると思います。
- 心で伴走し最善を見極める。「待つこと」が究極の選択になり得るとこの結婚式で気付くことができました。
評価のポイント
「結婚式のキャンセル」も覚悟した2人に対し松浦さんが提案された「日にち未定の延期」。プランナーだからこそこの選択はとても難しく、つい何かをして差し上げたくなってしまうもの。松浦さんは、ただ受け身で待つのではなくSNSなども上手く活用しながら2人の状況を絶妙な距離感で見守り続けました。松浦さんの「究極の寄り添い」があったからこそ、2人は夫婦として、家族として本当に求めていた形での結婚式が実現できたのだと思います。