リクルートブライダル総研は、結婚に関する調査・研究、未来への提言を通じて、マーケットの拡大と社会課題の解決に取り組みます。

「LIFE‐SIZE 等身大でありのまま」

残された時間が少ない中で、お父様と2人のためにできることとは?
気持ちに寄り添い仲間の力を借りて、一瞬を一生の思い出に変えた結婚式

藤縄 裕子(ふじなわ ゆうこ)さん
ララシャンスガーデン東京ベイ(東京都)

私の人生観において大切にしていること、それは、【感謝に勝る能力なし】。人に対しての感謝を忘れず【大切な人の大切な人・考えを大切にできる人】でありたいと強く思っている。

突然お父様に下された余命宣告。
特別なことはしてほしくない父とドレス姿を見せたい娘のための策は?

 プランナー1年目の私が担当したのは、口数が少ない新郎と、パワフルで笑顔が素敵な新婦。順調に打ち合わせが進む中、震え声の新婦から電話が入りました。お父様がガンで半年の余命宣告を受けたこと、ウエディングドレス姿を見せたいことを、涙ながらに伝えてくれた新婦。キャリアのない私は、2人の想いと背景を周りに伝えて、力を借りることにしました。

 先輩スタッフに相談すると「模擬挙式は?」とヒントをくれました。けれどお父様には「自分のために特別なことはしないでほしい」との想いがあったのです。お父様のために設けた時間だとわかってしまう模擬挙式は、果たして正解なのだろうか? 病院に訪問する、オンラインでつなげる、結婚式の日程を早める……などさまざまな案を考えましたが、新婦の夢であるバージンロードを実現させたい想いは、捨て切れませんでした。

温かいチーム力に支えられ
父娘の意向に沿ったアイディアで2人の想いを叶えた特別な前撮り

 そんな折、他のお客様の前撮りに親御様が来ているのを見て、大々的な模擬挙式ではなく、前撮りの中に模擬挙式の流れを自然な形で組み込む案を思いつきました。ベストが何かを考え抜き、「あくまで前撮りという形で、お父様にドレス姿をお見せしませんか?」と提案。2人も喜んでくれました。写真だけでなく記憶にも残る特別な一日にするために、私は各部署の人々に相談してたくさんのアイディアとアドバイスをもらいました。

 迎えた前撮り当日。ファーストミートでは、威厳があり寡黙なお父様の、満面の笑みが見られました。節々であえて「リハーサルをいたします」「前撮りを始めます」と伝え、お父様のために特別なことをしているわけではないと強調。またこっそりフラワーシャワーの準備をしていたのですが、チャペルでの撮影を終えて扉を開けると、そのためになんと全部署の仲間が集まってくれていたのです。その数は大階段が埋まるほど。1人では決してできない、周囲の力を借りるからこそできる形があることを知り、仲間の温かさに胸を打たれて涙が溢れました。

 サプライズはもう一つありました。それは新婦による、お父様希望曲のピアノ演奏。驚きつつも嬉しそうに目を閉じて聞き入り、前撮りの終了を告げると同時に立ち上がってお礼を言いながら、何度も何度も頭を下げてくれたお父様。自分のための時間だったことに、おそらく気づいていたのだと思います。

等身大の人間としてふたりやご家族に向かい合うことでそれぞれの想いや夢を叶える結婚式を創り上げていきました。

人生を振り返り、全ての人に想いを伝えることで今後の人生の分岐点に。
結婚式の価値をあらためて知る

 結婚式を迎えるまでに、「形式的なものではなくお父様と新婦の想いを大切にできる提案をしたい。その時間を共に大事にしたい」と思ってきた私は、その後も新婦に寄り添いながら多くの打ち合わせをしました。そんな中、挙式1カ月前にお父様は他界されました。

 当日は、お父様が見守り続けてくれた一日でした。前撮り写真で紡いだオープニングムービー。深い感動に包まれる会場内。終始満面の笑みだったものの退場の瞬間ホッとしたように涙した新婦を、私は強く抱きしめました。

 私にとって結婚式とは、何年経っても思い出してまた幸せな気持ちになれるもの、頑張る気持ちを後押ししてくれるものです。今回、前撮りと本番を通して、家族の想いをカタチにできたと信じています。2人やご家族に寄り添うスタンス、プロとして結婚式をつくり上げるチーム力、等身大の人間として共感し、後押しする勇気の大切さを学ぶことができました。

 いつか人生の幕を下ろす時、目に浮かぶ特別な思い出。これからもそんな一日をつくっていきたいと、心から思います。

プロとしてのチーム力があったからこそ前撮りから結婚式当日までご家族の思いを繋げることができました。

評価のポイント

プランナー1年目で戸惑いや葛藤がありつつも、「おふたりが頼れるのは私しかいない」と鼓舞しながら、プランナーとして自分ができるベストを追い求める姿勢に、誰もが心を動かされたと思います。圧倒的な熱量と行動量の中で突破口を見出し、また演出の見せ方にも藤縄さんらしい工夫が見られ、豊かな時間の提供に繋げていました。想いを紡ぎ、2人の糧になる結婚式を創り出したことで、結婚式の価値がより高まる時間を生み出されていました。