ホテルウエディングでも、ここまでできる
スタッフを巻き込み、できない事を突破する勇気
プランナー歴7年。リゾートウエディングプランナーを経てホテルウエディングプランナーへ。新郎新婦への共感、そしてチームの力を最大限に引き出すことこそが最高の瞬間を創ることに繋がると信じている。
ゲスト全員が心から楽しめる空間を創り上げることが大切
「ゲストが多いので、ホテルでなくては無理なんです」、「友達が100人ずついるんです」「仕事関係者も呼ぶので、失礼のないようにしたいんです」。新郎新婦の結婚式は人数ありきから始まっていました。そして、それだけではありません。「大好きなディズニーでいっぱいにしたい」「ゲスト全員に楽しんでもらいたい」そんな強い想いもお持ちでした。
年齢も性別も違う300名近くが集まる結婚式で、ディズニーいっぱいのテーマウエディングは本当に全員が楽しめるのだろうか? そのヒントは二人との会話の中に隠れていました。「ディズニーリゾートに入った瞬間、魔法にかかったようにはしゃげる」と二人。たくさんのお客様がキラキラと、それぞれに楽しんでいる空間。それを再現し、まるで「魔法」にかかったように皆が楽しめる世界を創ること。それが大切なのではないかと二人に提案したところ、「すごーい、できるんですか?」と。そこでテーマは「WEDDING FANTASIA〜魔法の夜のウェディング〜」となりました。
- まるで魔法にかかったような不思議な空間という、新郎新婦が実現したい結婚式の世界観をスタッフ全員で共有することで、一気に協働体制ができ上がりました。また、新郎新婦からも妥協しない結婚式ができたと、たくさんの嬉しいメッセージをいただきました。
ホテルという空間、スタッフの限界を超えるための挑戦
しかし、このテーマを実現するには、ホテルウエディングの限界でもある「限られた空間」縦割り部署の「スタッフの境界線」という壁をのりこえねばなりません。さぁ、普段は講演会などで使うオーソドックスなメインホールをどう上手く彩るか。
こだわりは夜の雰囲気を出すこと。サプライズイルミネーションを考えましたが、500名収容可能な大型会場に対応できるものはありません。そこで札幌の冬のイベントに使う装飾を借りました。さらには大きなジャイアントフラワーや高脚のパフォーマーを登場させるなど、ゲストをまるで自分が小さくなってしまったような錯覚をさせて、魔法の世界に引き込む案が膨らんでいきました。
次の課題はホテルのセクション。今までは、暗黙の境界線の中で、出来る範囲の結婚式だけをしてきました。「怒鳴られてもいい、馬鹿にされてもいい、聞かないと絶対に後悔する」と、直談判を始めました。しかし予想に反して驚きの答えが。「セッティングチェンジは間に合わせるから心配するな」「足りないところは手伝ってくれるか?」と。それぞれの分野で受け継がれた経験。それを合せたらこの結婚式は凄いことになる。だったら私は新郎新婦の想いとこの結婚式の意味を誰よりも理解してチームの指揮を取ろう、そう思ったのです。
- 300名の大規模な会場での演出は新たな挑戦でした。ゲストが自分と重ねあわせ、心で感じる、楽しめることを心掛けて提案しました。
チームの力を信じ、気づいたホテルウエディングの存在価値
そして、結婚式一か月前、最大の難関が訪れます。隣の会場に、ほぼ同時刻で『金婚式祝いの宴会』が入ったのです。私は受付周りから魔法の装飾をしたいと考えていました。しかし、他の宴席があればそれもできないかもしれない。そこで担当者へ「お客様に聞いてみていただけませんか?」と相談。すると、金婚式の先輩カップルから「ちょうど結婚式なんて幸せね」と快く了承のお返事がいただけたのです。結婚から50年、ホテルを第二の我が家としてつながり続けていたからこその信頼関係の賜物です。ホテルウエディングの存在価値を感じた瞬間でした。
お客様と長年のお付き合いをしてきたホテルだからこそ、また、プロの集団だからこそ、ホテルウエディングの限界は超えることができる。壁を感じていたけれど、踏み出す力を信じればきっと超えられる。ホテルだからこそのウエディングをすることができる。私はそのことを新郎新婦、そして仲間たちへ伝え続けていきます。
プランナーは一番ではない。プロの力を引き出すことが大切
いい結婚式を創るためには、チームを意識することも大切です。プランナーはあくまでも指揮者。各プロフェッショナルがいて初めて良い結婚式が生まれるものです。より強いチームを作るためには同じ目標を共有し、一緒に歩むことが大切です。プロならではの視点で提案をいただき、それを組み合わせることがプランナーの大事な役割なのです。
審査員の目
「うちは○○だから仕方ない」と、最初から何かを諦めている人も多いのでは。でも本気で新郎新婦のことを思った時、壁を感じているのも、その壁を壊すのも自分だと辻さんは気付きました。そうして行動した結果、今まで見えてなかった会場やスタッフの本当の価値に気付き、想いは伝播していきます。この打破し巻き込むチカラ、それも大切なクリエイティブ力なのです。(2015年10月15日更新)