「決断は最善だった」と思ってもらうことこそがプランナーの使命。
そのために2人の分身となり、「寄り添い」の一歩先の提案を。
2019年GWAで、初応募ながらBest50に選出される。今年はファイナリストに!という意気込みで参加。平和主義で、人生のモットーは幸せを与える「人間版パワースポット」。
ゲスト想いであるがゆえの決断
大事なのは最善を探すのではなく2人の決断を「最善」に導くこと
結婚式に人一倍憧れる反面、果たしてこの時期に挙式していいのかと悩む2人。常識と思いやりを持ち合わせるからこそ、中止・延期・規模縮小・決行の選択肢に揺れていました。結果、選んだのは「家族での挙式と会食」。私は「せめて挙式だけでも友人を呼んでは」と提案しましたが、「挙式だけのためにドレスアップさせるなんて、申し訳なさすぎて招待できない」とのお返事。他人思いのその言葉に、同じ苦しみを味わい切れないもどかしさと、寄り添うことの限界を感じました。
このままじゃいけない、と思った時に浮かんだのは、当式場で挙式した数々のカップルでした。SNSで「式を挙げられない方たちのために力を貸してください」と呼びかけ、実体験からの助言やゲストの声を募集。それらをまとめて、2人に伝えました。周りを巻き込み、「自分本位などではなく、招くことこそが一番のゲスト想い」なのだと伝えた結果、新婦は涙をこぼしながらも満面の笑みで、挙式にだけ友人を呼ぼうと決断してくれたのです。
その後ご友人からのサプライズのお申し出に、私は「披露宴を楽しみにしている方がいる。やはり2人にとっての最善は披露宴なのでは?」と自問自答しました。葛藤の末、新婦の一番の理解者である親御様に相談することに。「2人の意見を尊重したい」というお父様の言葉に、私はハッと気づかされました。最善を求めるがゆえ、2人が悩みに悩んで出した大きな決断を、誤って覆すところだったと。私がすべきことは、決断が最善だったと思ってもらえるよう、サポートすることだったのです。理想だった披露宴より、最善の挙式・会食となるように。そのためには私が分身として2人になりきり、周りを巻き込んで全員で肯定する「みんなで創る結婚式」を目指そうと、決めました。
- 新婦の自信作であるテーブルコーディネートも、分身として再現することでゲストへの披露が可能に。家族との会食中にサプライズで登場する予定だった友人も、席札があることにびっくり。拍手が巻き起こりました。
2人の分身として、次々に2人が描いていた理想を叶える
後悔のない結婚式のために
まずは「ドレスアップさせて申し訳ない」という想いを払拭すべく、場所を変えながら何度も友人と写真撮影。友人の「私の時はこんなに撮らなかったからうらやましい!」の言葉が、ドレスアップの意義を裏付けてくれました。家族との会食では、見送ったはずの友人がサプライズ登場。これも、ゲスト参加型を好む2人の分身・私が企画しました。しかしおもてなしにこだわる新婦の分身・私は、友人に料理を出せないことが気になって仕方ありません。そこでご両親の協力のもと、友人にも別室でお料理を出し、新婦の分身として新婦手作りの席札を再現しました。巻き起こる拍手。分身になりきることで、新婦を後悔させずにすみました。これまでサプライズは、する側の気持ちを形にしたいと思ってきましたが、今回初めてされる側の気持ちも考えました。2人が後悔しないよう私が分身になろう、という想いが実を結んだ結婚式でした。
- 場所を変えながら、フォトウエディング風に何度も友人と写真撮影。思い出に残る大切な写真の数々で、新婦の「私たちのためにドレスアップなんて申し訳ない」という気持ちを払拭させました。
世界が一変した今、大事なのは「どうしたいか」。
選択を最善にすることがプランナーの役割
当初、2人がよく口にしていた「コロナ禍だからしょうがない」の言葉。私は、そういう諦めを絶対になくそうと思いました。価値観が多様化する今だからこそ、「こうあるべき」より、「こうしたい」を選択する。これが、これからの結婚式のあり方だと思います。そのためには、寄り添いだけでは足りません。2人の分身となり、大事な選択を最善の形にすることこそが、私の役割だと感じました。
今回、周りを巻き込むことで、みんなが準備にワクワクできました。結婚式は、準備も含めてお祝い。かけがえのない時間です。新郎新婦の「結婚式をしてよかった!」の言葉を信じて、これからも価値ある結婚式をみんなで創り続けましょう。
評価のポイント
「結婚式はこうあるべき」には、プランナー自身の価値観がつきまといます。しかし、今のような正解のない時代には「ふたりの価値観」をとことん理解し、その上で後悔のないようにすることが肝要。それを松尾さんは「分身」と表現しましたが、これからのプランニングにおいて必要なスタンスを見事に言い表した言葉だと感じました。また、他のお客様の存在をも新郎新婦の力に変えていく取り組み、これも今後大切なあり方となっていくでしょう。