カップルそれぞれの「普通のウエディング」を見出し
追求することが大切。
悩みを推し測り、ふさわしい方法をみつけることこそが
プランナーの使命。
花嫁着付の勉強をしていた頃、アルバイト先のレストランで、当時では珍しい人前式を目にしたことがブライダルとの出会い。以降、27年間ホテルウェディング一筋。
家族や友人への気遣いとコロナの不安から
挙式のみと決断する2人に提案する、自由なパーティ
新婦の母が体調的に長時間の列席が難しいため、行うのは挙式のみと決めていた新郎新婦。「式後に友人のみの1・5次会をするかも」と受注プロデューサーから引き継がれましたが、2人はコロナ禍で悩んでいました。「式だけ来てもらうのも申し訳ない」「みんな出席してくれるのかな」という気遣いと不安。「本当はやりたいからこそ悩んでいるのでは?」と思う一方で、披露宴を行わないことに迷いを感じさせない点や、お母様自身の気持ちはどうなのかが気になりながらのスタートでした。
その後、お母様も挙式後少しなら居られそうだと判明。また2人が「挙式プラスα」を望まれていると感じ取った私は、決断しやすくなるようアプローチをかけました。希望者のみ参加、短時間での開催、乾杯後は帰るのも自由。そして冒頭に親への感謝のセレモニーを盛り込むことで大義ができた、パーティの開催……。こうして提案したのが、2人の事情とコロナの状況を踏まえ、ホテルの枠組みの中でできる「早く帰ってもいい、出入り自由のパーティ」でした。
- 「普通のウエディング」とは、何なのでしょうか?それは私たちが決めることではなく、カップルの数だけあるもの。それを見出し追求し続けることが、プランナーの使命ではないでしょうか。
「披露宴=長い」を覆し、
新たなパーティのスタイルを模索してたどり着いたカタチ
しかし、それには型がありません。最初は1時間ほどの立食カクテルパーティを、と考えましたが、打ち合わせが進むにつれ、2人が意外にも披露宴寄りのイメージを持っていることを察しました。またこれを「意外」と感じていることこそが自分の過ちだということにも気づきました。いつしか「パーティ」というワードに酔い、カジュアルに染めようとしていた私。2人は堅苦しいのが嫌で披露宴をしないわけではないのに。プランナーにとって大義を見極め、見失わないことがどれほど大切かを痛感しました。また、一般的な披露宴のイメージを持つご両親と2人との間に生じていたギャップを掴み、それぞれのイメージに寄せながらパーティを仕上げようと考えました。当初より一回り大きい会場に変更し、メインテーブルや装花も添えて、披露宴らしさを残すことに。また、早く退出されるであろうご家族の席を扉近くに配置。着席ブッフェながらオードブルを1人一皿提供したり、通常は結びで流す挙式の撮って出し映像を序盤で上映したり、と早く帰る方が不利益とならないよう工夫しました。私自身が司会を務め、2人が葛藤しながら導き出したパーティであることを、私だから知っているエピソードを交えながら、2人の気持ちをできるだけ伝えるようにしました。
途中退席のゲストがいる前提で考えたパーティでしたが、当日嬉しい大誤算が。家族の到着が遅れて1時間押したにもかかわらず、お母様をはじめ、誰一人帰ることなく全員がお開きまでいらしたのです。披露宴をできないことに一切弱音を吐かなかった2人。でも、挙式だけではいつか悔やむかもしれない……そうならないようにという一心でしたが、これで完全に心残りを払しょくすることができ、心からよかったと思います。パーティ後、「フツーに普通の披露宴だったね」と言い合う2人の笑顔は、満足感に溢れていました。
- 新婦の好きなひまわりにベビーブレスを加えたブーケセレモニー。ゲストからひまわり、両家母からはベビーブレス。皆の承認と、赤ちゃんを宿した新婦へのバトンとエールを束ねた素敵なシーンとなりました。
つじつまを合わせてバランスを取り、
2人にとっての「普通」とは何かを追求し続けるのがプランニング
そもそも「普通のウエディング」とは? それは私たちが決めることではなく、カップルの数だけあるもの。それを見出し追求し続けることが、プランナーにとって大切です。そして、お客様やスタッフの想い、事情を受け止め、時には気づかないふりをしながら、つじつまを合わせて丁寧につないでいく。受注プロデューサーが作ってくれた入口をよりよい形で出口に導く。……これらを積み上げ、これからももっと「普通の結婚式」を溢れさせていきたいと願っています。
評価のポイント
「新しいパーティを創るぞ!」という意気込みではなく、丁寧に新郎新婦やゲストの想いや事情を織り込んでいった「結果」として生まれた、真に自由な結婚式。安川さんと2人の心のやり取りと、それに応じて結婚式が自在にその姿と彩りを変えていく様子が本当に美しく、全ての新郎新婦にこのプロセスを体験して欲しい、そうなれば様々に求められる「普通のウエディング」が溢れるに違いない、そんな未来を創りたいと強く感じさせられる発表でした。